JGPチェコスケート2016 男子FS
JGPチェコスケート2016 リザルト
ジュニアのGPシリーズ第2戦。男子FSは、現地時間2016年9月3日(土)に行われた。
にて、第3グループからライブ放送を見た。その中で、特に印象に残った選手の演技について、感想を書いていきます。
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●第3グループ
13 マティアス・ベロフラドスキー(チェコ)
- SP順位:11,得点:54.11
- 楽曲:The Pink Panther theme by Henry Mancini
顔つきも体つきも、15歳の年相応に子どもっぽいのだが、演技は全くそうじゃない。演技を見ながら、「何じゃこりゃー」と何度も思った。上半身、特に腕の使い方がすごく上手で、ピンクパンサーのテーマ音楽をみごとに表現していた。スピンも上手で、3つのスピン全てレベル4が取れていた。
フリー115.56、総合169.67。SP同様、FSも自己ベスト更新! 得点が出て、選手もコーチのトマシュも喜んでる〜。これまでのPBが総合140.52だもん、そりゃ喜ぶわ。
14 サミュエル・タルコット(カナダ)
- SP順位:10,得点:56.02
- 楽曲:Quidam (Cirque du Soleil) by Benoit Jutras
ソーヤーが振り付けただけあって、随所に彼を思い起こさせる動きが入っていて、ユニークな振付。
冒頭の3S+3Loで、セカンドループがあっさり決まり、「え、今のセカンドジャンプ、3Loよね!?」と驚かされた。
2番目のスピンに入れず転倒、3番目のスピンもミスが出て、両方ノーバリュー(泣)。後半は疲れてグダグダな感じになってしまった。
でも、SP同様、個性的でおもしろいプログラムなので、仕上がりが楽しみだ。次に見る機会があるといいのだが。
フリー106.02、総合162.04。
- SP順位:8,得点:56.81
- 楽曲:Moonlight Sonata by Ludwig van Beethoven
ピアノの美しい独奏で始まり、次にロック調、それからクラシック調、最後に激しい曲に切り替わるという…なんというか、聴き手が音楽に寄り添いにくい、トンデモ編曲であった(汗)。
とはいえ、選手は、このめまぐるしい曲想の変化の違いを表現しようとしているのが伝わってきた。特にピアノ独奏パートと、最後のスピンの前のつなぎの部分の表現がよかった。たぶん、シニアバージョンでは、ここのつなぎの部分がコリオシークエンスになるんじゃないかな。激しい曲想にマッチしていて素敵だった。
フリー121.57で自己ベスト更新、総合178.38。イジーくんもトマシュも嬉しそう。
18 ケヴィン・シャム(アメリカ)
- SP順位:7,得点:59.49
- 楽曲:Sound of Silence by Disturbed
男性ボーカルが、最初は声量控え目〜に歌っているんだけど、だんだん盛り上がっていき、最後は朗々と歌い上げるのを、きちんと変化をつけて表現していた。気持ちよさそうに滑っていた。
フリー119.43、総合178.92で、どちらも自己ベスト更新! これまでのPBが、フリー108.05、総合169.84だから、大幅アップだ。やったね☆
第3グループが終わった時点で、シャムくんが総合1位。
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●第4グループ
19 須本光希(日本)
- SP順位:5,得点:63.72
- 楽曲:
- Piano Sonata No. 8, Op 13, movement 1 by Ludwig van Beethoven
- Piano Sonata No. 8, Op 13, movement 2 by Ludwig van Beethoven
- Etude Op. 8-12 by Alexander Skriabin
なかなかコンボを跳ばないので、ハラハラしながら演技を見守っていたのだが、3Lz+3Tでちょっと減点されたぐらいで、他のエレメンツは、1点以下とはいえ全てプラスの評価だった。3Aがない代わりに、後半に5つのジャンプ(3つのコンボ含む)を入れた構成にしているようだ。
シーズン初めのこの時期に、今できることをきっちりやり遂げるなんて凄い。
(多分)スピンのレベルを取るために、音楽が終わった後も少し回ってたけど、おかげでスピンは全てレベル4を取れていた。
上半身の使い方がもっと洗練されてくると、プログラムがより一層輝きを増すんじゃないかな。やっぱ表情が(顔のだけではなく)乏しいんだよね。もそっと表情豊かに滑れるようになるといいのだが。
フリー129.41、総合193.13で、SP同様FSも自己ベスト更新! 現時点で総合1位。得点が出て、光希くんが笑顔で拍手してる〜。よかったね〜。演技中もその笑顔があればなぁ(ため息)。
20 イワン・パブロフ(ウクライナ)
- SP順位:4,得点:64.91
- 楽曲:Blood Diamond (soundtrack) by James Newton Howard
