四大陸2016 男子FS

四大陸2016 リザルト
2016年の四大陸選手権は、台湾の台北市(タイペイ・シティ)、台北アリーナにて、2月16日(火)から21日(日)に開催された。
男子シングルのフリー・スケーティングは、現地時間で2月21日(日)、日本でも同日に行われた。
フジの実況は中村光宏アナ、解説は本田武史さん。男子フリーは、お昼からだったので、残念ながら生放送はなし。そこでオンライン・リザルトをチェックしていたのだが、最後の劇的な展開に、「ライブで見たかった〜〜!!」と心から思った。
フジの地上波で放送があった選手+αの演技について、滑走順に書いていきます。

●第1グループ
3 ケヴィン・レイノルズ(カナダ)

  • SP順位:20,得点:55.14
  • 楽曲:映画「グランドピアノ 狙われた黒鍵」より

うまくなってる…。動きがぜんぶ音に合ってるし、ボディームーブメント一つ一つが様になってる…。かっこいい…かっこいいよケヴィン!!
――と、うち震えながら演技を見ていた。怪我してた間、どういう練習してたんだろう。めっちゃ素敵になってて心底驚いた。今大会で、彼を再発見した気分だ。
ジャンプでいくつかミスはあったけど、ダウングレードとられつつも、4回転2種類降りたし、連続ジャンプのセカンドに3Loつけられたし、順調に回復しつつあるようで、安心した。
フリー143.73、合計198.87。

●第2グループ
6 ロス・マイナー(アメリカ)

  • SP順位:17,得点:58.27
  • 楽曲:クイーン・メドレー

ジャンプの抜けが目立ったが、それより何より彼本来の滑りではなかった(泣)。ブレードが氷の上に安定して乗れてないんじゃないかと感じた。ぐらついているというか。
FS132.85、総合191.12。
怪我をしっかり治して、来季また素敵な演技を見せてください。待ってるよ!

7 リアム・フィルス(カナダ)

4Tと3Aと3Loで転倒…3回転倒でディダクション-3は痛い…(泣)。他のジャンプもクリーンに着氷できたものが少なかった。でも、ショートのときよりは彼本来の滑りの良さが出せているように感じた。
岡部さんいわく、「彼をジュニアのころから、良いものを持ってるなぁと思って見ているが、いかんせん、クリーンなプログラムを滑らない」。…わたしも見たことないなぁ。
FS132.21、総合194.02。ワールドではクリーンな演技ができますように!

8 アンドリュー・ドッズ(オーストラリア)

  • SP順位:13,得点:61.88
  • 楽曲:ワルソー・コンチェルト

最初は良かったのだが、途中からジャンプの転倒が続き、最終的には4回も転倒してしまった(泣)。前半は、体を大きく使って、壮大で美しい音楽をよく表現していたのだが、これだけ転倒してしまうと体力が失われるので、最後はヘロヘロな感じに…。
岡部さんいわく、「練習のときに、失敗したところでやめないで、最後までプログラムを通して滑ることを続けると、本番で失敗しても、コントロールできるようになる。強い選手は、試合での練習においてさえ必ずプログラムを途中でやめない」。
FS99.59、総合161.47。

9 デニス・マルガリク(アルゼンチン)

ショートでも感じたことだが、本当に上達したと思う。体をうまく使えていて、ムーブメントも素敵になっていた。
岡部さんも体がよく動かせていたことはほめていたのだが、「選手は『グラディエーター』の物語を演じているようなのに、それに音楽が合ってなくてもったいない」と話していた。最初から最後まで同じトーンの、しっとりした美しい曲なのだが、わたしも、マルガリクくんなら、もっとグラディエーターっぽい、勇ましい部分を使った方が合ってると思う。編曲ミスじゃないかなー。
FS119.94、総合177.65。
フリーのTESが60.88点なので、今回、ワールドのミニマム64点には届かなかったのだが、他の大会で獲得できているようで、ワールドに出場できるらしい。

11 ジュリアン・ジージェイ・イー(マレーシア)

  • SP順位:15,得点:59.70
  • 楽曲:Peter Gunn (soundtrack) , Fever, Oye Negra

3Aが2本入ったプログラムを、ちょこちょこGOEで減点されつつも、抜けや転倒はなく、滑り切った。岡部さんの言うとおり、彼の持っている力は出し切れたのではないだろうか。3曲つなげたプログラムなのだが、曲想の違いをきちんと演じ分けていたと思う。
演技が終わった後、本人ガッツポーズ! ここまでミスの多い演技が続いていたので、場内大盛り上がり。スタオベしてる人もいる。
千鶴さんによると、マレーシアには2つのリンクしかないので、練習環境は非常に厳しいらしい。北京で練習することもあるが、ジュリアンは、カナダで練習したいと考えているそうだ。
それから、「マレーシア史上初のフィギュアスケートオリンピアンになりたい」とのこと。がんばれ〜。
FS130.62、総合190.32で、フリーは自己ベスト更新! TES69.12なので、ミニマム64点クリアー。

