JGPチェコスケート2016 男子SP

ジュニアのGPシリーズ第2戦。男子SPは、現地時間2016年9月2日(金)に行われた。
JGPチェコスケート2016 リザルト
わたしは、ISUのライブ放送

を第4グループの途中から見て、次の日、上位の組を中心に見ました。特に印象に残った演技について、滑走順に書いていきます。

                                                                                                                                        • -

●第1グループ
4 ジョセフ・ファン(カナダ)

  • 楽曲:The Best Is Yet to Come by Michael Buble

昨季、ジュニアの国内選手権優勝。今季がJGPデビューのようだ。
マイケル・ブーブレの歌声にのって、オシャレで小粋な音楽をよく表現していた。素敵なプログラムだなぁと思って、バイオを見たら、振付がジェフだった。道理で素敵なわけだよ。
3Lz+3T、2A、3Loと、ジャンプも全てクリーンに着氷したのだが、な、なーんと、2番目のスピンがノーバリューに。明らかにミスと分かる出来だったもんなー。もったいなかった。
カナダからまた素敵な選手が出てきたね〜。フリーが楽しみ☆
62.38。

5 ケヴィン・シャム(アメリカ)

  • 楽曲:Eleanor Rigby performed by Joshua Bell, Frankie Moreno

昨季、全米ジュニア2位。
冒頭から表情を作って、雰囲気を出していたのだが、エレメンツに入る前に転倒。でもすぐに立て直し、体を大きく使って、男性ボーカルと弦楽器の音を素敵に表していた。一蹴りが伸びて、気持ちのいい滑りだった。
ジャンプはノーミスに見えたが、プロトコルを見ると、3Lz+3T<だった。それからステップとスピンのレベルを取りこぼしていた。スケーティングが良いのに、もったいないよー。
59.49。減点2は、転倒とタイムバイオレーション。音楽と共に演技は終わっていたと思うんだけどなー。振付が時間ギリギリなのかも。

                                                                                                                                        • -

●第2グループ
7 イワン・パブロフ(ウクライナ

  • 楽曲:Bad Boys (soundtrack) by Mark Mancina

昨季、JGPに出ていたが、シニアの大会にも数多く出ており、国内選手権優勝、ユーロ15位、ワールド23位だった。
パブロフくん、背が伸びてる!体つきも大人っぽくなってる!
ブレイクダンスっぽい振付のプログラムで、超クール!!!だった。昨季から、ボディームーブメントが素敵だなぁと思っていたが、こんなに踊れるようになっていたとは。
ジャンプの高さからいって、冒頭の2Aは、トリプルを跳びたかったんじゃないかな?3Loは、見た目クリーンに見えたのだが、GOEで減点されていた。
めっちゃ素敵なプログラムなので、これからの進化が楽しみでならない。
64.91。

8 須本光希(日本)

  • 楽曲:Singin' in the Rain by Nacio Herb Brown

昨季、全日本ジュニア6位、全日本14位。
きちんとした端正な滑りは好みだし、曲想の曲想の変化を上手に表現できていたと思うのだが、わたしは、音楽が始まったとたん、「キャー!!『雨に唄えば』だ!!」と胸が高鳴るくらい、この曲が好きなので、どうしても求めるものが高くなってしまうんですよ。
もっと表情豊かに滑ってほしい。この音楽は、映画の主人公がハッピーハッピー超ハッピーな気分で、雨の中、踊りまくり歌いまくるシーンで使われているのに、無表情で滑るなんて〜。あふれる多幸感が必要不可欠なんですよ!
…とまぁ、わたしの勝手な希望はさておき、2A、3Lo、3Lz+3Tと、ジャンプは全てクリーンに下りたのだが、2番目のスピンで、回転がすごーく遅くなり、レベル2&GOE減点をもらってしまった。
でも、63.72で自己ベスト更新! おめでとう〜☆

10 マティアス・ベロフラドスキー(チェコ

  • 楽曲:
    • Puttin' On the Ritz by Irving Berlin (Club des Belugas remix)
    • Jolie Coquine by Caravan Palace

ジーくんの2つ違いの弟。そして、コーチはトマシュ! コーチはトマシュ!
3Lz+2Tは、おそらく3+3の予定だったと思われる。FCSpに入るときにバランスを崩して軸がぶれてしまい、回転がゆっくりになってしまったためか、GOEで減点されてしまった。そして3Loで転倒。
ステップシークエンスは、小さな体を大きく使って踊る踊る。音楽表現がめっちゃ素敵☆ これからの成長が楽しみだ。
54.11で自己ベスト更新!

