JGPブラエオン・シュベルター杯2016 男子SP

JGPブラエオン・シュベルター杯2016 リザルト
ジュニアのGPシリーズ第7戦。男子SPは、現地時間2016年10月6日(木)に行われた。

で、事前に注目していた選手中心に、演技の動画を見た。
特に印象に残った選手の演技について、滑走順に感想を書いている。日本語表記に自信がない名前には?を付けている。

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●第1グループ
1 Mark GORODNITSKY マーク・ゴロドニツキー(イスラエル

  • 楽曲:Puttin' On the Pin-Stripe Remix A by Chris Walden, Mark Kilian

昨季、ユースオリンピック13位、世界ジュニア34位。練習拠点はカナダのHill。今季、JGP横浜10位。
お、クロスワード衣装(笑)、久しぶり!
3Loは着氷が乱れる。3Lzで手をついた後、2Tを付けた。2AはOK。
スピンのレベルは4、4、2。軸がまっすぐで安定している。
ステップはレベル3でGOE 0.14。横浜のときはレベル1でGOEマイナスだったことを考えると、きちんと改善してきたことがうかがえる。
リズム感や音楽表現のセンスに光るものを感じるのだが、今はまだ、体を大きく動かせていない印象を受ける。全身をもっと立体的に使えるようになったら、さらに素敵になるんじゃないかなー。
49.70。

2 ジュンファン・チャ(韓国)

  • 楽曲:A Chorus Line (soundtrack)

昨季、ユースオリンピック5位、世界ジュニア7位。今季、JGP横浜優勝。
ジュンファンが!! 笑顔で!! 滑ってる!! コーラス・ラインの楽しい音楽を、無表情で演技する姿を見るのは、なかなか辛いものがあったので、改善してくれて、本当によかった(笑)。
3Lz+3Tは素晴らしいスピードからクリーンに着氷。3A<もよかったのだが、アンダーローテをとられていた。3Loは、直前までいろいろ難しいステップを入れてから跳んでいた。
スピンは全てレベル4。横浜のときの取りこぼしをすぐに修正してきた。質はどれも回転が速く、素晴らしい出来栄え。
ステップはレベル3。しなやかに大きく全身を使えていた。
ジャンプの跳び方やボディームーブメントが、結弦くんに似てるような気がする。
76.82。

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●第2グループ
6 須本 光希(日本)

  • 楽曲:Singin' in the Rain by Nacio Herb Brown

昨季、全日本ジュニア6位、全日本14位。今季、JGPチェコスケート5位。
クリーンな演技だった。ジャッジは誰もマイナスを出していない。
2A、3Lo、3Lz+3Tと、全てきれいに着氷。
スピンのレベルは4、3、4。チェコスケートのときは、2番目のCSSp3で、回転が遅くなり、レベル2&GOEマイナス評価だったのだが、きちんと改善してきた。
ステップはレベル3。後半、曲想が激しくなるところを力強い動きで表現できていた。
…とまぁエレメンツに関しては、今できる最高の出来だったのではないかと思われるが、表情が相変わらず無表情(汗)。笑顔で滑るだけでもインタープリテーション上がるんじゃないかなー。「雨に唄えば」だし。大西先生、お願いしますよ〜。せっかく素敵な滑りなのに、もったいないです〜。
65.11で、自己ベスト更新!

10 Artem KOVALEV アルチョム・コヴァリョフ(ロシア)

  • 楽曲:Misere by Bruno Pelletier

今季、ジュニアデビューで、JGP横浜6位。
3Lzの転倒以外は、全要素のGOEプラス。スピンとステップは全てレベル4。
ボディームーブメントは、さらに磨きがかかって素晴らしかった。
60.69。

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●第3グループ
12 マッテオ・リッツォ(イタリア)

昨季、シニアの国内選手権2位、ユーロ13位、世界ジュニア13位。今季、JGPリュブリャナ杯8位。
昨季から続行のプログラム。
3Aで転倒。3Lz+3T<<のセカンドは回転不足で両足着氷。2Loは着氷が乱れた。
スピンは全てレベル4。ステップはレベル3。
歯切れのいい音や激しい曲想をよく表現できていた。かっこよかった。それだけにジャンプのミスが続いたのが残念でならない。
53.78。

13 Andrew TORGASHEV アンドリュー・トルガシェフ(アメリカ)

  • 楽曲:Le Temps de Cathedrales (from "Notre Dame de Paris" soundtrack)

2014〜15シーズン、全米ジュニア優勝、世界ジュニア10位。昨季、膝の怪我で休んでいたらしい。今季、JGPモルドヴィア杯2位。両親はソ連代表の元選手で、父親がコーチを務める。
2AはOK、3Lz+3Tはルッツに!が付きGOEマイナス、3LoはOK。ジャンプはどれも軽々と跳んでいた。
スピンのレベルは4、1、4。どのスピンも回転が速く、素晴らしい出来栄えだったので、GOEの加点をたくさんもらえているのだが、FCSp1の取りこぼしがもったいなかった。
ステップはレベル4。ドラマティックな曲想を全身でみごとに表現していた。
73.48で、自己ベスト更新!

