全米2016 男子FS

さすがに早朝4時には起きられなかったので、リアルタイムのライブ観戦は、滑走順9番のサヴァリくんから。その前の選手は、後で録画を見た。
女子FS同様、特に心に残った選手の演技について、滑走順に感想を書いていきます。

男子FSは、現地で1月24日(日)、日本で25日(月)に行われた。
全米2016 リザルト
●第2グループ
6分間練習のとき、赤平アナが、「6分間練習では、自分の心配なところを何度もくり返してやった方がいいのか、それとも自信をつけるために自信のある部分をやったほうがいいのか」と質問したのに対し、杉田先生いわく、「ジャッジはウォームアップの動きをよく見ているから、6分間練習は、ある意味デモンストレーションの場でもある。それと自分の確認もしないといけない。だから、非常にいろんな性格を持っている」。なるほどー。

7 Scott Dyer スコット・ダイアー

  • SP順位:12,得点:59.67
  • 使用曲:シネマ・パラディーソ/Siberia

あ、お尻の立派な彼だ(笑)。
ジャンプにいろいろミスはあれど、音楽をよく表現していた。特にコリオシークエンスは、ぐぐーっと心に迫ってきたよ。
杉田先生「ジャンプの前に構える動きが多い。常に上体をきちっと保とうとする姿勢がブレーキになっている。首から肩の線がすっきりしているようだけど硬い。もっと上半身が楽な状態でないと」…あー、だからなんか不自然な印象だったんだ。
音楽表現は素敵だし、スピンも上手だし、良いものをたくさん持ってるから、杉田先生の指摘したところを直せば、もっと上に行けるんじゃないかなー。ま、キャロルコーチがついてるから、大丈夫よね。
フリーで122.43、合計182.10。現時点で総合1位。

9 Emmanuel Savary エマニュエル・セイヴァリー

  • SP順位:11,得点:62.96
  • 使用曲:シルクドソレイユのレヴェイル

ショートで目をつけた選手(笑)。人目を惹くカラフルな衣装。ピエロっぽい振りがところどころで入っていた。
SPの時ほど動きの切れは感じられなかったものの、まぁまぁ力を発揮できたんじゃないかなと思っていたのだが、杉田先生から次々とダメ出しが(汗)。
「冒頭の4Sで転倒して以降、全体のスピード感やシャープさがなくなり、持っている体のバランスの良さが生かしきれなかった。才能的にはとても良いものをもっているが、精神的にちょっと弱いのかも。予定の構成をトライしていくという姿勢が途中からなくなってしまった。もっとトライしていかないと」。
彼の更なる飛躍のために、杉田先生の「愛のムチ」コメント(笑)をお届けしたいわ〜。
赤平アナによると、両親がジャマイカ出身で、子どものころ、リンクに行くと、みんなに珍しそうに見られるのが悩みだったらしい。アメリカでは、やっぱりアフリカ系のスケーターってめずらしいんだなー。他のスポーツに行っちゃうのかなぁ。
フリーで116.36、合計179.32。現時点で総合3位。

●第3グループ

全米男子でフリーにクワドを入れる予定の選手は8人。全体の半分もいないということで、杉田先生が「思ったより少ない」とさみしそう。「ジュニアから上がってきた選手の動きのほうが目に付く」とも。まーねー、最近のジュニア選手の躍進は目覚ましいですからな。
赤平アナが、「全米で一発勝負の側面が強いから、リスクを負いたくないのだろうか」と言うのに対し、杉田先生いわく、「ベテラン選手は、自分の持っているものをいかに出すかということに集中しているだろうが、若い選手はどんどん挑戦してほしい。今ここで勝つことよりも、1、2年先のことを考えて」
赤平アナによると、ヴィンセントは、全米ジュニア最年少優勝してるんだね!そんでその後、怪我しちゃったんだなー。
それから、杉田先生いわく、「これまでのところ、フリーのプログラムで、流れのある大人しい曲ばかり。アップテンポの曲やドラマティックな曲で滑っている人が少ない」。はっきりとは言わないけど、同じような曲ばっかでつまんないってことだろうか(笑)。
実況陣が、最近の全米は、アジア系の選手が多いことに言及。特に西海岸は多いらしい。