●第3グループ
千鶴さんによると、キム・ジンソは、岡山の無良コーチのもとで練習しているらしい。日本の練習環境って、お世辞でも良いとは言えないので、「海外の選手がわざわざ日本で練習したがるなんて!」と意外に思った。韓国の事情はあまりよく知らないが、もしかしたら、韓国の練習環境も大変なのだろうか。

12 マイケル・クリスチャン・マルティネス(フィリピン)

着氷は乱れたけど、3A2本降りたし、ジャンプの抜けも転倒もなかったし、今できることをやり切った演技だったのではなかろうか。
スピンは、ビールマンポジションで8回転できるくらい得意だし、ジャンプは、高くて幅があるし、ボディームーブメントも素敵だし、これからの成長が楽しみでならない。
千鶴さんの話だと、ビールマンスピンのせいで腰を痛めているため、練習ではあまりやらないようにしているらしい。でも試合ではやりたいとのこと。…うーん、正直言って、ファンとしては怪我の原因になるならやめてほしいけど、選手本人はやりたがってるんだし…。
ショートもフリーも振付はモロゾフ。彼の新しいミューズはマルティネスくんなのか。めっちゃ彼が好きそうなタイプだもんなー(笑)。
フリー142.44、合計211.59。

13 田中刑事(日本)

  • SP順位:7,得点:74.82
  • 楽曲:オペラ「椿姫」より

4S転倒と3Aがシングルになるなど、得点源のビッグジャンプでミスしてしまったのが痛かった。また、最後のスピンがレベル2だったのももったいなかった。
でも、わたし的にこのプログラムのキモは、「恋する青年の色気がダダ漏れか」ということで、それに関してはバッチグー☆だったからいいのだ。恋の酸いも甘いも知り尽くした高級娼婦、ヴィオレッタが心惹かれたのもむりはないという説得力があった。
フリー147.88、合計222.70。

14 マックス・アーロン(アメリカ)

ジャンプのミスはさておき、スピンのレベルの取りこぼしが深刻で、2、3、3ときた。GPSで優勝するクラスの選手がこんなミスをするなんて、信じられない。具合が悪いとか、どこか痛めてるとかなのかなー。
全米でも感じたことだけど、上半身の動きが物足りなく感じるところがある。もっと大げさなくらい動いたりタメを作った方が見栄えがすると思うんだよね。
今大会では実力を発揮できず、残念だったが、ここで良い厄落としができたと思って、母国開催のワールドではぜひともベストの演技を見せてほしい。
フリー151.46、合計220.94

15 イ・ジュンヒョン(韓国)

3連続ジャンプを2個入れちゃったー。ぐわー、もったいない!
ジャンプでいくつかミスはあったけど、音楽表現は素敵だった。効果的にタメを作れていたし、ボディームーブメントも曲想に合っていたと思う。
プログラムの中に、バイクを運転しているような振付が入るので、ディカプリオ主演の現代版ロミジュリを演じているのだと思うが、だったら衣装も現代の若者が着てるような服にしたらいいのに。その方が「これは現代版ロミジュリだよ!」と分かりやすくていいんじゃないかなーと思った。
FS113.57、総合180.92。ワールドではクリーンな演技ができますように。

16 キム・ジンソ(韓国)

演技が始まる前、リンクサイドで無良コーチに、流暢な日本語で「大丈夫です」と話していた。韓国人って、日本語上手な人多いよなー。Jリーグの選手も上手だもんな。
ジャンプでは減点されそうな着氷が多かったけど、膝の踏ん張りで転倒せずにすんでいた。すごい脚力だなーと思うけど、膝への負担が心配である。
映画「雨に唄えば」に忠実な振付で、この曲が好きな、わたしのような人間にはたまらんプログラムである。GPSのときからお気に入りのプログラムだったが、さらに素敵になっていた。もそっと体が大きく使えるといいのになーとは思うけど、この音楽の一番だいじな部分、ぱっかーんと明るく希望に満ちた、見る人を幸せにするところは、ブレずに演じられていると思う。
雨に唄えば」は、カート・ブラウニングの伝説のプログラムがあるが、まさか競技プロで、ここまで映画に忠実な振付が見られるとは思ってなかった。ジンソくんに振付の宮本さん、ありがとう!!
FS136.30、総合201.43でSB。
TES65.76だから、ワールドのミニマム64点はクリアしてるんだけど、ワールドの韓国代表はジュンヒョンくんの出場が決まってるんだよね。今大会でこのフリーのプログラムは見納めかー。名残惜しいわー。

