ワールド2016 アイスダンスSD

ワールド2016 リザルト
2016年の世界選手権は、アメリカのボストン、TDガーデンで開催された。
アイスダンスのショート・ダンスは、現地時間で3月31日(木)に行われた。

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SDは、Jスポーツの放送で見た。解説は滝野薫さん、実況は小林千鶴さん。
わたしがロシアで一番好きなカップル、ボブロワ&ソロビエフが、ドーピング問題で今大会欠場(泣)。一刻も早く問題が解決され、彼らが競技の場に戻ってこれますように!(祈願)
では、特に印象に残った選手の演技について、感想を書いていきます。

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●第1グループ
1 エリザベット・パラディ / フランソワ・ザヴィエ・ウェレット(カナダ)

  • 楽曲:Lost,Kill

カナダの国内選手権3位で初出場の組。四大陸では総合6位。
ツイズルで男性の回転の質が悪かったものの、全体的には流れのある滑りでよかったように感じたのだが、まさかの51.94。四大陸のときは60.15点だったのに。
四大陸のプロトコルと比較したのだが、確かにワールドではレベルを取りこぼしてて、TESが低いというのもあるのだが、PCSが3点ほど低いというのが気になる。そりゃ大会によって、PCSの出方は変わるものだが、3点も違うって珍しいんじゃなかろうか。四大陸と比べてそんなに滑りが悪かったようには見えなかったんだけどなー。

3 イザベラ・トバイアス / イリヤ・トカチェンコ(イスラエル

  • 楽曲:映画「シンデレラ」より

ユーロの感想にも書いたけど、ほんと、乙女心をめっちゃ満たしてくれるドリームなプログラム。ユーロのときより、のびのび滑れてる感じがした。
滝野さんによると、「女性は本格的にバレエを学んでいたので、バランスや上半身の使い方、フリーレッグのライン、全身のシルエットが、四方どこから見てもたいへん美しい」。
60.97。

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●第2グループ
6 ナタリア・カリシェク / マクシム・スポディレフ(ポーランド

  • 楽曲:Rain Waltz, Tea For Two

二人の距離が近い。曲のつなぎ目に、ステーショナルリフトが入っているのだが、これが独創的かつタイミングぴったりで印象的だった。
最後の要素が終わった後、女性が180度開脚し、二人でくるくる回るところが素敵だったわ〜。
59.88で自己ベスト更新。

9 ヴィクトリア・シニツィナ / ニキータ・カツァラポフ(ロシア)

これまでの組とは明らかに別格の滑りだった。一蹴りが伸びること伸びること。スピードもすごく出ているように感じた。
昨季に比べればずいぶん息が合ってきたとは思うのだが、ツイズルでのズレっぷりが気になる。男性の方が回転が速く、移動距離も大きいのだが、ここがぴったりそろうようになると、さらにユニゾンが増していいんじゃないかなー。
67.68。

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●第3グループ
滝野さんが、村元&リードを大絶賛。ジャッジ仲間にも口をそろえて「素晴らしい」と称賛されているそうだ。

11 セシリア・トルン / ユッシヴィッレ・パルタネン(フィンランド

  • 楽曲:The World (WIth You) , Witchcraft

滝野さんが指摘していた通り、二人の距離が近く、ホールドがしっかりしていて、ユニゾンがいいなぁという印象を受けた。
ナチュラルでオシャレな振付が多く、ソフトで軽やかな滑りがフランク・シナトラの歌声によく合っていて素敵だった。
56.51で、自己ベスト更新。

13 村元哉中 / クリス・リード(日本)

  • 楽曲:Waltz: Wiener Cafe,Olympiamarsch,UNO March

ぐっはー!! ほんと、見るごとにうまくなるな!! すごいな!!
ワルツとマーチの曲想の違いをとてもよく表現していた。最後のローテーショナルリフトは、回転は速いし、ポジションは美しいし、スピードはあるしで、すっごく見ごたえがあった。
59.00で自己ベスト更新。もう少しで目標の60点だよ!!