11 Sean Rabbitt ショーン・ラビット

前半ジャンプのミスが3つ続いたけど、後半はどんどんクリーンに降りていき、どんどん盛り上がっていった。
音楽の変化をきちんと演じ分けていた。ボディムーブメントが素敵〜。流れが最後まで止まらなかった。スピンうまーい。ポジションがびしっと決まってて、回転も速くていいわ〜。
今季初めて国際大会(オータム・クラシック)に出場することになって、すごく楽しみにしていたらしい。結弦くんも出てたよね。そこでラビットくんは、3位に入ったとのこと。よかったねえ。また国際大会に派遣してもらえるといいな。
フリーで125.92、合計192.63。現時点で総合1位。

12 Vincent Zhou ヴィンセント・ジョウ

4Sを2つ、3Aを1つ組み込んだ、高難度プログラムを、大きなミスなく滑り切った。選手本人も、感極まって両手で顔を覆う。
攻めてたなー。自分が持ってるものすべてを出し切った演技。杉田先生に「大したもんですね」と言わしめたよ。すげー。
音楽表現はまだジュニアっぽいけど、それはこれからどんどん改善されていくだろう。実際、ファイナルのときより、うまくなってたと思う。
キスクラにドーモくんが!!ドーモくんが全米デビュー!?(もうすませてるか?)
フリーで149.13、合計217.23。現時点でもちろん総合1位!

13 Grant Hochstein グラント・ホックスタイン

3A2本入ったー!!この3Aの安定感よ。ずっと苦しんできたのに。
4Tでフリーレッグのトゥがついたとか、2Fになったとか、ジャンプで少々ミスはあったけど、そんなのもうどうでもいいよ!!泣けたよ!!場内スタオベしてる人けっこういる。わたしも会場にいたら絶対してる。
杉田先生の言うように、歯切れのいい演技だった。コレオでちょっと音楽に合わずにせかせかしてたかなーと感じる部分もあったけど、そこを除けば、彼の体から歌声が流れ出ているかのようだった。
フリーで173.58、合計252.84。やったー!!高得点キター!!現時点で総合1位!!

14 Alexander Johnson アレクサンダー・ジョンソン

  • SP順位:7,得点:73.69
  • 使用曲:Eleanor Rigby

3A2本、クリーンに降りたー!!最後の3Sで着氷が乱れたけど、他のジャンプは全部クリーン。3Lz+1Lo+3Fって初めて見たかも〜!
2本目の3Aの後に、両足をススススって前後に動かすところ好きー。曲のアレンジもかっこいい!ステップシークエンスは痺れた〜。ぐはーー、かっこいいーー!!!
ジョンソンの演技は今まで何度か見ているはずなのに、初めて見た気がした。心奪われたよ。彼の真価を思い知らされたフリー・プログラムであった。
フリーで168.25,合計241.94。現時点で総合2位。おお〜、グラントがトップのままだ!
素晴らしい演技が続いているので、最終グループもこのままでお願いします!

●第4グループ

ネイサンの衣装、裾が斜めカットで、滑るとヒラヒラはためいてて素敵☆
杉田先生から、「マックスは非常にリラックスした動き。マイナーはちょっと力が入っている。少し心配」と、マイナーがお気に入りの私にとっては不吉なコメントが。杉田先生の観察眼って、ほんと確かだからなー。

15 Timothy Dolensky ティモシー・ドレンスキー

  • SP順位:5,得点:80.01
  • 使用曲:Variations on Themes of Chopin

クワドなしだが、3A2本(しかも後半に1本)のジャンプ構成。最初のスピンでポジションが乱れた。後でプロトコルを見たらやっぱり減点されてた…。でもレベル4はきっちりとってくるところはさすが。他のスピンはポジションも回転数もすごかった。特に最後のスピンのポジションはステファンがよくやるやつだった。
個人的にこのショパンのアレンジ、ちょっとガチャガチャうるさいんだよなーと不満なのだが、音楽自体はよく表現していたと思う。
杉田先生に「質の高いエレメンツが多い」って言わせるんだから、大したもんですよ。
フリー156.12、合計236.13。現時点で総合3位。

