世界ジュニア2016 男子FS

世界ジュニア2016 リザルト
2016年の世界ジュニア選手権が、ハンガリーデブレツェン、フェニックス アリーナで開催された。
男子シングルのフリー・スケーティングは、現地時間で3月18日(木)に行われた。

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BSフジで男女シングルのフリーの演技が2時間枠でそれぞれ放送されたのだが、今までこんなに長く放送してなかったよね?
フジの解説は荒川静香さん、実況は鈴木芳彦アナ。
Jスポーツの解説は中庭健介さん、実況は小林千鶴さん。
世界ジュニアの来季の出場枠は、上位2人の順位を足して「13」以下で最大の3枠、「28」以下で2枠となる。
特に印象に残った選手の演技について、滑走順に、感想を書いていきます。

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●第1グループ
4 友野一希(日本)

  • SP順位:20,得点:58.33
  • 楽曲:映画「デーヴダース」「ムトゥ踊るマハラジャ」より

4Sがダブルになってしまったけど、他はほぼ予定通りにジャンプを降りられたんじゃなかろうか。3Aも2つ入ったし、急に出場が決まったのに、ジャンプの調整力、すごいなぁ。
表現することに強い意志を感じる。将来が非常に楽しみだ。
フリー121.28、総合179.61。SPもFSも自己ベスト更新だよ!素晴らしい〜。

5 宮田大地(日本)

  • SP順位:19,得点:59.10
  • 楽曲:映画「ブレイブハート」より

4Tの転倒はいいとして、他のジャンプで抜けがいくつか出てしまった上に、コンボが2つしか入らなかったのが痛かった。3Aがない分、他のトリプルジャンプはきっちり決めておきたかったなぁ。
長い手足を大きく使って演じていたが、全日本での演技はこんなもんじゃなかったので、あんまりコンディション良くなかったのかも。
雰囲気のある選手なので、来季もまた素敵なプログラムを見せてほしいな。
フリー110.09、総合169.19。

●第3グループ
13 ダニエル・サモヒン(イスラエル

プログラム前半に、4T+3Tと4S、3Aを、後半に4Tをクリーンに着氷!3Lzがダブルになったほかはミスのない演技だった。
単にジャンプが決まっただけでなく、動きにキレがあり、プログラムの雰囲気をよく出せていたと思う。今季最高のホームズだったよー!
フリー165.38、総合236.65でどちらも自己ベスト更新!フリーはジュニア最高得点で、キスクラの選手も両親も大喜び!!
2種のクワドを3つ、しかも1つは後半に跳ぶんだもんなー。そりゃ最高得点も出るわ。

14 フー・ジャン(中国)

  • SP順位:10,得点:70.85
  • 楽曲:ピアノと管弦楽のための幻想曲

彼、19歳なんだなぁ。ジュニア、ラストイヤーかー。
一つのプログラムの中で、ハッとするほど美しい動きを見せるときと、淡泊な印象を受けるときとあるので、そのムラがなくなると、もっと素敵な演技になるんじゃないかな。
フリー124.85、総合195.70。

15 チャ・ジュンファン

ぐはー、うまい。まだ14歳で今季ジュニアデビューとか、信じらんない。
体のラインやボディームーブメントがしなやかで美しい。ジョニーや結弦くんの動きにちょっと似てるかも。
3Aも跳べるし、シニアでも十分通用しそう。平昌オリンピックにもギリギリ間に合う年齢だよね。こりゃ韓国期待の星ですな。
バイオを見ると、ジュニアのGPSに出てなかったみたいだけど、なんでだろう。シーズン前半は、怪我してたのかな。
フリー132.73、総合207.11で、総合得点は自己ベスト更新。

17 ニコラス・ナドゥー(カナダ)

冒頭の3A+3Tの高さに度肝を抜かれた。次の4Tはアンダーローテで両足着氷になってしまったけど、その次の3Aはパーフェクト!カナダ男子は3Aが苦手なイメージだったけど、彼は得意にしてるのかな。2本とも素晴らしかった。
滑る喜びが体の奥からあふれ出しているような演技だった。一つ一つの音やフレーズを丁寧に的確に表現していた。
昨季の世界ジュニアは25位だったなんて、とても信じられない。今季、すごい飛躍を遂げたんだなー。
フリー150.86、総合224.76でどちらとも自己ベスト更新!