14 Peter LIU ピーター・リウ(アメリカ)

  • 楽曲:Can't Take My Eyes Off You by Frankie Valli

今大会がJGPデビュー。コーチは、オーストリアの元選手、ヴィクター・ファイファー。相変わらずハンサムで笑顔がステキ☆
教え子のリウくんも笑顔がステキ☆
3A<で転倒。3Lz+2Tはまぁまぁ。3Loは着氷が少し乱れた。
スピンのレベルは2、4、4。ステップはレベル2。
誰でも聴いたことがあるであろう有名な曲を、明るく楽しそうに滑っていた。まだまだジュニアっぽい動きが多いけど、ところどころ曲想を素敵に表現していて、光るものを感じた。
52.76。

15 Thomas STOLL トーマス・シュトイル(ドイツ)

  • 楽曲:The Old Men of the Mountain by Big Bad Voodo Daddy

昨季、JGP Copernicus Stars 2015 19位。今季、JGPリュブリャナ杯16位。
3Lz+2T、3Lo、2Aと、クリーンに着氷。
スピンは軸がまっすぐで、回転が速く、全てレベル4が取れていた。ステップはレベル3。
明るく軽快な音楽に乗って、丁寧に滑っていた。ちょっと一本調子なところがあるので、メリハリがつけられるようになると、さらに素敵になりそう。肘と膝がぴんと伸びるようになると、美しくなるんじゃないかなー。
60.65で、自己ベスト更新!

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●第4グループ
17 Donovan CARRILLO ドノヴァン・カリーリョ?(メキシコ)

  • 楽曲:Mambo Mix by Perez Prado

2014〜15シーズン、JGP Czech Skate 21位、ジュニアの国内選手権優勝。今季、JGP横浜13位。
お、久しぶり、「輝く背骨」さん(笑)。
ジャンプは全てクリーンに着氷したように見えたが、3Loと3Lz+2Tで減点されていた。3Loは「ステップからただちに」跳んでなかったからかな? ちょっと間があったもんね。コンボは…着氷してすぐフリーレッグのトゥで氷を突いたからだろうか。
スピンは4、4、2V。ステップはレベル3。
輝くような笑顔を絶やさず、マンボの音楽に合わせ、ノリノリ&キレキレに踊れていたのだが、ブレードが安定してない感じがする。インとアウトにきちんと乗れてないような。
54.78で、自己ベスト更新!

18 ヤロスラフ・パニオット(ウクライナ

  • 楽曲:Romeo and Juliet Ouverture by P.I. Tchaikovski

昨季、シニアの国内選手権2位、世界ジュニア11位。今季、JGPサン・ジェルヴェ5位。
コーチと振付師がモロゾフ。サン・ジェルヴェでは動画の状態が非常に悪く、何が何だか分からなかったので、今回、演技を見られるのを楽しみにしていた。
3F+3Tはクリーンに着氷。3Aはお手つき。3Loは軸が曲がったけど、即修正してクリーンに着氷。すごい。
スピンのレベルは4、4、3。最後のCCoSp3で、減点されているのは、トラベリングしちゃったからかな。
ステップはレベル3。ここで大輔くんのロミジュリを思い出した。たぶん同じところをステップに使ってると思う。かなり長い時間をステップに割いてるんじゃないかな〜。全身を大きく使って、曲想をよく表現していた。動きが音にハマっていてかっこよかった。
66.38。

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●第5グループ
24 Conrad ORZEL コンラッド・オーゼル(カナダ)

  • 楽曲:
    • Secrets by One Republic
    • Beethoven's Five Secrets by The Piano Guys

昨季、ジュニアの国内選手権5位。今季、JGPサン・ジェルヴェ10位。
3Aは、着氷の流れが止まってしまった。3Lz+3TはOK、3Loはシェイキーな着氷。
スピンのレベルは3、2、4。う〜ん、サン・ジェルヴェよりはレベルが取れるようになっているが、やはり取りこぼしている。2番目のFCSp2の回転がゆっくりになっちゃうんだよねぇ。最後のCCoSp4の質がとても良いところを見ると、スピンの種類によって得手不得手があるみたい。
ステップはレベル3。長い手足を大きく動かせているのだが、その動きがもっとなめらかになると、さらに素敵になりそう。
64.98で、自己ベスト更新!