16 Nathan Chen ネイサン・チェン

  • SP順位:4,得点: 86.33
  • サン・サーンス作 交響曲第3番

2種類4回のクワド、クリーンに降りたーー!!!!3Aで転倒したけど、もうそんなの関係ない!!
ジャンプ以外の部分もよかった。ステップとコリオのボディームーブメントがまた素敵でねぇ。
このシニアでも世界トップレベルの超スーパー高難度プログラムを、ジュニアより30秒長いにも関わらず、最後まで一切疲れを見せず滑り切るって、ちょっとおかしいよ!!
演技が終わって場内スタオベ。本人は別に感極まってるわけじゃないところが末恐ろしい。化け物か!!
杉田先生大喜び。赤平アナ大興奮。こりゃー、すごい得点くるわー。初優勝くるかも!!!
TES100点超え!! フリーで180.60、合計266.93。現時点で当然、総合1位!!
第3グループからそのまま、良い流れが続いてます!この後、お兄さんたちが意地を見せられるか。

7 Max Aaron マックス・アーロン

2本目の3Aの着氷怖かったけど、3Sが2Sになっちゃったけど、ジャンプはほぼクリーンだった。場内スタオベ。
音楽表現の部分では、ちょっと淡泊というか、薄い感じはしたけど、自分の力を全部出し切れたと思う。ゆっくりの部分のボディームーブメントや、止まってポーズをとるところが、まだちょっとさまになってないというか。タメを作ったらいいのかなー。そこがかっこよくなると、ぐんと見栄えが良くなると思う。
フリーで177.72、合計269.55。現時点で総合1位。ほっとした顔のマックス。うん、よく頑張ったよ。お疲れ様でした。

18 Adam Rippon アダム・リッポン

ショートでちょっとせかせかした滑りだったので、心配していたのだが、前半の動きを見て、「ああ大丈夫。今日は良いアダムだ」と安心できた。
冒頭の4Lzで転倒。回転は足りたか?と思ったけど、後で確認したらダウンローテを取られてた。でも他のエレメンツは全てクリーンで、全てレベル4、GOE加点付き。
終始よい表情で滑っていた。力みのないジャンプ。リラックスして自由に、楽しそうに演じている。この全米初優勝がかかった、地元アメリカ開催のワールド代表権がかかった舞台で。ありえない。でもそのありえないことをやってのけているアダムを見ていたら、途中から涙が止まらなくなった。こんなに素晴らしい選手たち全員をワールドに派遣できないことがつらくて、心が引き裂かれそうだった。
演技が終わり、感極まって両手で顔を覆うアダム。場内スタオベ、大喝采
フリーで182.74、合計270.75。CURRENTLY: 1st!!!!!

トップきたー!!アダムが泣いてる。わたしももらい泣き。

19 Ross Miner ロス・マイナー

  • SP順位:2,得点:90.90
  • 使用曲:クイーン・メドレー

緊張してたかなぁ。余計な力が入ってた感じ。ジャンプに複数ミスが出たのも痛かったが、それより何より精彩を欠いた滑りだったのが致命的だった。ショートのときとは別人のよう。ああああ(泣)。
杉田先生「ショートとはまったく動きが違う。彼の持ち味が出せなかった」。
赤平アナ「滑走順が悪かった。前の選手たちが良すぎた」。うん、確かに。でも、ここで自分の力を発揮できない選手は、アメリカの代表権を勝ち取れないのだ。
フリー157.11,合計248.01。総合5位…グラントの下かー…。得点と順位を聞いたとたん、大きなクマのぬいぐるみに顔をうずめるマイナー。でもすぐに顔をあげて、笑顔で観客に手を振るマイナー。…つらい(泣)。

全米男子の最終順位は下記のとおり。ここでは13位まで。全員の順位と得点は、icenetworkのリザルトにてどうぞ。
順位、名前、SP順位、SP得点、FS順位、FS得点、総得点の順に書かれています。