14 カヴィタ・ローレンツ / パナギオティス・ポリゾアキス(ドイツ)

勢いがある、ダイナミックな滑りでよかった。
バイオを見ると、この組は、2015年の春に結成されたのだが、な、なんと、男性はそれまでシングルの選手だったらしい。アイスダンスを始めて1シーズン目でこれだけできるなんて信じられない。
滝野さんが、「男性のリードがうまい。これは掘り出し物」とほめていた(笑)。
54.80。

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●第4グループ
16 フェデリカ・テスタ / ルカーシュ・チェーレイ(スロバキア

音楽との一体感が素晴らしく、アダムス・ファミリーの世界観をよく表していた。ほんと個性的で魅力的なカップルだわ〜☆
61.75。

17 アレクサンドラ・ナザロワ / マキシム・ニキティン(ウクライナ

  • 楽曲:The Blue Danube, Radetzky March

女性の怪我でユーロは欠場。昨季の世界ジュニア銅メダリスト。
ワルツでは優雅な感じが出せていたように感じたが、マーチでもっと歯切れよく滑れたらもっとよかったんじゃないかなーと思った。エンディングの振付がユニークでかわいらしくてよかった。
女性が華奢で細くてまだジュニアっぽい体つきだなーと思ったのだが、滝野さんも「力強い滑りに必要な筋力がついてないんじゃないか」と心配していた。
53.64。

18 ロレンス・フルニエ・ボウドリー / ニコライ・ソレンセン(デンマーク

  • 楽曲:Never Tear Us Apart by INXS,March by Karl vn de Kerckhove

プログラムの終わり方がかっこいい。滑りが大きく、キレがあってよかった。
59.75。

20 シーユエ・ワン / シンユー・リウ(中国)

なめらかでスピード感があってよかったと思うのだが、滝野さんには「エッジが浅い」等々、ダメ出しをされていた。「今季、伸び悩んでいるように感じる」とのこと。
でもわたし、この組の演技、好きだなぁ。今大会では残念ながらフリーに進めなかったが、来季のプログラムが楽しみだ。
52.92。

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●第5グループ
21 ペニー・クームズ / ニコラス・バックランド(イギリス)

  • 楽曲:喜歌劇「こうもり」

演技を見ながら、「そうそう! こういうワルツが見たかったんだよー!! 満たされるわ〜」と幸せいっぱいな気持ちになった。
ユーロの感想でも書いたけど、「ワルツならこういうのが見たい」という王道のプログラムをキレッキレに生き生きと演じていた。滝野さんも言ってたけど、音楽との調和が本当に素晴らしい。
彼らは今季、プラトフさんからシュピルバンドさんにコーチを変えたのだが、それが良かったってことなんだろうなー。でも、プラトフさんが見られなくなって、ちょっとさみしい…。
68.23で自己ベスト更新。

22 マディソン・ハベル / ザガリー・ダナヒュー(アメリカ)

  • 楽曲:ハレルヤ

マーベラス!!! 音楽との調和、そして一体感が素晴らしい。同じハレルヤの音楽を使いながらも、リズムの変化を明確に表現していた。
氷に吸いつくような滑りで、滝野さんいわく、「感動で心が満たされる演技だった」とのこと。まさしく。
68.44。

23 アレクサンドラ・ステパノワ / イワン・ブキン(ロシア)

  • 楽曲:スタントマン

女性の鮮やかなオレンジのドレスが氷上に映えてすごくきれい。
ボブロワ&ソロビエフの代わりに出場することになって、準備や調整が大変だったと思われるが、演技自体はたいへん素晴らしかった。音楽のフレーズやリズムに、動きが全部ハマってるんだよなー。そしてボディーラインが本当に美しい。
滝野さんいわく、「演技の深みという点では多少物足りない一面もあるが、技術的には申し分ない」。うん、深みはこれからどんどん増していくよ。だってシニアに上がってまだ2シーズン目だもん。
63.84。

24 シャルレーヌ・ギニャール / マルコ・ファブリ(イタリア)

滝野さんが指摘していたように、終始スピードを落とすことなくダイナミックな滑りを見せてくれた。このスピード感とパワーには圧倒される。彼らの演技はうっとりさせられるというより、ワクワクさせられるという感じ。
滝野さんいわく、「常に本番で全力を出し切っている。普段の練習で、相当ハードワークして鍛えているんだと思う」とのこと。
65.96。

