JGPタリン杯2016 女子SP

JGPタリン杯2016 リザルト
ジュニアのGPシリーズ第6戦。女子SPは、現地時間2016年9月29日(木)に行われた。
ISUのライブ放送、

にて、事前に注目していた選手の演技を中心に見た。特に印象に残った選手の演技について、滑走順に感想を書いている。
日本語表記に自信がない名前には?を付けている。

                                                                                                                                        • -

●第1グループ
4 Anita OESTLUND アニータ・オストランド(スウェーデン

昨季、ジュニアの国内選手権2位。今季、JGP横浜12位。
3T+3TはOK。2Aの着氷が乱れる。3Loは直前のステップが足りないかもと思ったが、GOEプラス。
繊細で抒情的な音楽に、彼女のソフトな滑りがよく合っていた。
46.94でSBおよび自己ベスト更新!

                                                                                                                                        • -

●第2グループ
7 エリザベータ・ヌグマノワ(ロシア)

  • 楽曲:Malaguena by Ernest Lecuona

昨季、ジュニアの国内選手権4位。今季、ジュニアデビューで、JGPモルドヴィア杯3位。
3Lz<+3T<で減点されたが、3Loタノと2Aタノはプラス評価。スピンはどれも素晴らしい出来栄えで全てレベル4。ステップもレベル4。腕や指先のしなやかな動きが美しい。
62.41でSBおよび自己ベスト更新! 喜んでミーシン先生に抱きつくヌグさん。かわいい☆ ミーシン先生うらやましい☆

8 Fruzsina MEDGYESI フルジーナ・メドズィエシ?(ハンガリー

  • 楽曲:The Mountain by Ludovico Einaudi

昨季、シニアの国内選手権2位、ユースオリンピック14位。今季、JGPチェコスケート8位。
ジャンプで着氷が乱れたり手をついたりしてしまったが、ジャンプを跳ぶとき、スピードがあるので、クリーンに着氷できれば、加点がもらえそう。
彼女の演技から透明感や瑞々しさを感じる。
41.77。

9 山下 真瑚(日本)

  • 楽曲:Nocturne by Secret Garden

昨季、全日本ジュニア9位。今季、ジュニアデビューで、JGP横浜3位。
ジャンプに高さと幅と流れがある。特にルッツの高さが素晴らしく、3Lz+3Tは、GOE 1.10。3Loはクリーンに着氷していたのだが、直前のステップが足りなかったからか、マイナスを付けるジャッジもいた。
スピンは全てレベル4。ステップはレベル3。全てのエレメンツがGOEプラス。
ゆったりしたテンポで、朗々と歌い上げる曲なのだが、彼女ののびやかな滑りにとても合っている。
62.65。

                                                                                                                                        • -

●第3グループ
15 Aiza MAMBEKOVA アイザ・マンベコワ(カザフスタン

  • 楽曲:Tango Amore by Edvin Marton

2014〜15シーズン、シニアの国内選手権2位。今季、JGPサン・ジェルヴェ8位。
3S<<で転倒した後、2Tを付けたが、2Tはノーバリュー。2Aと2LoはOK。3S以外のエレメンツは全てGOEプラス。
スピンのレベルは4、2、4。ステップはレベル3。
パーカッションの音とポーズがハマっていて、かっこよかった。キレのある動きが、タンゴの曲想と合っていた。
38.73。

                                                                                                                                        • -

●第4グループ
17 Kristina SHKULETA-GROMOVA クリスティナ・シュクレタ‐グロモワ(エストニア

昨季、シニアの国内選手権3位、世界ジュニア29位。
3T+2Tはクリーンに着氷し、加点0。2Loタノもきれいに下りたのに、マイナス評価なのは、多分ステップからただちに跳んでないからだと思う。2Aは転倒。
スピンの軸がしっかりしていて、回転が速い。スピンのレベルは4、4、3で、3つともGOEプラス。
ステップはレベル3でちょこっとだけGOEプラス。ゆったりした曲想を、体を大きく丁寧に動かして表現していた。
38.94。

18 ポリーナ・ツルスカヤ(ロシア)

  • 楽曲:Light of the Seven (Games of Thrones soundtrack) by Ramin Djawadi

昨季、JGPファイナル優勝、ジュニアの国内選手権優勝、ユースオリンピック優勝。今季、JGPモルドヴィア杯優勝。
冒頭の印象的な振付で、一気に引き込まれてしまう。
3Lz+3Tでかっ。3Loと2Aも素晴らしい。全てのジャンプの質の高さにビビる。
ステップやつなぎでも、物語をどしどし紡ぎ出していた。
66.72。あれ、思ったより低いな。70点に近い得点が出ると思ったのに。
プロトコルを見ると、スピンのレベルが4、4、3。ステップがレベル3。それと3Loで加点が0.30しかもらえなかったんだな。…ま、それでも十分高得点だけどね。

19 Tessa HONG テッサ・ホン(アメリカ)

  • 楽曲:Ave Maria performed by Giulio Caccini

昨季、JGP Logrono 2015 6位。
3Lz+3T<と3Loでマイナスされている他は、全てのエレメンツがGOEプラス。スピンのレベルは3、4、4で、ステップはレベル3。
3Loで減点されたのは、ステップからただちに跳んでいないからか、着氷で少しバランスを崩したからか。ジャッジの評価も分かれてるんだよねー。-2人のもいれば、+2の人もいる。
可憐という言葉がぴったりの選手。かわいい。
アメリカの選手らしく、姿勢やラインやポジションがきれいで、滑りがよく、スピンが上手い。
美しく抒情的な音楽をよく表現していた。腕の動きがもそっと大きくなると、さらに素敵になると思う。
55.81で自己ベスト更新!

