全日本2015 男子シングル

12月25日(金)に男子シングルのSP、26日(土)にFSが行われた。

全日本を生観戦すると、3Aって特別なジャンプなんだなと思う。世界は4回転時代だけど、3Aをクリーンに降りられる選手なんて、限られているのだ。これはここ7年、全日本を生観戦するようになってから(毎年じゃないけど)、ずっと感じていること。それとは対照的に、ここ数年感じるようになったのは、スピンの難しさ。毎年ルールが変わって、どんどん難しくなっているように思う。特に今季の全日本では、男子だけじゃなく、女子もスピンのノーカンがちらほら見られて、そのことを改めて実感した。

結弦くんの出場している試合やショーを見ていて、全日本でも彼への歓声がすごいんだろうなーと予想していたのだが、実際はそうでもなかった。や、もちろん男子の中では一番じゃないかと思うキャーキャーっぷりだったが、節度があったし、他の選手への配慮も感じた。わたしは、歓声がうるさいと演技に集中できないので助かった。

印象に残った選手を総合順位の上から書いていきまーす。
第84回全日本選手権大会 競技結果
羽生結弦

  • 総合1位(SP:1位,FS:1位)

SPは、6分間練習で完璧な4Sを降りていたが、本番で転倒。でも他のジャンプはパーフェクトだったし、他のエレメンツもすばらしかった。試合を重ねるごとに磨き上げられているのを感じる。
ただし、これは完全にわたし個人の勝手な嗜好の問題なのだが、ステップが心に響かない。つなぎの部分はキラキラ輝いて見えるのに! 彼がジュニアのころからそうなんだよなぁ。ジャンプもスピンも大好きなんだが、ステップだけときめかない。なぜだ!? わたしもゆづのステップでときめきたい!!
FSの演技が終わった後の結弦くんを見て、思ったことは、「休め〜。日本でおいしいもの食べて、ゆっくり休め〜」であった。や、演技自体は素晴らしかったんですよ。後半、ジャンプの乱れはあったけど、トップオブトップの選手がそうであるように、「ジャンプでいくつかミスしましたけどそれが何か?」という、格別の演技であった。でも3Aの転倒を見て、「あ〜、こりゃほんとに疲れてるんだな」と。彼が3Aで転ぶなんて、もうほんとしばらく見てなかったもの。・・・まぁそもそも、その事実がおかしいんだけどね。世界トップの選手でさえ、3Aで転倒なんて、めずらしいことじゃないんだから。
じかに彼のスケーティングを見て、うまくなったなーとしみじみ思った。毎年そう感じてるけど、この夏に彼の滑りを生で見ていたので、この短い期間にまた滑りが良くなったと感じた。ディープエッジで流れるように滑っていて、とても気持ちよかった。

宇野昌磨

  • 総合2位(SP:2位,FS:3位)

SPは言うことない出来栄え。ステップは、もう少しで魔法にかけられそう。
FSは、ジャパンオープン生観戦でノーミスの演技見ちゃってるからなー。いくつかジャンプに多少ミスはあっても素敵だったのだが、少し物足りなく感じた。まぁファイナルでパーフェクトな演技をしたからね、続けてノーミスなんて無理よね(結弦くんは例外中の例外)。
最後の2Tは、現地で見てるときは「抜けちゃったのか」くらいにしか思ってなかったが、あとで「4Tを跳ぶつもりだった」と知って、唖然茫然。うーんクレイジー! 昌磨くんも相当メンタル強いな。すばらしいな。

無良崇人

  • 総合3位(SP:3位,FS:2位)

ショートは見た目パーフェクト! 本人も観客も大歓喜!! 幸せ〜☆☆☆ 振り付けたチャーリー、グッジョブです! でももっとやれる。ステップと最後のスピンでもっと音楽を表現してほしい。まだ足りない。
後でプロトコルを見たら、スピンのレベルを取りこぼしているのだな。GOEの加点はもらえてるから、質は悪くなかったんだと思うけど。ぐあああーもったいない!! もったいないよ無良くん!!
わたしが無良くんの演技を見るときに一番心配しているのはでっかい3Aがでっかい1Aになったらどうしようということなのだが、フリーでその心配が現実化し、「ギャー!!」と思ってたら、直後に見事な3Aを決めたところで「キャー!!」と高揚した。
スピンのレベルがなー、フリーも取りこぼしているのがもったいないよー!! 結弦くんも昌磨くんはショートもフリーもレベル4とってるのに〜〜。まぁでもそんなことは選手本人が一番分かっていることだと思うので、四大陸に向けてどう強化してくるのか見守りたい。
正直、このフリーの音楽「O(オー)」は、アッコさんの傑作プロがあるので、無良くんの「O」を見ていても、彼女の演技がオーバーラップしてしまい、「彼にシルクドソレイユってどうなんだろう」となかなか入り込めなかったのだが、全日本の彼の演技を見て、「アリかも!素敵!」という気持ちに変わった。四大陸ではさらに磨き上げたプログラムを見せてほしい。