25 パイパー・ギルス / ポール・ポワリエ(カナダ)
楽曲:ビートルズ・メドレー
四大陸の後、音楽を変更。ワールド直前に、リスクのある決断だったが、これが大当たり。正直、四大陸でSDを見たときは、あんまりいいとは思えなかったのだが、変更後のSDを見たら、断然好きになってしまった。
オブラディ・オブラダの音楽に乗ってのパーシャルには興奮させられたわ〜! 男性が女性の頭をホールドするのは、前からやってる振付なんだけど、それが曲想にマッチしていて素敵だし、他の振付もいちいちかっこよくてもうもうもう! キャー!! 好きだ!!
70.70で自己ベスト更新。とうとう70点超え! キスクラのギルス&ポワリエも超ビックリ&大喜び☆

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●第6グループ
滝野さんが、「パパダキス&シゼロンのスケーティングスキルはずば抜けている。彼らに匹敵しうるのがシブタニ組」と話していた。

26 マイア・シブタニ / アレックス・シブタニアメリカ)

滝野さんいわく、「全てパーフェクトでした」。
あっという間に終わってしまった。スーパーツイズルは、滝野さんに「レベル4では足りない。GOEも+5がほしい」と言わしめるほど。最後のリフトの入り方は、何をどうやったらそんなふうにできるのだという入り方だった。すげー。
アレックスはボストン生まれ(マイアはNY生まれ)なんだって。まさにホームタウンと言うべき場所でこれだけの演技ができて、ほんと、嬉しいだろうなー。よかったよかった。
滝野さんによると、彼らに足りない唯一のものが、「大きくてダイナミックなフロー」とのこと。「かつてのトービル&ディーンやバーチュー&モイアは、完璧なまでの正確さで、自由自在にエッジを操ることができる。繊細で重力感のないタイプのスケーティング」で、シブタニ組もこちらのタイプなんだそう。「トップスピードで流れるようなフローが特質のスケーティングとは、全く異質のベストフロー、ベストスキル」と考えているそうだ。
74.70で自己ベスト更新。この高得点にも、「うん、納得」という落ち着いた態度。さすが。

27 マディソン・チョック / エヴァン・ベイツ(アメリカ)

  • 楽曲:More,Unchained Melody

女性は青いドレスなのだが、裾から青緑のアンダースカートがのぞいているのが、本当にとってもきれい。
しなやかで雰囲気たっぷりで、大人のダンスという感じ。最後のリフトの降り方は人間技じゃないと思う。トップレベルのカップルになると、リフトはサーカスの曲芸並みにすごくてほとほと感心させられる。しかもそれを曲想に合わせた動き&タイミングでやってるんだぜ。くり返しになるが、ほんと人間技じゃない。
わたしはまったく気づけなかったのだが、滝野さんが言うには、ツイズルで男性がスタンブルしてしまったらしい。でも、スローで見返してもよくわかんない。確かにちょっとスムーズさに欠けた動きがちょこっとあったかなぁ…?
72.46でSB。

28 ケイトリン・ウィーバー / アンドリュー・ポジェ(カナダ)

  • 楽曲:The Blue Danube,Annenpolka

正統派のワルツを、軽やかにゴージャスに美しくパワフルに演じていた。
滝野さんによると、「ワルツのリズム表現が、ほぼ同じトーンで続いてしまって、今一つ惹き込まれない部分があった。ウィンナワルツ特有の繊細な間の取り方や美しいワルツホールドの動作がアクセントになって入っていると、もっと効果的なリズムキャラクターの表現になったかもしれない」。
こういう王道のワルツ音楽を使うと、求められるものがすごく高くなってしまうらしい。だから今季、あんまり使用されなかったのかなぁ。
71.83。

29 アンナ・カッペリーニ / ルカ・ラノッテ(イタリア)

  • 楽曲:The Merry Widow

明るく楽しいダンスと二人のコンビネーションの円熟味を堪能させてもらった。
ツイズルで回転が終わるのが少しずれてしまったのが残念だった。
滝野さんいわく、「二人のポジションが離れている部分が多く、振付・演技構成の緻密さが少し足りない。それと途中2小節のセパレーションがあったようだが、SDでは、1小節までしか認められていないので、振付の減点が取られるかもしれない」とのこと。
70.65。

30 ガブリエラ・パパダキス / ギヨーム・シゼロン(フランス)