…パブロフくん、うまくなってる!! 体を大きくなめらかに使えるようになり、体の動きにメリハリがつくようになった。
冒頭の3Aの転倒と3F+1Lo+2Sのサルコウがダブルになった以外は、ミスのない演技だった。プロトコルを見ると、3Aの他は全て加点が付いているし、スピンは全てレベル4、ステップもレベル3が取れている。
なかなか独創的な音楽と振付のプログラムで、最後、力尽きた感じで座り込むのも新鮮だった。
フィギュアスケートでは、なかなか見ないタイプの衣装なのだが、映画「ブラッド・ダイヤモンド」の登場人物の服装に似せて作っているらしい。
フリー134.47、総合199.38。現時点で総合1位。
21 ジョセフ・ファン(カナダ)
- SP順位:6,得点:62.38
- 楽曲:The Legend of 1900
音楽も振付も一風変わったプログラムだなぁと思っていたら、映画「海の上のピアニスト」のサントラを使っていることを知って、納得。おそらく映画の情景を再現していると思われる。
曲が次々変わるのは、映画で様々な場面が切り替わっていくのを表しているんだろうな。つなぎが自然なので、ぶつ切り感はないのだが、これだけいろんな曲想を表現するとなると、演じる方は大変なんじゃなかろうか。でも、ジェフは、ファンくんならできると思って振り付けたんだと思うので、頑張ってモノにしてほしい。
127.40、総合189.78。現時点で総合3位。
22 ドミトリ・アリエフ(ロシア)
- SP順位:1,得点:77.45
- 楽曲:The Man In The Iron Mask (soundtrack) by Nick Glennie-Smith
4Tと3Aを2本ずつ跳ぶ、高難度ジャンプ構成プログラムがきたー(4T<+2T 4T 3A 3F 3A+1Lo<<+3S< 3Lz+3T 3Lo 2A)。
そして、変衣装の面白プロがきたー(笑)。
鎖が巻かれた衣装って、どうなんだろう…。映画「仮面の男」で、ルイ14世の弟が幽閉されてたことを表現してるんだろうけど…直接的すぎやしませんか?(笑)
ステップシークエンスで剣を打ち合う音が入ってるの、楽しくて好き。あと、膝くるくる3Fを続けてくれて嬉しい。
途中から、明らかにバテてるのが分かったけど、回転不足を取られたジャンプ以外は、GOEの減点なく、きっちりやり切った。
演技が終わった後、アリエフくん、両手でガッツポーズ!! めっちゃ疲れてるけど、めっちゃ満足げ。
フリー155.38、総合232.83で、総合得点の自己ベスト更新! 現時点で総合1位。
23 ロマン・サヴォシン(ロシア)
- SP順位:3,得点:72.90
- 楽曲:Smuga Cienia by Wojciech Kilar
冒頭の4Tで転倒した以外、ノーミスに見えたのだが、3Lzで!が付き、2A+1Lo<+3S<でアンダーローテが取られていた。あと、3+3が入らなかったのもミスといえばミスか。まぁでも、スピンのレベルは全て4だし、ステップもレベル3だし、シーズン前半でこれくらいできれば、十分ではなかろうか。
それにしても、ジャンプの軸がけっこうブレブレなのに、よくもまぁクリーンに着氷できるもんだ。
体を大きく使って、音楽をよく表現していたと思う。前半は美しくもの悲しい音楽なんだけど、後半、3Loを下りた後、不安をあおるような旋律が入ってきて、最後までそれが続くので、個人的にちょっと辛かった。
フリー134.74、総合207.64で、SP同様、FSも自己ベスト更新! 現時点で総合2位。
24 アレクセイ・クラスノジョン(アメリカ)
- SP順位:2,得点:75.10
- 楽曲:
- 50 Rodeo - Four Dance Episodes: III. Saturday Night Waltz by Copland Aaron
- 51 Rodeo - Four Dance Episodes: IV. Hoedown by Copland Aaron
冒頭で4Lo<<に挑戦! 回転不足&転倒だったけど、クラスノジョンくんは、最初に4Loを成功させる選手になりたいそうだ。頑張れ。
4Lo<<の転倒と2Aをばらけて下りてきちゃったとこ以外は、全てのエレメンツでGOEの加点が付いている。
豪華な3Aを跳ぶ選手なのだが、2本目の3Aの高さと幅は特にすごかった(GOE 1.57)。それと、プログラムの後半で、あんまりあっさり3Lz+3Loを決めるから、気づかず、スルーするところだった(汗)。セカンド3Loをクリーンに着氷する選手、増えてきたなぁ。
明るく軽快な音楽をよく表現していたと思うのだが、もそっと余裕が出てくると、プログラムの良さがさらに引き立つ気がする。今も頑張って楽しげな表情を作ろうとしてるんだけど、時々真顔になっちゃってるんだよね。まぁ無理もないけど。
フリー148.50、総合223.60で、SP同様、FSも自己ベスト更新! そして総合2位。
得点と順位が分かったとたん、喜びのあまり、ソファから腰を浮かせ、コーチと握手するクラスノジョンくん。よかったねぇ! おめでとう!