田中刑事

  • 総合4位(SP:6位,FS:4位)

ショートでは4Sが2Sになってしまったけど、他で崩れなかったのがトップレベルの証。
フリーでは冒頭の4Sでステッピングアウトした以外はノーミス。途中から全然失敗する感がなかった。すごーい!!
彼はこの全日本で、自分がスケーターとして一つ上のレベルに上がったことを証明しましたね! うーれーしーいーよー!!
ショートもフリーも、見る者のハートを撃墜しまくる魔性のプログラムである。振り付けたマッシモ、グッジョブ!! 四大陸で犠牲者をさらに増やしてきていただきたい。

小塚崇彦

  • 総合5位(SP:5位,FS:6位)

彼本来の滑りではなかったが、だいぶ戻ってきた感じ。
「これが最後の全日本になるかも」という覚悟で見に来たのだが、来季どうするのかなぁ。
まことに勝手な意見なのは重々承知の上だが、今季の彼は修論を提出のためにオフの準備が短かった上に、新しい怪我をしてしまい、不完全燃焼である――わたしが。
フリー直前で靴紐結び直す→信夫先生の話が長びく→背中にぐるぐるポンもなおざり→開始時間ギリギリ→焦ってスタート→ジャンプにミス連発・・・が最後の全日本になるというのは、ある意味彼らしいっちゃ彼らしいけども(苦笑)。ファンとしては、やはりもそっと見たいですよー。

◇山本草

  • 総合6位(SP:11位,FS:5位)

ショートもフリーも4Tと3Aで転倒してたけど、そのミスを引きずらず、演じきったのはお見事だった。
今さらながらスピンうまいなーと感心。日本男子は苦手な選手が多いので際立つなー。それから軽やかなタッチのスケーティングが素敵だった。
世界ジュニアがんばれ〜!!

村上大介

  • 総合7位(SP:4位,FS:8位)

ショートでは連続ジャンプでミスがあったけど、今季彼のショートの中で、一番胸打たれる演技だった。音が一瞬途切れるところの余韻までスピンで表現していて素晴らしかった。
フリーでは、動きが途中から明らかにおかしくて、「け、怪我なの?具合悪いの?」と心配で気もそぞろに。後で知ったけど、ジャンプの転倒で膝を痛めたらしい。・・・ここんとこ、ダイスは全日本とは相性悪いなぁ(泣)。いちばん大事な全日本で自分の力が発揮できないなんて無念すぎる。他の試合ではできてるのに・・・。シーズン後半、ダイスのプログラムがもう見られないなんて・・・(泣)

日野龍樹

  • 総合8位(SP:7位,FS:7位)

ショートはパーフェクト!! やったー!! 本人も観客も大喜び!! こんなに喜ぶ彼を見るのは初めてで、嬉しかった。
フリーはジャンプにいくつかミスありつつもやりきった演技。
今回、刑事くんが覚醒したから、次はきみの番だ! 頑張れ!

中村優

  • 総合9位(SP:8位,FS:11位)

ショートは3Aがクリーンに決まった。3Lz-3Loはセカンドで<が刺さったけど、アガった〜! セカンドにループ跳ぶ人、もっと増えたらいいのになー。音楽表現は素敵なんだけど、やっぱ「リベルタンゴ」なので、もそっと強く! メリハリがほしい!
フリーはジャンプにいくつかミスが出てしまったけど、最後のステップ、素敵だったな〜。
ジュニアのラストイヤーに世界ジュニア出場獲得、おめでとう!

◇宮田大地

  • 総合10位(SP:10位,FS:10位)

ショートの「シンドラーのリスト」ですっかり彼のファンに。長い手足を大きく使って音楽を表現していた。もうシニアレベルである。あとは3Aさえ降りられるようになれば!
フリーのはじめはめっちゃ良かったんですよ。ショート同様、体を大きくダイナミックに動かしていて、スピードがあって。でも途中からエネルギー切れしてしまい、後半バテてた。
宮田くんも、優くん同様、ジュニアのラストイヤーに世界ジュニア出場獲得! おめでとう!

