JGPリュブリャナ杯2016 男子FS

JGPリュブリャナ杯2016 リザルト
ジュニアのGPシリーズ第5戦。男子FSは、現地時間2016年9月23日(金)に行われた。

で見た、後半2グループの演技について、感想を書いている。
日本語表記に自信がない名前には?を付けている。

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●第3グループ
11 William HUBBART ウィリアム・ハバート?(アメリカ)

  • SP順位:12,得点:54.22
  • 楽曲:Someone to Watch Over Me by George and Ira Gershwin

見た目クリーンな演技だった。プロトコルを見ると、2つの3Lzに!が付いた以外のエレメンツは、GOE減点なし。
前半、しっとりした音楽なのだが、CSSp4を境に音楽が明るい曲想に変わる。そこでもっとワクワクさせてほしい。今はまだ前半と後半の曲想の変化があまり感じられないんだよね。
腕の動かし方がかくかくしてて、ちょっと可動域が狭い感じ。つなぎに印象的な振付が入っているので、所作が洗練されてくると、さらに素敵なプログラムになりそう。
フリー117.29、総合171.51。

12 Nurullah SAHAKA ヌルラ・サハカ?(スイス)

  • SP順位:11,得点:54.64
  • 楽曲:Pierrot and the Moon by Maxime Rodriguez

ジャンプの着氷がなかなかクリーンに決まらず。スピンが得意な選手だと思うのだが、疲れが足にきていたみたいで、最後のスピンでジャンプした後、転倒してしまった。ノーバリューにはならなかったけど、Bが付き、GOEマイナス。
ミスが目立ってしまったが、個性的な振付や小芝居を思いっ切り演じている姿に好印象をもった。
フリー99.91、総合154.55で、SP同様FSも自己ベスト更新!

13 マッテオ・リッツォ(イタリア)

冒頭の1Aは、勢いと高さがあったから、3Aの予定だったんじゃないかな。次の3Tは、そのうち4Tにしたいのかも。どうして連続ジャンプを2つしか入れなかったんだろう。後半に2Tを付けようと思えば付けられたと思うんだけど。
スピンのレベルは4、3、4と取れているのだが、あまり質が良くないところを見ると、ちょっと苦手なのかなー。
ステップやつなぎのボディームーブメントが曲想をよく表していて素敵だった。
フリー122.17、総合178.08。

14 ケヴィン・エイモズ(フランス)

  • SP順位:7,得点:61.49
  • 楽曲:
    • Condolence by Benjamin Clementine
    • Nemesis by Benjamin Clementine

2本目の3Aと3Loで転倒した以外は、本当に素晴らしかった。特に冒頭の3A+2Tの高さときたら!(GOE 1.57)
前のJGPサン・ジェルヴェでの主な敗因は、「コンボが1つしか入らない」、「3Fにeマークが付いた」、「スピンが1つノーバリュー」だったが、ちゃんと対処してきていて、3Fを外し、コンボは3つ、スピンもきっちりやって、極力点数の取りこぼしがないように頑張っていた。
ステップはレベル3だったが、あの鬼気迫るような、荒ぶるような表現は、他の誰にも真似できないと思う。段違いのスピードといい、卓越した音楽表現といい、すっかり魅了されてしまった。
フリー133.32、総合194.81でどちらともSB更新! フリーは自己ベスト更新でもある。
エイモズくんの笑顔が見られた〜。よかった〜。

15 ソンドレ・オドヴォル・ボー(ノルウェー

  • SP順位:8,得点:60.07
  • 楽曲:Bring Him Home (from "Les Miserables") by Claude-Michel Schoenberg

スピンの回転がゆっくりめで、一つのポジションの回転が足りないんじゃないかなーと心配してたら、CCoSp2にVが付いていた。
ジャンプは、ルッツがダブルになり、3Fに<が付き、コンボが2つしか入らないなど、複数のミスが重なってしまった。
でも、男性ボーカルの歌声に、彼のふんわりソフトなスケーティングが合っていて、よかったと思う。大きくなめらかな動きも素敵だった。ただ、ちょっとインパクトが足りないかも。もそっと力強さがほしい。
リンクに上がる前に、次に滑るイジーと何か話して手をパチンと合わせてた。仲良いんだな。練習拠点が同じオーベスドルフだもんね。
フリー104.28、総合164.35