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◆総合順位
男子シングルの総合順位は下記のとおり。総合順位、名前、国名、得点、SP順位、FS順位の順に記されている。
- Dmitri ALIEV RUS 232.83 1 1
- Alexei KRASNOZHON USA 223.60 2 2
- Roman SAVOSIN RUS 207.64 3 3
- Ivan PAVLOV UKR 199.38 4 4
- Mitsuki SUMOTO JPN 193.13 5 5
- Joseph PHAN CAN 189.78 6 6
- Kevin SHUM USA 178.92 7 8
- Jiri BELOHRADSKY CZE 178.38 8 7
- Matyas BELOHRADSKY CZE 169.67 11 9
- Lukas BRITSCHGI SUI 163.03 12 10
- Samuel TURCOTTE CAN 162.04 10 12
- Alexander MASZLJANKO HUN 155.75 17 11
- Se Jong BYUN KOR 155.75 9 15
- Glebs BASINS LAT 152.91 13 14
- Tangxu LI CHN 149.31 19 13
- Radek JAKUBKA CZE 148.26 15 16
- Larry LOUPOLOVER AZE 146.00 16 17
- Daniil ZURAV EST 132.93 14 19
- Ryszard GURTLER POL 129.10 18 18
- Jakub KRSNAK SVK 122.35 20 20
- Chih-Sheng CHANG TPE 120.71 21 21
- Daniel TSION DEN 113.65 23 22
- Samuel MCALLISTER IRL 106.39 22 23
- Johannes MAIERHOFER AUT 88.55 24 24
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◆総評
優勝したアリエフくんは、SP同様、FSでも実力を発揮し、今季、ジュニアの男子シングルをリードする選手だということを世界中に知らしめた。久々にロシアの世界ジュニアチャンピオンが誕生するかも!
SPのときめき切なプロと、FSの「仮面の男」なりきりプロ(笑)、共に素敵なプログラムなので、進化の過程が見られるのを楽しみにしている。
2位のクラスノジョンくんは、今までノーマークの選手だったので、「アメリカにこんな素敵な選手がいたとは!」と、嬉しい驚きだった。彼もSPはロマンティック系、FSは明るく楽しい系と、バランスのとれたプログラムを用意していて、とても嬉しい。
3位のサヴォシンくんは、上の二人と比べると、独自のカラーが薄い印象を受けるのだが、アリエフくんだって、昨季はそんな感じだったのに今季は…だからね(笑)。サヴォシンくんも、そのうち必ず濃ゆ〜い個性を披露する日が来るだろう。
彼は、1戦目で優勝、2戦目で3位なので、ファイナル確定かと思っていたのだが、ジュニアの場合、そうとは言い切れないらしい。シニアのGPSでは、優勝+表彰台でファイナルが確定するのだが。
4位のパブロフくんは、SPもFSも昨季とは全く違ったジャンルの音楽を使ったプログラムで、新境地を開拓中。どっちもわたしの心の琴線をじゃらんじゃらんと鳴らしまくりである。
5位の光希くんは、今できることを着実にコツコツと積み上げていってるようで、何よりである。端正なスケーティングが魅力的なのだが、演技中、ほとんど表情がないのがねぇ。FSのクラシックは無表情でもいいかなと思うけど、SPの「雨に唄えば」がなぁ…。
8位のイジーくんと9位のマティアスくん、またの名をチェコのベロ兄弟(笑)。や、ベロ兄弟ってのはわたしが勝手に付けたんですけども。だって、名字長くて覚えるのも書くのも大変なんだもん。
2人とも、とっても素敵なスケーターなので、チェコの未来は明るいですね。次に演技が見られるのが楽しみだ。
男子シングル全体で言うと、今大会で、「やっぱクワドや3Aは難しいジャンプなんだな」ということを再確認した。「なに当たり前のこと言ってんのじゃー」という話だが、昨季、シニアはもちろん、JGPファイナルや世界ジュニアでも上位陣がクワドや3Aをばんばん下りるので、感覚がおかしくなりそうだったんですよ(汗)。
JGPの試合をきちんと見るのは今回が初めてだったが、JGPでクワドや3Aを成功させる選手なんて一握りしかいないんだなと分かって、ちょっぴり残念なような、ほっとしたような(苦笑)。