18 中村優(日本)

3Aの転倒をはじめとして、ジャンプにいくつかミスが出てしまったが、ボディームーブメントは美しく優雅だった。曲の静かなところ、激しいところを演じ分けることができていた。
フリー120.17、総合186.22でSPもFSも自己ベスト更新!よかったね〜。

第3グループが終了した時点で、総合1位はサモヒン、2位はナドー。

●第4グループ
19 ドミトリ・アリエフ(ロシア)

これまであまり印象に残らない選手だったのだが、このフリーのボディームーブメントには胸を打たれた。端正な滑りが美しい。
でも、途中から疲れてきたのか、動きのキレが鈍くなり、ジャンプやスピンにミスが出てしまった。荒川さんには「後半、スピードが落ちた」と指摘されていた。SPトップで緊張しちゃったのかなぁ。
中庭さんは、ショート同様、彼の滑りやディープエッジをすごくほめていたので、きっとこれからぐんぐん伸びていくんだと思う。楽しみ☆
フリー130.44、総合211.18。フリーのSB(かつPB)の155.60点より25点も低い…(泣)。現時点で総合3位。

20 デニス・ヴァシリエフス(ラトビア

  • SP順位:3,得点:78.78
  • 楽曲:Adagio for Tron

前半はすごく良かった。3Aを2本、きれいに降りたし、中盤のステップまでは、滑りやボディームーブメントに胸ときめかされたんだけど、後半疲れてしまったのか、ジャンプに抜けや着氷の乱れが出てしまった。
後でプロトコルを見たら、3Aの2本ともダウンローテとられてたり、後半の3Lzにも<が刺さってたり、スピンにもミスがあったりしたんだな。
フリー125.97、総合204.75。現時点で総合5位。
SB(かつPB)を出したユースオリンピックでは、フリーで149.09点も出してたのに…23点も低い…(泣)。

21 ヴィンセント・ジョウ(アメリカ)

冒頭の4Tがダブルに、3Aで転倒扱いになり、4Sが2本ともアンダーローテをとられてしまったけど、前半に4Tと4S+3T、後半にジャンプ6本(3Aと4Sを含む)という、非常に難度の高い構成に挑んできた。全米よりさらに攻めてきたなー。すごい。
ジャンプ以外の部分も、本当にうまくなったと思う。ジュニアのGPファイナルのときとは別人のようだ。GPSで見たときは、「ジュニアの選手に『ゴッドファーザー』なんか滑らせて〜。人生の悲哀とか大人の哀愁を感じさせてほしいのに〜」と思ってたけど、今大会では立派に滑りこなしていた。来季、大化けしそう。
フリー143.88、総合221.19で、総合得点は自己ベスト更新。現時点で総合3位。

22 樋渡知樹(アメリカ)

  • SP順位:6,得点:74.97
  • 楽曲:映画「ライムライト」より

SPより、感情の表出が感じられる演技で、躍動感があった。チャップリンの音楽で感情の表出が感じられなかったら、見てて非常に辛いので、助かった(苦笑)。
SPの感想でも書いたけど、エレメンツの質の高さは、本当に素晴らしい。ショートに引き続き、ミスらしいミスがまったくない演技だったのだが、なんと、3Aと3Lzと3Fを2本ずつ跳んで、3Fが1つノーバリューになってしまった。ジャンプにミスはなかったのに、なんでこんなことに?プログラムのジャンプ構成を直前に変えて、間違っちゃったのかなぁと疑問に思っていたのだが、千鶴さんによると、事前に提出された予定表でも3Aと3Lzと3Fを2本ずつ跳ぶ構成になっていたらしい。…選手もコーチも気づかなかったの!?どんだけうっかりさんなんだ(苦笑)。
フリー147.55、総合222.52で、SPもFSも自己ベスト更新!現時点で総合3位。
クワドなしで3Fのノーバリューもあって、この高得点はすごいわー。

23 アレクサンドル・サマリン(ロシア)

前半、ジャンプの転倒や着氷の乱れがあったせいか、後半スタミナ切れしてしまい、淡泊な演技になってしまった。ジャンプは持ち直して成功させてたんだけどなー。
うまく説明できないけど、ボディームーブメントや滑りに、他にはない個性を感じるので、それを大事に伸ばしていってほしいなーと思う。
フリー141.80、総合222.11。現時点で総合4位。

最終滑走のエイモズくんの演技は、放送されなかった(泣)。

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FSが終わって、結果は下記のとおり。左から総合順位、名前、国名、総合得点、SP順位、FS順位の順に記されている。