17 ナン・ソン(中国)

彼のダイナミックな滑りが好きなのだが、このフリーの演技は、ちょっと元気がない感じがした。「怪我が完全によくなってないのかなぁ」と思っていたら、中村アナと本田さんの話によると、前日、転倒してすぐ練習を切り上げた後、フリー当日、朝の公式練習に来なかったらしい。じゃあ本調子ではないんだな。少し動きが鈍かったもんなー。
千鶴さんによると、「たぶんこれが最後の試合」と話しているらしい。健康面の問題と後進の成長が理由とのこと。
フリー128.77、合計194.81。

●第4グループ
現時点でトップは田中刑事!!イエーイ!!
18 グラント・ホクスタイン(アメリカ)

千鶴さんによると、風邪をひいているらしい。この大会、体調を崩す選手多すぎ!(泣)岡部さんの話だと、リンク内も外も寒くて選手だけでなく関係者にも具合が悪くなる人がいたそうだ。
4Tで転倒した上に、今季、安定して降りていた3Aに2本ともミスが出たのが痛かった。それと、コリオシークエンスのとき、音楽にちょっと遅れてしまったかな?NHK杯や全米のときより、せかせかしているような印象を受けた。
本来であれば、まるで体から音楽があふれ出ているような、心の琴線をじゃらんじゃらんかき鳴らすプログラムなので、母国開催のワールドではクリーンな演技をお願いします!
フリー140.55、合計216.34。現時点で総合3位。

19 宇野昌磨(日本)

2本の4Tでミスが出てしまったー。でも彼の凄いところはジャンプでミスしても演技の流れが止まらないところ。音楽と調和した、シームレスで美しい滑りを堪能させてもらった。
これまで、わたしの中で「トゥーランドット」と言えば荒川静香だったが、今季、新たに宇野昌磨の名前が加わった。大好きなプログラムなので、ワールドではベストな演技を見せてほしい。
フリー176.82、合計269.81。現時点で総合1位。

20 ハン・ヤン(中国)

4Tと3Aを2本ずつの構成を、ほぼノーミスで滑り切った。ハン・ヤンが、ショートとフリー、そろえられたなんて!!場内スタオベ。
でも、腕がただだら〜んと伸ばしてるみたいに見えるところが気になる。肘が伸び切ってないんだよね。
クリーンな演技を見て、プログラムの全容がよく分かり、つくづく思ったのだが、ほんと変なプログラムだな〜(苦笑)。ロミジュリと聞いたら普通、ロマンティックなプログラムをイメージするけど、彼のそれは全然そういう感じがない。いったいどういうコンセプトなんだろう。
あと、このプログラムはセリフが少し入ってるんだけど、演技の邪魔をしてなくてよかった。
千鶴さんによると、彼も体調がよくないらしい。なのにこんな良い演技ができるなんて!すばらしい〜。
フリーで181.98、合計271.55でSB&自己ベスト更新。現時点で総合1位。

21 無良崇彦(日本)

1本目の3Aで着氷の乱れがあったが、他にジャンプのミスはなし。ステップシークエンスでちょっとつまづいたので、ひやっとしたが、ちゃんとレベル4とれてるし、GOEで加点ももらえてる。
スピンのレベルは4、3、3。うーん、せめてレベル4は2つとっておきたい。
シーズン初めに見たときは、「このプログラム、どうなんだろう」と思っていたが、すっかり自分のものにして、素敵な作品に仕上げてくれた。彼の新たな一面を見せてくれたと思う。来季の新プログラムが今から楽しみだ。
フリー179.35、合計268.43でSB&自己ベスト更新。現時点で総合3位。無良くんもお父さんも隣のコーチ(だよね?)も喜んでる〜。
今大会で、ショートもフリーもPB出せたんだ!すごーい!