12 アレクセイ・クラスノジョン(アメリカ)

  • 楽曲:Etude Op. 10, No. 3 in E by Frederick Chopin

昨季、全米ジュニア3位。JGP3位に入ったが、ファイナルはまだ経験なし。2013年までロシア所属だったらしい。
まだ16歳だけど、長身で手足が長く、体つきもしっかりしていて、シニアのスケーターと遜色ない感じ。
ショパンの超ロマンティックな音楽を、よく表現していたと思う。が、やはり曲想が曲想なだけに、ちょい雑かなーと感じられる部分があった。その辺が洗練されてくると、うっとりさせられる、素敵なプログラムになりそう。
3F+3Tと3Aは、GOEで1点以上加点がもらえる出来。3Loもクリーンに着氷。レベルもほぼ取りこぼさなかったのでは。
75.10で自己ベスト更新! 高得点が出て、選手もコーチも大喜び。これまでのPBが67.53点だから、8点近く更新だよ! おめでとう☆

                                                                                                                                        • -

●第3グループ
16 イジー・ベロフラドスキー(チェコ

  • 楽曲:
    • Everything by Safri Duo
    • Played-A-Live (The Bongo Song) by Safri Duo

昨季はジュニアとシニアの掛け持ちで、JGPに出た後、シニアの国内選手権2位、ユーロ20位、世界ジュニア16位。そして、トマシュがコーチ!! トマシュがコーチ!!
スケーティングがうまくなった気がする。一蹴りがぐいーんと伸びるようになった。
3Lz+2Tはセカンドに3Tを付けたかったんだろうけど、3Lzの着氷でちょいバランスを崩したのでダブルに。2Aと3Loはクリーンに着氷。
サフリ・デュオの音楽は、打楽器が主役だと思うんだけど、まだそれを十分には表現し切れてなかったかなー。もそっとキレと力強さが出せるようになると、もっとぐっと印象が良くなるんじゃなかろうか。
演技が終わった後、リンク外で選手と握手するトマシュの笑顔が最高! めっちゃ癒される〜。
56.81。

17 サミュエル・タルコット(カナダ)

  • 楽曲:I Won't Dance by Fred Astaire

まだ16歳だけど、見た目はもうすっかり大人。バイオを見たら、みごとに真っ白だった。今季がJGPデビューというだけでなく、国際大会自体、初めてなのではないか。
冒頭からしっかり表情を作り、フレッド・アステアの快活な歌声に乗って、おしゃれに軽快に滑り出したのだが、途中で音楽が変わったアレンジになり(こういう音楽、何ていうんだろう。メタリックっていうか映画「マトリックス」のサントラ風っていうか)、最後また原曲に戻るというプログラム構成。
正直、わたしは原曲オンリーのほうが好みだが、編曲との切り替えが自然でスマートでいいなと思った。誰が振り付けてるんだろうと思ってバイオを見たら、ショーン・ソーヤー!! わたし、彼の演技、大好きだったんですよー。ショーに出ているとは聞いていたが、振付もやってるんだ。嬉しい☆
原曲と編曲との表現の差を、もっと明確に付けられるようになると、プログラムの深みが増すんじゃなかろうか。
ジャンプではお手つきがあったり着氷が乱れたり、最後のスピンで何かミスがあったらしくVが付いていたが、音楽表現は、なかなか素敵。フリーが楽しみだ。
56.02。

                                                                                                                                        • -

●第4グループ
19 ロマン・サヴォシン(ロシア)

  • 楽曲:Bella Ciao by Andre Rieu

昨季、ジュニアの国内選手権3位、世界ジュニア14位。
今季、JGP1戦目のサン・ジェルヴェで優勝。2連戦、お疲れ様です。
3F+3T、3A、3Loと、ジャンプは全てクリーンに着氷し、レベルの取りこぼしも(多分)なく、全エレメンツでGOE加点を取るという、オールマイティーな出来栄え。しかも後半、音楽がどんどん激しく速くなっていくところも、きちんと表現できていた。…がしかし、だがしかし。なーんかこう、面白みが薄いんだよなー。+αがほしいというか。
ま、自分でも贅沢言ってるのは分かってます。穴がない分、もっともっと求めちゃうんだよね(汗)。
72.90で自己ベスト更新!

