ユーロ2016 男子FS

ユーロ2016 リザルト
2016年のヨーロッパ選手権は、スロバキアブラチスラバ、オンドレイ・ネペラ・アリーナにて開催される。
男子シングルのフリー・スケーティングは、現地で1月28日(木)、日本で29日(金)に行われる。

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ショートに引き続き、実況は小林千鶴さん、解説は岡部由起子さん。
深夜のライブ放送だったので、頑張って起きて後半だけは見ようと思ったのだが、起きられなかった…。結局、ぜんぶ録画で見ました。特に印象に残った選手について、感想を書いていきます。

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●第1グループ
クロアチアのニコラス・ブルドリャクが、フリーで「道」の音楽を使っていた。
彼の演技が終わった後、岡部さんが、「日本人だったら、この曲を聴いたら郄橋大輔の演技を思い出すと思う。そんなふうに、この曲を聴いたら『誰のどのプログラム』というのが浮かんでくるプログラムが良いプログラムとされている」と話していた。
わたしは大ちゃんのプログラムの中で、一、二を争うくらい「道」が好きで、ブルドリャクの演技を見ながら、大ちゃんの演技を思い出していたから、岡部さんに心中を言い当てられたかのようだった。そういう人、わたしだけじゃないよね?

●第2グループ

ワールドのフリーのミニマムスコアはTES64点が必要なのだが、岡部さんによると、出場者が30名前後になるように、計算されたポイントらしい。
千鶴さんによると、全員が3Aを入れる予定とのこと。3Aを入れないと、ワールドのミニマムスコア64点を獲得することは難しいようだ。

7 デニス・ヴァシリエフス(ラトビア

  • SP順位:14,得点:68.32
  • 使用曲:Adagio for Tron

コーチがウルマノフさん。
ショートに比べると、音楽表現が薄いかなーと思ったが、エレメンツを一つ一つ丁寧に行っているように見えた。3Aも着氷危なかったけど、降りれたし。
コリオでは、「それ、どうやって動かしてるの?」と聞きたくなるような、ユニークな振りを織り交ぜていた。ブレイクダンスふうの動きというのか。
岡部さんが、「とても伸びやかな滑りができる。将来が楽しみ」と話していた。うん、わたしも楽しみ〜☆
TES70,TSS135.92,SPとFSの合計204.24。おお、シニアのワールドに行けるぞ。

8 フランツ・シュトロイベル(ドイツ)

  • SP順位:15,得点:68.11
  • 使用曲:Django Unchained

謎の音楽、謎の振付。ユニークな動きがたくさん入ってるんだけど、何を表現しているのかイマイチよく分からなかった。ま、そういう謎のプログラムと思って受け入れるべきなのかも。
冒頭の4Tと3Aをしゅたっとクリーンに決め、最高の滑り出しだったのだが、プログラム後半からバテたのか、動きにキレがなくなってしまい、連続ジャンプがシングルの連続に…。演技終了後、選手が頭を抱えてしまった。
岡部さんは、「去年と比べて、体の大きさを生かすような、とても大きく体を動かした良い滑りになってきた」とほめていた。
TES66.20、TSS128.06、合計196.17。ワールドのミニマムスコア64点はクリアー。

9 フィリップ・ハリス(イギリス)

  • SP順位:18,得点:63.93
  • 使用曲:The Globalist

ジャンプでいろいろミスは出ちゃったけど、味わい深い演技だった。「ハリス、うまくなってる〜〜。こんなに素敵な選手だったとは!」と嬉しい驚きを感じながら見ていた。
岡部さんも、「全体を通して彼の個性を生かしたプログラムを滑ることができた。ところどころ体の動かし方も魅力的だった」とほめていた。
TES55.92、TSS117.06、合計180.99。ワールドのミニマムスコア64点はクリアできず。

10 イワン・パブロフ(ウクライナ

  • SP順位:13,得点:68.78
  • 使用曲:天使と悪魔

後半、ガス欠しちゃった印象を受けたのだが、最後のステップとコリオは力を振り絞って演じているように見えた。が、岡部さんは、「ステップとコリオの違いが分かりにくかった。コリオは、ステップとは違う、もっと生き生きとした何かがほしい」
岡部さんいわく、「足替えキャメルは、彼の特徴的なスピン」とのこと。他の選手はあまりやっていないそうだ。
体の使い方が魅力的な選手なので、これから先が楽しみだ。ウクライナは国が大変な状況だし、もともと連盟からあまり支援がもらえないみたいなので、どれだけ競技を続けられるか不透明だけど、見守っていきたい。
TES60.73、TSS120.87、合計189.65。ワールドのミニマムスコア64点には届かず。

11 パウル・フェンツ(ドイツ)