22 ボーヤン・ジン(中国)

4Lz 4S 3A+1Lo+3S 4T+2T 4T 3Lz+3T 3A 3F
あんまりものすごいジャンプ構成なんで、思わず書き出してしまった。これ、4T+2Tから後半なんだよ?しかも最後から2番目のジャンプが3Aってどゆこと!?
そして彼は、このジャンプ構成をほぼノーミスでやり遂げたのである。すごい。すごすぎる。
ただ、やはり最後のほうは明らかに疲れてきて、ボディームーブメントはなおざりっぽい部分もあった。でも、前半のステップシークエンスは、音楽に合わせて生き生きと滑っていたし、けして、ジャンプだけの選手ではないと思う。
フリー191.38、合計189.83。もちろんSB&自己ベスト更新。現時点で当然、総合1位。

23 パトリック・チャン(カナダ)

  • SP順位:5,得点:86.22
  • 楽曲:ショパン・セレクション

何という音楽との一体感。何という美しい滑り。本田さんのコメント通り、ほんと、言うことない。まさにパーフェクトな演技だった。
演技が終わった後、パトちゃんが氷の上を両手でたたき、力強いガッツポーズ連発。場内スタオベ&大大大歓声。会場でこの演技を見られた人たちは幸せこの上ないですな。うらやましい限りです。
フリー203.99、合計290.21でSB。フリーは自己ベスト更新だよ!
SP5位から、10点以上の差をひっくり返し、大逆転で総合1位!!!
パトちゃんもコーチも大喜び。よかったね〜。がんばったね〜。心洗われるような美しい演技を見せてくれて本当にありがとう!

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男子シングルの結果は下記のとおり。左から総合順位、名前、国名、総合得点、SP順位、FS順位の順に記されている。

  1. Patrick CHAN CAN 290.21 5 1
  2. Boyang JIN CHN 289.83 1 2
  3. Han YAN CHN 271.55 3 3
  4. Shoma UNO JPN 269.81 2 5
  5. Takahito MURA JPN 268.43 4 4
  6. Keiji TANAKA JPN 222.70 7 7
  7. Max AARON USA  220.94 8 6
  8. Grant HOCHSTEIN USA 216.34 6 10
  9. Michael Christian MARTINEZ PHI 211.59 9 9
  10. Jin Seo KIM KOR 201.43 12 11
  11. Kevin REYNOLDS CAN 198.87 20 8
  12. Nan SONG CHN 194.81 11 15
  13. Liam FIRUS CAN 194.02 14 13
  14. Ross MINER USA 191.12 17 12
  15. Julian Zhi Jie YEE MAS 190.32 15 14
  16. June Hyoung LEE KOR 180.92 10 19
  17. Denis MARGALIK ARG 177.65 18 16
  18. Se Jong BYUN KOR 176.15 16 17
  19. Brendan KERRY AUS 172.26 19 18
  20. Andrew DODDS AUS 161.47 13 21
  21. Chih-I TSAO TPE 159.13 22 20
  22. Leslie IP HKG 152.29 21 22
  23. Harry Hau Yin LEE HKG 110.95 23 23
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今大会では、自己ベスト更新連発の素晴らしい演技がいくつも見られて幸せだった。
とりわけ、優勝したパトちゃんのフリーは、フィギュアスケートの神が降臨したかのような演技だった。フィギュアスケートの一つの完成形だと思う。はー、本当に素晴らしいものを見せてもらった。ありがとうありがとう。
2位のボーヤンは、世界で初めて、フリーでクワドを4回、一大会で6回成功させた。偉業達成!ジャンプ以外の部分もどんどん上手になってるし、ワールドでは堂々の表彰台候補ですな。
フリーの演技に関しては、正直、「PCSが80.72って出しすぎじゃん?」と思ったのだが、ジャッジの皆さんも、目の前で4本のクワドのクリーンな着氷を見て、興奮しちゃったんだろう。TESは110.66。100点超えるだけですごいのに、110点超えって。あまりの高得点に思わず笑いがもれてしまう。
3位のハン・ヤンは、ショートもフリーも、ジャンプをほぼノーミスに降りたのって、初めて見たかも。ここ数年、「ジャンプの安定性さえ備われば…」と思い続けていた選手なので、素直に喜びたいんだが、「この大会っきりじゃないよね…?」と信じきれない気持ちもあり(汗)。ワールドでそんなわたしをあざ笑うような良い演技をお願いしたい。
日本男子は4位、5位、6位と続けてフィニッシュ。こんなとこまで仲良しとは(笑)。3人とも課題と収穫があり、非常に有意義な経験だったのではなかろうか。4位の昌磨くんはそれをワールドに、5位の無良くんと6位の刑事くんは来季に生かして頑張ってほしい。
無良くんのPCSが、ショートもフリーも、パトちゃん、昌磨くんに次ぐ3位だったのが嬉しいなぁ。表現力を上げるために精進してきた彼の努力が報われつつあるのを感じる。
刑事くんは、今季、大きく飛躍したよね!ほんとよかった〜。来季の更なる活躍が楽しみ〜。
ケヴィンは11位と、成績は振るわなかったけど、久しぶりに演技が見られて、しかもめっちゃかっこいい大人のスケーターになってて嬉しい驚きだった。来季の飛躍を期待したい。くれぐれも怪我はしないように気をつけて!!