  1. Daniel SAMOHIN ISR 236.65 9 1
  2. Nicolas NADEAU CAN 224.76 8 2
  3. Tomoki HIWATASHI USA 222.52 6 3
  4. Alexander SAMARIN RUS 222.11 2 5
  5. Vincent ZHOU USA 221.19 4 4
  6. Dmitri ALIEV RUS 211.18 1 7
  7. Jun Hwan CHA KOR 207.11 7 6
  8. Deniss VASILJEVS LAT 204.75 3 9
  9. Kevin AYMOZ FRA 197.76 5 11
  10. He ZHANG CHN 195.70 10 10
  11. Yaroslav PANIOT UKR 189.50 15 8
  12. Shu NAKAMURA JPN 186.22 12 13
  13. Matteo RIZZO ITA 182.96 11 17
  14. Roman SAVOSIN RUS 181.65 13 14
  15. Kazuki TOMONO JPN 179.61 20 12
  16. Jiri BELOHRADSKY CZE 178.51 16 16
  17. Yakau ZENKO BLR 174.39 22 15
  18. Daichi MIYATA JPN 169.19 19 18
  19. Aleksandr SELEVKO EST 166.61 17 20
  20. Chih-I TSAO TPE 164.25 14 22
  21. Sondre ODDVOLL BOE NOR 163.64 21 19
  22. Nicola TODESCHINI SUI 161.15 18 21
  23. Josh BROWN GBR 157.16 23 23
  24. Irakli MAYSURADZE GEO 154.41 24 24
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乱高下激しい男子シングルであった。サモヒンが大逆転優勝!ナドーが2位、樋渡くんが3位。ジュニアは不安定で、SPの順位があてにならないとはいえ、SP9位→総合1位、SP8位→総合2位、SP6位→総合3位って、ほんと、ものすごくドラマティックな試合展開だった。
今季は2月にユースオリンピックがあったから、それに出場した選手はピーキングの調整が難しかったのかもしれない。毎年行われる大会じゃないし。
優勝したサモヒンは、正直、SP終わった時点で、メダルは無理かと思っていたよ。イスラエルの選手が世界ジュニアで優勝するのは初めて!ユーロで銀メダルを獲ったビチェンコさんに続き、偉業を成し遂げましたね!おめでとう!

2位のナドゥーには、マイベストパフォーマンス賞を捧げたい。SPもFSも、まるで彼の体から音楽が湧き出ているかのような演技だった。ジュニアGPSの演技を見たときから素敵だと思ってたけど、今大会ですっかりファンになってしまったよ。

3位の樋渡くんは、何といっても正確な技術が素晴らしい。クワドはまだプログラムに入れてないけど、3A跳べるし、ルッツとフリップのエッジもエッジエラーとられないのも強みだよなー。あとはもっと人の心に訴えかける表現ができるようになれば。
プレカンで、樋渡選手は、3回転以上のジャンプを3種類2回以上跳んだことについて質問されたのだが、「3Aは、3回転ジャンプとは別のカテゴリーかと勘違いしていた」と答えていた。別のカテゴリーって…ジャンプの基本的なルール、知らなかったんだ…(苦笑)。

4位のヴィンスは、攻めに攻めた構成だったのだが、思ったように得点が伸びず。個人的にはもうちょっとジャンプの難度を下げて、質の向上を目指した方が、効率よく得点を稼げるんじゃないかと思うんだけど、全米の解説で杉田先生が、「若いころは失敗を恐れず攻めることで成長する」と話していたので、きっと彼のこの挑戦が、さらに飛躍につながるはず。怪我の多い選手なので、とにかく怪我には十分気をつけてほしい。

ロシア男子は、素晴らしい演技でSP1、2位になったのに…2人とも表彰台を逃すとは。まぁそれでも総合4位と6位でちゃんと3枠確保したのは偉かった。とはいえもうそろそろロシア男子の優勝があってもいいんじゃないか。他のカテゴリではたくさん優勝してるんだし。

7位のジュンファンは、すごいぞーすごいぞーと聞いていたので、めっちゃ興味津々だったのだが、本当にすごかった。オーサーコーチが付いてるし、練習拠点は結弦くんやハビたち強い選手がわんさかいるところなので、これからさらにどんどこ進化していくんだろうなー。楽しみだわー。

8位のヴァシリエフスくんは、今季こそ表彰台に上がれると思ったのだが。世界ジュニアの順位は8位→7位→8位で、なかなか上に行けない。年々素晴らしさに磨きがかかっているのに!もどかしい〜〜!

9位のエイモズくんは、噂に違わず、ユニークで素敵なスケーターだった。フランス男子の伝統にのっとって、おもろいプログラムをどんどん滑ってほしい。

10位のフーくんは、順調にうまくなっていて嬉しかった。中国男子はハン・ヤンやボーヤンなど、めっちゃ強い選手がいるので、国の代表になるのは大変だと思うが、頑張ってほしい。

日本男子3人は、優勝候補の草太くんの欠場で、プレッシャーが半端なかったと思うけど、本当によく頑張ったと思う。2枠取れたし、国別順位は10位なので、来季のJGPSは6大会に1人ずつ派遣されるらしい。よかったよかった。

最後に、フジテレビの頑張りに、感謝を表したい。な、なんと、フリーに関しては、JスポーツよりBSフジのほうが、放送された選手の演技が1人多かったのだ!(BSフジでしかフーくんの演技は放送されなかった)ありがとう〜〜☆