  • SP順位:16,得点:67.97
  • 使用曲:Another Brick in the Wall

音楽がゆったりした部分、静かな部分の表現が、手持ち無沙汰に見えるところがあった。それと、ステップの転倒からの回復が遅くて、抜けが大きくなってしまったのがもったいなかった。
岡部さんいわく「元気がなかった」。スタイリッシュな音楽を使っているだけに、十分表現できたら、きっと素敵なプログラムになるんじゃないかなー。良い演技で見たかったなー。
TES53.68、TSS114.62、合計182.59。ワールドのミニマムスコア64点には届かず。
ドイツのワールド派遣は、シュトロイベルになるのかなー。

12 フェリペ・モントヤ(スペイン)

  • SP順位:17,67.73
  • 使用曲:ラ・クンパルシータ

ジャンプがずいぶんすっぽ抜けてダブルになってしまった。でも、ボディームーブメントや音楽表現には光るものを感じる。
タンゴの音楽で、男性のセリフがずーっと入っているのだが、それがけっこう邪魔に感じた。岡部さんも言ってたけど、そのセリフを生かした振りがあれば邪魔に感じることもなかったのかもしれないけど、そういう部分もとくになかったから、「セリフいらないんじゃない?」という気分になってしまったんだな。
TES49.00、TSS114.22、合計181.95。ショートのミニマムスコアはクリアできたんだけどなぁ。残念。

●第3グループ

アモちゃんが、これで最後の演技だー。有終の美を飾れますように!
千鶴さんによると、マイオロフのお父さんの容体は、一進一退らしい(涙)。マイオロフは、お父さんの病気のことで、人生観が大きく変わり、とても前向きな気持ちになれたんだそうだ。

13 マッテオ・リッツォ(イタリア)

  • SP順位:12,得点:74.91
  • 使用曲:オペラのメドレー

うわー、いろんなオペラの名曲をくっつけたな(笑)。千鶴さんによると、3つのオペラのメドレーらしい。わたし、基本的に音楽のつぎはぎプロって好きじゃないんだけど、ここまで思い切りやられると、かえって気持ちいいかも。いちおう区切りのいいところで違う曲に切り替わってるし。
でも岡部さんは、「一つのオペラの中に、ハイライトのある曲、ない曲、たくさんの音があるので、できれば同じオペラのもので、ストーリー性があったほうが良かった」と話していた。うん、まぁそれも分かる。
ショートはすごく良かったんだけど、フリーはちょっと元気なかったような。淡々とエレメンツをこなしていくという演技になってしまった。せっかくオペラの有名どころメドレーなんだから、もっと生き生きと音楽を表現できたらいいのに。
世界ジュニアの派遣が決まっているらしいので、頑張ってきてほしい。
TES60.82、TSS125.90、合計200.81。おお、200点超えだ。

14 アレクサンドル・マヨロフ(スウェーデン

  • SP順位:11,得点:76.34
  • 使用曲:Archangel

昨季と同じプログラム。
2T、3回跳んじゃったーーーああああ(泣)。
冒頭の4Tは目の覚めるような美しいジャンプだった。2か月前に練習を開始した時はゼロからのスタートだったそうなので、よくぞここまで戻してきたと思う。
TES59.23、TSS127.93、合計204.27。ワールドのミニマムスコア64点には届かず。でも現時点で総合1位。

15 フローラン・アモ―ディオ(フランス)

  • SP順位:8,得点:78.28
  • 使用曲:Memories of Sobral

モロゾフ振付2011〜'12シーズンのプログラム。2011年ヨーロッパ・チャンピオン。
久々に見る、キレッキレのアモちゃんだった。4S含むジャンプをほぼクリーンに降りて、踊る踊る。場内スタオベと大喝采。千鶴さんが感極まって泣いてる〜〜。岡部さんもうるうるきてる感じ。
アモちゃんもモロゾフコーチも泣きながら喜んでいる。有終の美を飾れて良かった。
TES81.68、TSS162.68、合計240.96でSB!!現時点で、当然総合1位!!

16 ミハイル・コリヤダ(ロシア)

4Tのお手付き&ステップアウトと3Sがダブルになったミスはあったものの、他のジャンプはクリーンに降りていたし、スピンもステップもGOEで加点がもらえそうな出来栄えだった。
コミカルでユニークな振りがいくつも散りばめられていて、映画の雰囲気をよく出していたと思う。
岡部さんいわく、「初出場とは思えない貫禄があった」。
TES82.44、TSS159.00、合計236.58。現時点で総合2位。おお〜、アモちゃんがまだトップだ!