16 イジー・ベロフラドスキー(チェコ

こんにちは、トンデモ編曲(笑)。
3+3が入らなかった上に、コンボが2つまでしか入らなかった。それと、CCoSp2でバランスを崩し、Vが付いてしまった。
ピアノの美しい独奏→ロック→クラシック→激しい曲という忙しないアレンジなのだが、ロックのところで、あまり動きに変化がないんだよなー。ガラッと曲想が変化してるんだから、もっと表現してほしい。
とはいえ、クラシックのところのステップは素敵だったし、終盤のCSSp4の前の激しい曲想のボディームーブメントもかっこよかった。
フリー110.51、総合168.76。

第3グループが終わり、総合1位はケヴィン・エイモズ(フランス)。

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●第4グループ
17 イリヤ・スキルダ(ロシア)

  • SP順位:4,得点:69.32
  • 楽曲:Once Upon a Time in America by Ennio Morricone

こんにちは、質の高いシリアスな小芝居プロ(笑)。
彼にしてはスピンの回転がゆっくりだったように感じたが、あくまでも本人比の話で、全てレベル4だし、加点も付いている。
全てのエレメンツに、ジャッジが誰一人マイナスを付けていない。これぞクリーンな演技というくらいクリーンだった。
フリー138.96、総合208.28で、SP同様、FSもSBおよび自己ベスト更新! 現時点で総合1位。
ぐっはー、3A&クワドなしで、200点超え! おそろしあ!

18 イワン・パブロフ(ウクライナ

  • SP順位:6,得点:61.71
  • 楽曲:Blood Diamond (soundtrack) by James Newton Howard

冒頭の3A+1Aは、流れが止まってしまったが、マイナスは付かなかった。2本目の3A<での転倒と、3F!のステップアウト以外では、GOEマイナスなし。
全体的にもう少しシャープさがほしいが、StSq3は、抑揚があって素敵だった。昨季と比べて、ボディームーブメントが一回り大きくなったように感じる。
フリー123.8、総合185.19。現時点で総合3位。

19 友野一希(日本)

  • SP順位:5,得点:68.96
  • 楽曲:An American in Paris by George Gershwin

クリーンに着氷できたジャンプが少なかったが、得点源の4Sと3Aで転倒や抜けがなくてよかった。
ステップはまたレベル2かー。せめてレベル3は取りたい。それと、もっとキレとスピードがほしい。
まぁ、それよりなにより、友野くんの課題はスピンだよなー。レベルは4、3、4なんだけど、減点されてるスピンがあるんだよね。スピンで加点がガンガン付くようでないと、トップにいけない。
JGP横浜のFSが、めっっちゃ良かったので、こちらの要求も高くなってしまうのよね。
フリー133.61、総合202.57。現時点で総合2位。

20 ジョセフ・ファン(カナダ)

  • SP順位:3,得点:70.33
  • 楽曲:

3A<に挑戦したが転倒。でもま、挑戦していかないと、成功もないからね。ナイストライよ。他のジャンプのミスは、2A+1Lo+3Fに!が付いたのと、2本目の3Fでの転倒。
スピンは得意だと思うのだが、レベルが3、4、3で、ちょっと取りこぼしてしまった。
JGPチェコスケートで初めて見た時にも思ったけど、曲が次々変わるので、表現が難しそう。散漫な感じになっちゃうんだよね。
フリー127.39、総合197.72で、総合得点は自己ベスト更新! 現時点で総合3位。

21 ドミトリ・アリエフ(ロシア)

  • SP順位:1,得点:78.03
  • 楽曲:The Man In The Iron Mask (soundtrack) by Nick Glennie-Smith

こんにちは、鎖巻き巻き衣装(笑)。
4T<転倒、次の4T+2Tは、ファーストで手をついたために2Tがノーバリュー。3A転倒。その後の膝くるくる3Fを決めたので、これで落ち着くかと思ったのだが、その後もジャンプにミスが出てしまった。
終盤のStSq3は、おそらく剣を取っての戦いの場面なのだが、疲労のためか、「それじゃ殺されちゃう!」というくらいへろへろだった(泣)。
このプログラムは、高難度ジャンプと高いスケーティングスキル頼みなところがあるので、ジャンプが崩れてしまうと、とたんに魅力が薄まっちゃうんだよなー。
フリー122.88、総合200.91。現時点で総合3位。

22 アレクセイ・クラスノジョン(アメリカ)

  • SP順位:2,得点:71.98
  • 楽曲:
    • 50 Rodeo - Four Dance Episodes: III. Saturday Night Waltz by Copland Aaron
    • 51 Rodeo - Four Dance Episodes: IV. Hoedown by Copland Aaron

冒頭の4Loは、>が付くかなと思ったが、付いてなかった。初認定おめでとう!!
ジャンプのミスは、4Loの着氷の乱れと3Lzがダブルになってしまったことくらい。2本目の3Aは幅がすごかった〜!!(GOE 1.57)
コミカルな振付が入っている楽しいプログラムなのだが、ずーっと真顔というか、必死な顔をして滑っていた。緊張してたんだろうか。ファイナルがかかってるもんな。
フリー139.20、総合211.18。総合1位に決定!! クラスノ、喜んでる〜!!