23 ドミトリ・アリエフ(ロシア)

昨季、ジュニアのGPファイナル2位、ジュニアの国内選手権優勝、世界ジュニア6位。今季はジュニアのファイナルも世界ジュニアも優勝候補の一人と思われる。
演技が始まってすぐ瞠目した。アリエフくんが、かっこよくなってる!! ときめいたよ!!
途中までは動きがキレキレで、相手の存在が見えるような演技で、切なく美しい音楽をみごとに表現していたのだが、プログラム後半、2番目のスピンがよれよれに〜(レベル1&GOE減点)。せっかく、ジャンプは3A、3Lz+3T、3Loと、全てクリーンに着氷できてたのに〜。
演技が終わった後、アリエフくんも「やっちまったな」という感じで苦笑い。
でも、77.45と、高い得点が出た。選手もコーチも嬉しそう。

                                                                                                                                        • -

◆SP順位
SPが終わって、順位は下記のとおり。左から順位、名前、国名、TSS、TES、PCSの順に記されている。

  1. Dmitri ALIEV RUS 77.45 41.20 36.25
  2. Alexei KRASNOZHON USA 75.10 41.21 33.89
  3. Roman SAVOSIN RUS 72.90 39.90 33.00
  4. Ivan PAVLOV UKR 64.91 33.95 30.96
  5. Mitsuki SUMOTO JPN 63.72 33.68 30.04
  6. Joseph PHAN CAN 62.38 31.42 30.96
  7. Kevin SHUM USA 59.49 30.21 31.28
  8. Jiri BELOHRADSKY CZE 56.81 29.68 27.13
  9. Se Jong BYUN KOR 56.16 27.13 29.03
  10. Samuel TURCOTTE CAN 56.02 27.94 28.08
  11. Matyas BELOHRADSKY CZE 54.11 28.53 26.58
  12. Lukas BRITSCHGI SUI 53.54 29.61 23.93
  13. Glebs BASINS LAT 51.80 27.01 24.79
  14. Daniil ZURAV EST 51.71 26.14 26.57
  15. Radek JAKUBKA CZE 50.35 28.49 22.86
  16. Larry LOUPOLOVER AZE 48.42 25.14 23.28
  17. Alexander MASZLJANKO HUN 47.59 22.88 24.71
  18. Ryszard GURTLER POL 47.54 25.96 21.58
  19. Tangxu LI CHN 46.63 23.27 24.36
  20. Jakub KRSNAK SVK 41.58 20.68 20.90
  21. Chih-Sheng CHANG TPE 41.00 20.90 20.10
  22. Samuel MCALLISTER IRL 38.95 18.60 20.35
  23. Daniel TSION DEN 38.01 17.41 21.60
  24. Johannes MAIERHOFER AUT 34.11 14.72
                                                                                                                                        • -

◆総評
SP1位のアリエフくんは、昨季からさらにかっこよくなっていて、めっちゃ嬉しい。どんどん個性が醸し出されてるな〜。素敵〜☆ PCSを見ても、頭一つ抜けた評価をもらってるので、フリーでジャンプミス連発さえなければ、優勝は堅そう。とはいえ、昨季の世界ジュニアで、SP1位で折り返した際の、フリーの苦い記憶があるので、一抹の不安を覚える。わたしの杞憂で終わりますように。
2位のクラスノジョンくんは、初めて見る選手だったのだが、アメリカからまたいいスケーターが出てきたなーと思った。アメリカはフィギュア大国だけあって、どのカテゴリも途切れなく力のある選手が出てくるんだよね。
クラスノジョンくんを含め、アメリカとカナダの選手は4人とも、「演じる」ことに長けている印象を受けた。やはり北米の選手は表現への意識が高いのかな。みな素敵なスケーターなので、フリーの演技が楽しみである。
3位のサヴォシンくんは、ファイナルに半分王手をかけただろうか。ジャンプの安定感を見ると、フリーで大崩れはなさそうな気配。ただまぁ男子は四回転にチャレンジする選手が多いので、フリーで大失速もありえるんだよなぁ。彼の場合、1戦目のサン・ジェルヴェでは4T1回だけ跳ぶ構成だったので、大丈夫そうだけど。
5位の光希くんは、まだ3Aをプログラムに入れられないようなので、表彰台は厳しいかもしれないけど、4位のパブロフくんとは、ほとんど差がないし、一つでも上の順位を目指して頑張ってほしい。
全体的な感想を言うと、スピンのミスがけっこうあった。女子と比べ、柔軟性に欠けるから、レベルを取ろうと思うと、上位の選手でさえミスしちゃうんだな〜。
ジャンプに関していえば、ジュニアのSPには四回転が入れられないので、高難度ジャンプ構成にビックリ☆というのはなかったが、フリーではどうだろうか。