17 ヨリク・ヘンドリックス(ベルギー)

得点源の3A2本でステップアウトと転倒というミスが出てしまったのは痛かった。それと岡部さんも言ってたけど、3Aを跳ぶ前の待ちが長いのが気になった。
全体的に映画のセリフや効果音がけっこう入っているのだが、それにビックリして演技に集中できない部分があった。ただ、意図はわかる。たぶんタイタニックの物語そのものを表現したいんだと思う。映画のストーリーを知っていれば、セリフや効果音が表している場面は想像がつくんじゃないかな。少なくともわたしは大体わかった。
岡部さんは、この映画のセリフや効果音が散りばめられていることに懐疑的だったけれど、正直、わたしも同感だなー。意図は分かるけど、かえってセリフや効果音がプログラムの邪魔をしてるように感じたもんな。
ショート同様、ボディームーブメントは美しくて素敵だった。
TES68.98、TSS142.26、合計221.39。現時点で総合3位。お、コリヤダくんの下につけたぞ。

18 アレクサンドル・ペトロフ(ロシア)

音楽のゆったりしたところと、タンゴらしいキビキビしたところと、曲調によって演じ分けられていたんじゃないかな。特にゆったりした音楽のところで優雅に体を使えていて、素敵だった。
TES77.68、TSS152.74、合計229.69でSB。現時点で総合3位。おお〜、コリヤダの下か〜。

得点が出るたびに、1位から3位までの選手が待っている部屋、グリーンルームが映るのだが、選手たち、特にアモちゃんは、すっかりリラックスモードである(笑)。

●第4グループ

千鶴さんによると最終グループは、4回転を1度跳ぶ予定なのはリギーニ、2度跳ぶ予定なのはビチェンコ、他の選手4人は、2種類の4回転を3度入れる予定。すごい(汗)。
コフトゥンについて、岡部さんは、「彼の場合、課題は4回転ではなく3A」と言っていた。確かに(苦笑)。
ミハルが「ここはホームのようなもの。それにここは氷の質が良い。滑りやすい」と話しているようなので、期待したい。
ハビは、「4Sと3Tを2回ずつ」→「4Sと3Aを2回ずつ」に変更する予定。ジャンプのBVは、ファイナルの結弦くんのBVを超える構成にしてきたらしいよ!!国内選手権ではうまくいったらしい。ぐわー、なんてハイレベルな戦いなの!?

19 ダニエル・サモヒン(イスラエル

元気いっぱい最後まで滑り抜いた。よく頑張ったよ、サモヒン。
3度の4回転は降りれたんだけど、他の3回転がねえ〜〜。4回転を入れられる強みは、3回転をきちっと決められてこそなんだよなぁ。特に3Aがシングルになったのは痛かった。
まぁでも、まだ17歳だからね、ユーロの最終グループで滑れたのはすごく良い経験になったはず。
岡部さんから、「トランジション頑張れ」。はい、そうですね(笑)。
TES73.21、TSS149.35、合計232.08。現時点で総合3位。ペトロフくんの上に来たよ!

20 アレクセイ・ビチェンコ(イスラエル

2回目の4Tで転倒しちゃったけど!他のジャンプはほぼクリーンに降りてた!!ぐわー、すごい!!すばらしい!!こんなに良いビチェンコさん、見るの久しぶり…っていうか初めてじゃない!?こんな質の高いジャンプを跳ぶ彼を見るのは初めてじゃないかなぁ。
ジャンプだけじゃなく、レ・ミゼラブルの音楽を素敵に表現してたように思う。
TES83.17、TSS158.47、合計242.56でSB。現時点で総合1位!!アモちゃんを抜いたーー!!

21 イヴァン・リギーニ(イタリア)

  • SP順位:6,得点:82.23
  • 使用曲:Shine On You Crazy Diamond, Money

四回転は回避したけど、3Lzがダブルになった以外は、ほぼクリーンにジャンプを降りた。この最終グループで見ると、ちょっと動きにシャープさが足りないかなーと感じないではなかったけど、今自分にできることをやりきった演技だと思う。選手本人も満足そう。
TES77.61、TSS154.13、合計236.36でSB。現時点で総合4位。

22 ハビエル・フェルナンデス(スペイン)

  • SP順位:1,得点:102.54
  • 使用曲:映画「野郎どもと女たち」より

「さあ、横綱相撲を見せてもらいましょう」という気持ちで見始めたんだけど……はぁぁぁぁ、ほんっっっとうに、楽しませてもらいました。後半の3Aで転倒したり、3Loでステップアウトしたり、最後はちょっとバテ気味だったけど、もうねーー、そゆこと、どうでもよくなる演技だった。だって、つなぎのステップでこんなにウキウキさせてくれる選手、他にいないもん。すっげー楽しかった。ザッツエンターテイメント!って感じだった。
TES106.87、TSS200.23、合計302.77!!いよいよハビも300点超え!!おめでとうございます☆ 現時点でとーうぜーん総合1位!場内でめっちゃ叫びまくってる人がいる(笑)。