25 Alexey EROKHOV アレクセイ・エロホフ(ロシア)

今季、JGP横浜でJGPデビューし、3位。
3A転倒。3Lz+3Tと3Loはクリーンに着氷。
スピンのレベルは4、3、3。最初のCSSp4で減点されている。他2つも加点0だったり、ほんの少しだけだったり。やっぱスピンが苦手なんだなー。ロシアの選手にしてはめずらしい。
プログラムの冒頭で、バイクに乗るポーズしてるんだな。で、最後にまたバイクにまたがって終わると。じゃ、その間バイクに乗ってる最中なのかというと、そういうわけではなさそうだし。う〜ん、コンセプトが謎。
64.33。

26 Yuheng LI ユヘン・リー(中国)

  • 楽曲:Cinema Paradiso (soundtrack)

2013〜14シーズン、シニアの国内選手権14位。今季、JGPタリン杯11位。
二週連続出場、お疲れ様です。
3Lz+3T<は、ファーストが高かったのだが、セカンドがアンダーローテで両足着氷。3Loはクリーンに着氷したように見えたが、GOEマイナス。2Aは流れの中で、幅のあるジャンプが跳べていた。
スピンのレベルは3、4、4。2番目のCSSp4は、軸がまっすぐで回転が速く、素晴らしかった。ステップはレベル3。
ロマンティックで抒情的な音楽を、ゆったりとした大きな動きで美しく表現していた。ステキ〜☆
58.24で、自己ベスト更新!

28 Aleksandr SELEVKO アレクサンドル・セレフコ(エストニア

昨季、シニアの国内選手権2位、世界ジュニア19位。今季、JGPタリン杯6位。
二週連続出場、お疲れ様です。
2AはOK。1Loはノーバリュー。3Fで転倒。
スピンは全てレベル4。どれも軸が安定していて回転が速い。
ステップはレベル3。強い音にポーズが全部ハマっていて気持ちがいい。
演技が終わるなり、悲しげに頭をぽかりと叩く、セレフコ兄。ピークは先週にもってきてたんだろうなー。そりゃそうだ。地元開催のJGPだったんだもん。
ジャンプで大きなミスが2つ出てしまったが、プログラムの素晴らしさはきちんと伝えられていた。かっこよかった。
49.71。セレフコ兄、めっちゃ悲しそう…(泣)。先週、すばらしい演技ができていただけに悔しかろう…。

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◆SP順位
SPが終わって、順位は下記のとおり。左から順位、名前、国名、TSS、TES、PCSの順に記されている。

  1. Jun Hwan CHA KOR 76.82 40.38 36.44
  2. Andrew TORGASHEV USA 73.48 37.83 35.65
  3. Yaroslav PANIOT UKR 66.38 35.88 30.50
  4. Mitsuki SUMOTO JPN 65.11 34.64 30.47
  5. Conrad ORZEL CAN 64.98 36.15 28.83
  6. Alexey EROKHOV RUS 64.33 34.77 30.56
  7. Artem KOVALEV RUS 60.69 30.36 31.33
  8. Thomas STOLL GER 60.65 31.44 29.21
  9. Kum Chol HAN PRK 60.58 33.87 26.71
  10. Yuheng LI CHN 58.24 30.32 27.92
  11. Donovan CARRILLO MEX 54.78 28.46 26.32
  12. Matteo RIZZO ITA 53.78 26.63 28.15
  13. Peter LIU USA 52.76 26.30 27.46
  14. Radek JAKUBKA CZE 52.18 28.37 23.81
  15. Josh BROWN GBR 52.04 28.33 23.71
  16. Aleksandr SELEVKO EST 49.71 22.89 27.82
  17. Mark GORODNITSKY ISR 49.70 26.02 23.68
  18. Denis GURDZHI GER 49.09 24.87 24.22
  19. Lukas BRITSCHGI SUI 48.63 25.98 23.65
  20. Aleix GABARA ESP 46.67 23.00 24.67
  21. Luc MAIERHOFER AUT 44.17 23.31 21.86
  22. Kai Xiang CHEW MAS 43.16 21.94 21.22
  23. Marco KLEPOCH SVK 42.83 20.40 22.43
  24. Charlton DOHERTY AUS 42.64 21.79 20.85
  25. Matthew SAMUELS RSA 38.43 19.11 21.32
  26. Michel TSIBA NED 37.17 15.45 21.72
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◆総評
事前の予想通り、SP1位はジュンファン。JGP横浜で、「無表情の『コーラス・ライン』はないわー」と思ってたら、今大会ではしっかり笑顔で演じられるようになっていて、さすがオーサー、仕事が速いなと思った(笑)。
2位のトルガシェフは、3Aなしで、レベル1のスピンもあったのに、73点超え。すごい。エレメンツの質がいいので、加点をどしどしもらえるんだよなー。PCSもジュンファンに次いで2位。
このトップ2が、PCSでは頭一つ抜けてる感じ。
3位のパニオットは、昨季より、めっちゃうまくなっててビックリした。滑りとかボディームーブメントとか、ほんと素敵になってる☆
4位の光希くんは、JGPチェコスケートでの課題をきっちり修正してきてPB更新! とはいえ、無表情で滑る「雨に唄えば」は何とかならんものか…(ため息)。