◇島田高志郎

  • 総合11位(SP:17位,FS:9位)

ショートでは、ジャンプにミスがあり、もともとプログラム構成のジャンプ難度は高くないので、「フリーに進出できなかったらどうしよう!? チャップリンが見たいのに!!」と焦ったが、他のエレメンツでレベルとGOEをきちっと確保し、フリー進出。さすが。
念願のチャップリンメドレーをじかに見られてハッピーハッピー☆ 後でプロトコルを見たら、フリップでエラー取られてGOE減点されてたけど、見た目ノーミスであった。メドレーの曲が変わるごとにきちんと演じ分けられていて、ほとほと感心した。とてもジュニアデビューしたての14歳とは思えない。すごーい!
来季、どっかーんとブレイクしそう。楽しみ〜☆

◇川原星

  • 総合12位(SP:9位,FS:13位)

ショートのタンゴはもそっとメリハリがほしいかな〜。でもショートもフリーも、ボディームーブメントやステップが素敵☆ 星くん、うまくなったなぁ。あとは3Aが安定して入れられるようになればいいのだが。

鈴木潤

  • 総合13位(SP:14位,FS:12位)

北大で全日本出場って、文武両道だなー。
総合的に何もかもうまかった。何でこんなうまい選手のこと、今まで知らなかったんだろう? 嬉しい驚き。
ボディームーブメントが素敵でジャンプは軽く、エレガントな滑りだった。3Aも降りられるんだけど、着氷の時、膝をぐぐっと曲げて、根性で降りていた。くれぐれも膝の怪我には気をつけて。

◇須本光希

  • 総合14位(SP:18位,FS:14位)

フリーの「ピアノソナタ」、最後のコレオシークエンスが素敵だった。まだ中学3年生なのかー。将来が楽しみ。

◇磯崎大介

  • 総合15位(SP:19位,FS:15位)

ショートは結弦くんの次で、投げ込みが多くてフラワーガールたちが難儀していた。ちゃんとラッピングされてなくて中身がこぼれちゃったらしい。こういうことが続くと投げ込み禁止にされるから、みんな気をつけよう。磯崎くん、長く待たされて気の毒だった。
プログラムは、初見の中では一番好き! マシュケナダの音楽表現ばっちり!! ペシャラ&ブルザを思い出したわ〜。
フリーのプログラム、「パスカル・コムラード メドレー」は、ふしぎ衣装のふしぎプロであった。わたしにはユニークすぎて、さっぱり分からなかった。
演技が終わった後、氷上にキスした姿が忘れられない。
彼はこの全日本で引退した。素敵な演技をありがとう。今まで本当にお疲れさまでした。
後で知ったのだが、
ピジョンポスト
磯崎くんのインタビューが載っていた。
これを読んで、彼が表現するという行為に、並々ならぬ情熱をもっていることがよく分かった。それと同時に彼のプログラムを理解できなかったことへの申し訳なさが募った。す、すいません・・・わたしの感受性に問題があるんだと思います・・・(汗)。

友野一希

  • 総合16位(SP:12位,FS:17位)

全日本ジュニア2位。フリーでクワド込みの素晴らしい演技をしたと聞いていたので、全日本で彼の演技を見られるのを楽しみにしていた。
ショートでは、和風の音楽にのって、踊る踊る。
フリーではぽろぽろミスが出てしまって、順位を落としてしまい、世界ジュニアに派遣されず。残念であった。
踊り心あふれる演技が印象的。荒削りだけど、いいわー。ファンが多いのも分かる。なんか、高校生のころの町田くんを思い出した。

◇服部瑛貴

  • 総合17位(SP:13位,FS:16位)

ショートは小芝居入りのおしゃれプロであった。今の日本男子に足りないのはこういうプログラムなんだよな〜。大・歓・迎☆
フリーでは、前半グループの中で、ボディームーブメントの質の高さが抜きんでていた。最後のコリオシークエンスが素敵〜☆ 太田由希奈さん振り付けの「トゥーランドット」を見事に演じていた。

◇佐藤洸彬

  • 総合18位(SP:16位,FS:20位)

ジャンプが迷子であった。でも昨季よりうまくなってる。スケートが滑っている。
フリーの「カルメン」は、ブツ切り編集だし、アレンジがユニークすぎて、正直、「ダメ・・・この音楽、受け付けない・・・」と、精神的にキツかったんですが、洸彬くんは実に生き生きと、伸び伸びと滑っていた。

◇山田耕新

  • 総合20位(SP:23位,FS:18位)

フジのフィギュアスケートTVで、彼が銀行員スケーターとして頑張っていることを知ってから、全日本で演技が見られることを楽しみにしていた。
さすがベテランという音楽表現だった。特にフリーは素晴らしかった。彼の衣装、音楽は「のだめカンタービレ」ときて、プログラム中盤まで指揮者を演じていると気づかなかったわたしのニブさよ・・・。
でも気づいてからはテンションア〜ップ!! 指揮者になり切った振付を見事に演じていて感動した。
正直、スピンががが・・・とか、スケーティングががが・・・とか思うけど、それも彼の表現が素晴らしいから、つい欲張りになっちゃうの。
週末だけの練習でここまでできるんだなー。社会人スケーターのロールモデルを目指しているそうなので、頑張ってほしい! 応援してます。