  1. アダム・リッポン 3 88.01 1 182.74 270.75
  2. マックス・アーロン 1 91.83 3 177.72 269.55
  3. ネイサン・チェン 4 86.33 2 180.60 266.93
  4. グラント・ホックスタイン 6 79.26 4 173.58 252.84
  5. ロス・マイナー 2 90.90 6 157.11 248.01
  6. アレクサンダー・ジョンソン 7 73.69 5 168.25 241.94
  7. ティモシー・ドレンスキー 5 80.01 7 156.12 236.13
  8. ヴィンセント・ジョウ 8 68.10 8 149.13 217.23
  9. ショーン・ラビット 9 66.71 10 125.92 192.63
  10. ダニエル・クーレンカンプ 13 56.97 9 130.37 187.34
  11. スコット・ダイアー 12 59.67 11 122.43 182.10
  12. 大森勝太朗 10 63.82 13 117.67 181.49
  13. エマニュエル・セイヴァリー 11 62.96 15 116.36 179.32

アダムが嬉しい嬉しい初優勝。赤平アナによると、アダムは全米ジュニアで優勝した時も、この会場だったらしい。縁起のいい場所だったんだね。
彼のフリーの演技をくり返し見てみているのだが、好きな振付があちこちにあって、指摘できないくらいだ。ほんと、かっこいいプログラム。GPシリーズのときより格段に進化している。
なぜかヨナちゃんのバンクーバーのフリーを思い出した。あのとき、彼女の滑りから自由とやさしさを感じたんだけど、アダムの滑りにも同じものを感じた。
今まで苦労に苦労を重ねた末に、ようやくつかんだタイトル。本当におめでとう。続けること、諦めないことの尊さを教えてくれて、ありがとう。このフリーの演技は一生忘れない。
2位のマックスには、「本当によく頑張りました」という言葉を贈りたい。今大会の彼を見ていて、優勝のプレッシャー、半端なかったんだなというのが、ひしひしと伝わってきた。そんな中でほぼノーミスのSPとFSをそろえるというのがどれだけ偉大なことか。両プログラムとも、彼を大きく飛躍させたけど、もっと素敵になるはずなので、シーズン後半に向けてさらに磨き上げていってほしい。
3位のネイサンは、末恐ろしいとか化け物とかおかしいとか散々書いたけど、実は2シーズン前の世界ジュニアで彼の演技を初めて見たときからファンなので、彼が健康体でクワドばんばん跳べてる姿を見られて、心から喜んでます。
表彰式のとき、実況陣が、「クワド4回をクリーンに降りたのって、世界初じゃないか」と興奮気味に話していた。そういやそうかも!ボーヤンはまだクリーンには降りてなかったよね?
前から全米優勝は時間の問題だと思ってたけど、このフリーでそれは確信に変わったよ。来季あたり実現するんじゃなかろうか。とにもかくにも健康第一。ステイ・ヘルシーで!!
それとショートの衣装は、前の白に戻そう。

今大会フリーのネイサン→マックス→アダムの流れは、見ててめっちゃ痺れた。女子フリーにおけるグレイシーの大逆転劇に匹敵するほど興奮した。

4位のグラント…彼が全米の表彰台に上がれたなんて…自己最高順位、おめでとう〜〜。うれしい〜。四大陸の派遣も決まったそうで、初チャンピオンシップ出場もあわせておめでとう!!もう1回彼のレミゼが見られるかと思うとそれだけで天にも昇る心地がするよ。
5位のマイナーは…今はきっと落ち込んでると思うけど、どうか続けてほしい。今大会の彼のショート・プログラムは神様からのギフトだと思ったもん。新生マイナーをもっともっと見たいよ〜〜。頼むよ〜〜。
今大会でお気に入り選手が増えた。ジョンソン、ティモシー、ラビット。それと期待の若手として目を付けた(笑)、ヴィンセントとサヴァリ。
あと、全体的な話でいうと、やはりアメリカの男子選手はスピンがうまいですな。全米と全日本と比較して、ジャンプは日本が勝てそうだけど、スピンはアメリカの勝ちだと思った。
今年の全米男子は、素晴らしい演技がたくさん見られて幸せだった。選手の皆さん、本当にどうもありがとう。