  • 楽曲:Charms, Composition

ほえ〜〜と見とれているうちに終わってしまった。滝野さんによると、「ツイズルで女性の回転が少しぶれてしまった」そうなのだが、そんなのスローでまじまじ見て、ようやく「ああ…言われてみればそうかな?」という程度である。
滝野さんいわく、「他を圧倒するスケーティングスキル」に基づいた素晴らしい演技だった。心が震えたわ〜。
76.29で自己ベスト更新。

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SDが終わって、順位は下記のとおり。左から順位、クオリファイ、名前、国名、TSS、TES、PCSの順に記されている。

  1. Q Gabriella PAPADAKIS / Guillaume CIZERON FRA 76.29 38.46
  2. Q Maia SHIBUTANI / Alex SHIBUTANI USA 74.70 37.78 36.92
  3. Q Madison CHOCK / Evan BATES USA 72.46 35.62 36.84
  4. Q Kaitlyn WEAVER / Andrew POJE CAN 71.83 34.99 36.84
  5. Q Piper GILLES / Paul POIRIER CAN 70.70 36.45 34.25
  6. Q Anna CAPPELLINI / Luca LANOTTE ITA 70.65 34.35 36.30
  7. Q Madison HUBBELL / Zachary DONOHUE USA 68.44 33.58 34.86
  8. Q Penny COOMES / Nicholas BUCKLAND GBR 68.23 35.20 33.03
  9. Q Victoria SINITSINA / Nikita KATSALAPOV RUS 67.68 32.42 35.26
  10. Q Charlene GUIGNARD / Marco FABBRI ITA 65.96 33.19 32.77
  11. Q Alexandra STEPANOVA / Ivan BUKIN RUS 63.84 30.75 33.09
  12. Q Federica TESTA / Lukas CSOLLEY SVK 61.75 32.09 29.66
  13. Q Isabella TOBIAS / Ilia TKACHENKO ISR 60.97 31.52 29.45
  14. Q Natalia KALISZEK / Maksim SPODIREV POL 59.88 31.86 28.02
  15. Q Laurence FOURNIER BEAUDRY / Nikolaj SORENSEN DEN 59.75 29.83 29.92
  16. Q Kana MURAMOTO / Chris REED JPN 59.00 31.49 27.51
  17. Q Cecilia TヨRN / Jussiville PARTANEN FIN 56.51 30.06 26.45
  18. Q Kavita LORENZ / Panagiotis POLIZOAKIS GER 54.80 28.50 26.30
  19. Q Barbora SILNA / Juri KURAKIN AUT 54.63 29.43 25.20
  20. Q Alexandra NAZAROVA / Maxim NIKITIN UKR 53.64 26.95 26.69
  21. Alisa AGAFONOVA / Alper UCAR TUR 53.56 28.27 25.29
  22. Shiyue WANG / Xinyu LIU CHN 52.92 26.49 26.43
  23. Elisabeth PARADIS / Francois-Xavier OUELLETTE CAN 51.94 26.59 25.35
  24. Cortney MANSOUR / Michal CESKA CZE 51.68 27.16 24.52
  25. Rebeka KIM / Kirill MINOV KOR 49.79 25.89 23.90
  26. Celia ROBLEDO / Luis FENERO ESP 49.58 26.15 23.43
  27. Tina GARABEDIAN / Simon PROULX-SENECAL ARM 47.11 24.13 22.98
  28. Viktoria KAVALIOVA / Yurii BIELIAIEV BLR 40.82 18.22 22.60
  29. Olga JAKUSHINA / Andrey NEVSKIY LAT 40.80 20.34 20.46
  30. Anastasia KHROMOVA / Daryn ZHUNUSSOV KAZ 40.69 21.64 20.05
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◆総評
アジア勢は村元&リードを除いてSD落ち…厳しい。でもそんな中、きっちりFDに進めた村元&リードが誇らしいですよ!!
カッペリーニ&ラノッテは、70点を超えているのに、最終Gに入れなかったという。なんてハイレベルな大会なんだ。
滝野さんの解説は、今回初めて聞いたのだが、文学的表現というかポエマーな言い回しをされる方で、正直背中がむずがゆくなる部分もあった(苦笑)。でも、エレメンツごとに良い悪いを指摘してくれるので、どうしてこの組にこういう点が出るのかが分かりやすく助かった。