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◆総合順位
男子シングルの総合順位は下記のとおり。総合順位、名前、国名、得点、SP順位、FS順位の順に記されている。

  1. Alexei KRASNOZHON USA 211.18 2 1
  2. Ilia SKIRDA RUS 208.28 4 2
  3. Kazuki TOMONO JPN 202.57 5 3
  4. Dmitri ALIEV RUS 200.91 1 7
  5. Joseph PHAN CAN 197.72 3 5
  6. Kevin AYMOZ FRA 194.81 7 4
  7. Ivan PAVLOV UKR 185.19 6 6
  8. Matteo RIZZO ITA 178.08 10 8
  9. William HUBBART USA 171.51 12 9
  10. Jiri BELOHRADSKY CZE 168.76 9 10
  11. Sondre ODDVOLL BOE NOR 164.35 8 11
  12. Nurullah SAHAKA SUI 154.55 11 14
  13. Se Jong BYUN KOR 150.41 15 12
  14. Nika EGADZE GEO 149.29 13 15
  15. Harrison Jon-Yen WONG HKG 147.59 16 13
  16. Thomas STOLL GER 141.43 14 16
  17. Micah TANG TPE 131.14 19 17
  18. Jakub KRSNAK SVK 126.63 20 18
  19. Luc MAIERHOFER AUT 125.83 21 19
  20. Josh BROWN GBR 124.38 18 20
  21. Mate BOROCZ HUN 121.53 17 21
  22. Davide LEWTON BRAIN MON 103.66 22 22

WD Roman GALAY FIN

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◆総評
今季のJGPは、大番狂わせがほとんどなく、優勝候補がそのまま優勝することが多かったのだが、この第5戦に至って、大番狂わせが起きた。
クラスノがJGP初優勝!! おめでとう!! 演技を見るに、絶好調ではなかったようだけど、踏ん張って踏ん張って、みごとJGFファイナル初出場を決めた。そして4Loが初認定!! GOEでマイナスは付いてるけど、これは認定されたということでいいんだよね? こちらもおめでとう!!
2位のスキルダは、ほんっっと、ジャンプの安定感とエレメンツの質の高さがすばらしい。彼もファイナル行けるんじゃないか?(2位&2位) ジュニアデビューのシーズンに、JGPファイナル進出って、男子では珍しいのではなかろうか。
3位の友野くんも、初めてのJGP表彰台、おめでとう!! ミスがあっても200点超え! 地力がついてきたってことだよね☆ 嬉しいよー!!
4位のアリエフは、非常に残念であった。まさか彼がフリーで大失速するとは…。優勝間違いなしだと思ってたのになぁ。高難度ジャンプに挑むリスクだよね…。ファイナル進出の可能性は残っているが、どうなるか。間違いなく今、ジュニア男子の中ではトップクラスの選手なのに!! 彼がいないJGPファイナルなんて!!(泣)
6位のエイモズは、フランスの宝だと思う。彼のスケートは、唯一無二のスペシャル感に満ちている。フリーのPCSがトップというのもうなずける。
とはいえ、毎試合、その不安定さに振り回されることになるんだろうなぁ(ため息)。ジュベールといい、ポンセロといい、アモディオといい、フランスからはどうしてこうもまぁ魅力的かつ不安定な男子スケーターばかり出現するのだろう。応援する方はたまらんよ…(涙)。でも、本当に素晴らしいスケーターなので、何とか何とかうまく育っていってほしい!

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JGPファイナル確定者
さて、今大会の結果を受けて、JGPファイナル進出が確定した選手は、下記の通り。

  • アレクセイ・クラスノジョン(アメリカ)
  • ロマン・サヴォシン(ロシア)
    • 第1戦 サン・ジェルヴェ 優勝
    • 第2戦 チェコスケート 3位

二人とも初出場ですな。頑張って☆