23 マキシム・コフトゥン(ロシア)

  • SP順位:2,得点:88.09
  • 使用曲:ベートーベンの音楽セレクション

4Tで痛そうな転倒があり、直後の4Sはダブルになってしまったのだが、後半のジャンプはほぼクリーンに降りていた。根性を感じた。
音楽表現のボディームーブメントに関しては、GPSのときより、格段に良くなっていたと思う。スムーズに動けていた。
岡部さんが、「4回転を跳ぶとき、踏み切り前に上体が前傾姿勢になるので、そこからまっすぐの軸に戻していく作業がうまくいかず、ミスが出てしまうのではないか」と指摘していた。ミハルもそうなんだよなー。
TES73.74、TSS154.12、合計242.21。現時点で総合3位。ビチェンコさんが!!ビチェンコさんが!!イスラエルの選手で初めてユーロの表彰台に!!!歴史を作ったーーー!!!
グリーンルームでは、アモちゃんがハビとビチェンコさんとハグをして出ていくところが映っていて、じーんとくる。アモちゃん、EXに出られるんじゃない?

24 ミハル・ブレジナチェコ

  • SP順位:3,順位:84.30
  • 使用曲:バレエ音楽「海賊」より

2度の4Sで転倒した他も、ジャンプでいくつもミスががががが(泣)。前傾姿勢がいつもより酷かったように感じた。
岡部さんが、「練習がうまくいっていないのか。何かかみ合ってないような。気持ちの問題だろうか」と話していた。本当に何が問題なのか。とても魅力的なスケーターなのになーーー。絶不調だったころのトマシュの姿を重なって、めっちゃ心配である。
TES52.09、TSS127.51、合計211.81。総合第10位……嗚呼(涙)。

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男子シングルの総合順位は下記のとおり。ここでは24位まで。総合順位、名前、国名、得点、SP順位、FS順位の順に記されている。

  1. Javier FERNANDEZ ESP 302.77 1 1
  2. Alexei BYCHENKO ISR 242.56 4 4
  3. Maxim KOVTUN RUS 242.21 2 6
  4. Florent AMODIO FRA 240.96 8 2
  5. Mikhail KOLYADA RUS 236.58 9 3
  6. Ivan RIGHINI ITA 236.36 6 5
  7. Daniel SAMOHIN ISR 232.08 5 8
  8. Alexander PETROV RUS 229.69 10 7
  9. Jorik HENDRICKX BEL 221.39 7 9
  10. Michal BREZINA CZE 211.81 3 13
  11. Alexander MAJOROV SWE 204.27 11 12
  12. Deniss VASILJEVS LAT 204.24 14 10
  13. Matteo RIZZO ITA 200.81 12 14
  14. Franz STREUBEL GER 196.17 15 11
  15. Ivan PAVLOV UKR 189.65 13 15
  16. Paul FENTZ GER 182.59 16 17
  17. Felipe MONTOYA ESP 181.95 17 19
  18. Phillip HARRIS GBR 180.99 18 16
  19. Stephane WALKER SUI 171.79 22 18
  20. Jiri BELOHRADSKY CZE 168.57 19 21
  21. Nicholas VRDOLJAK CRO 167.07 21 20
  22. David KRANJEC SLO 163.98 23 22
  23. Mario-Rafael IONIAN AUT 160.57 24 23
  24. Sondre ODDVOLL BOE NOR 149.60 20 24
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●表彰式

ハビとビチェンコさんは嬉しそうなんだけど、コフトゥンの表情が硬い…。だよなぁ、悔しいよなぁ。この悔しさをワールドにぶつけてほしい。
今大会が行われているオンドレイ・ネペラ・アリーナに名前が冠されている、オンドレイ・ネペラ(札幌五輪で優勝)は5連覇しているが、ハビの4連覇は、彼以来だそうだ。プルさんは、7回優勝しているんだけど、2年連続が最高で、間が開いているらしい。
引退するアモちゃんは、理想通りの終わり方ができて、喜んでいるようだ。日本のファンに向けてのメッセージによると、日本のアイスショーに来る気持ちがあるみたい。イエーイ!!アモちゃんがそのメッセージの最後に、「ありがとう」って言ってくれたけど、わたしたちのほうこそ、「ありがとう」だ。今まで、素敵な演技をたくさん見せてくれて、本当にどうもありがとう!!
フリーも、ショート同様、良い演技がいくつも見られて幸せ〜☆☆☆ 素敵な選手にも新たに出会えたし、大豊作の男子シングルであった。