20 Danielle HARRISON ダニエル・ハリソン(イギリス)

  • 楽曲:Molitva by Vladimir Graic

昨季、シニアの国内選手権優勝、ユーロ29位、世界ジュニア36位。
どピンクの衣装。派手で目立つので、氷上で映えるだろうなー。
2Aと2S+2Tタノはクリーンに着氷し、加点0、3Lo<はマイナス。ループの前にスパイラルを入れてるんだけど、体がぴんと張ってないので、ポーズが締まらない感じ。他ではびしっとポーズを決められているので、できる選手だと思うんだよなー。ジャンプの前だから意識が回らないのかも。
スピンのレベルは1、3、4でGOEプラス。軸がまっすぐでぶれず、良いスピンだった。
ステップはレベル2。全身を使って、力強い音楽を表現できていたと思う。
38.00。

                                                                                                                                        • -

●第5グループ
23 Julie FROETSCHER ジュリー・フローシュター?(フランス)

  • 楽曲:Sand by Nathan Lanier

昨季、シニアの国内選手権4位。今季、JGPサン・ジェルヴェ7位。
1Lzはノーバリュー、3Loは、直前のステップが足りなかったのか、マイナス。2Aは高さがあり、ちょこっとプラス。
スピンはレベルが3、3、1。質は悪くなかったのだが、レベルの取りこぼしが痛い。
ステップはレベル3。背中や腕を大きく使えるようになると、もっと印象的になるんじゃないかなと思った。
衣装がヒョウ柄で、肉食獣と思しき鳴き声や振付が入っているところを見ると、ヒョウになりきりプロなのか。…斬新!(笑)
とても独創的な音楽と振付だったので、興味が湧き、楽曲について調べてみたところ、ネイサン・ラニアー(作曲家、演奏家)が作った曲で、ウェブ検索すると、モダンバレエやダンスの動画がたくさん出てくる。おそらく、踊りのために作られた曲で、いろんな人が振り付けていた。
選手がキスクラで泣いてる…。SPでコンボが入らないと大きな痛手だよね…。
38.97。

25 新田谷 凜(日本)

  • 楽曲:Red Violin

昨季、JGP Copernicus Stars 2015 3位、全日本ジュニア4位、全日本8位。今季、JGPサン・ジェルヴェ3位。
3Lz+3Tは、加点が1.00の出来栄え。2Aもよかったのだが、ループがダブルになってしまった。構えが長すぎたので、跳ぶ前から失敗すると分かった。もったいない。
スピンの回転がもっと速いといいなーと思ってみていたら、2番目のCCoSp2にVが付いていた。
ポーズがぴたっ、すたっと決まるようになっていたが、びしっ、ばしっとなってほしい。力強さとシャープさが増してきたが、もっとほしい。
54.22。

26 Laura BARQUERO ラウラ・バーキエロ(スペイン)

今大会がJGPデビュー。
3S+2T、2A、2Loと、ジャンプは全てクリーンに着氷し、加点0。
スピンのレベルは4、2、4だが、質は良かったと思う。
ステップはレベル2だが、もっと大きく体が動かせるようになるといいな。
全てのエレメンツで、ジャッジの評価は0が多いけど、マイナスはなし。姿勢がきれいで、端正なスケーティングだった。
42.59。

27 Joanna KALLELA ヨアナ・カッレラ(フィンランド

  • 楽曲:Les Miserables by Alain Boubil, Claude-Michel Schoenberg

昨季、ジュニアの国内選手権2位。今季、JGPモルドヴィア杯9位。
3T+2Tは着氷がクリーンで加点0、3Lo<はマイナス、スパイラルをしてからの2Aは高さがあり、ちょこっとプラス。スパイラルは一瞬だったけど、ポジションがキレイだった。もそっと長いといいのに。
CCoSp4は、軸がまっすぐで回転も安定して早く、ポジションもクリアーだった。ジャッジも一人が2、他はみな1をつけていた(GOE 0.50)。
ステップはレベル3。体を大きく動かし、抑揚をつけて滑っていて素敵だった。
レ・ミゼラブル」なのにボーカルなしのオケバージョンという、珍しい選曲。彼女の瑞々しい、ソフトな滑りに合っていたと思う。
44.97でSBおよび自己ベスト更新!

                                                                                                                                        • -

◆SP順位
SPが終わって、順位は下記のとおり。左から順位、名前、国名、TSS、TES、PCSの順に記されている。

  1. Polina TSURSKAYA RUS 66.72 37.27 29.45 7.29
  2. Mako YAMASHITA JPN 62.65 36.09 26.56
  3. Elizaveta NUGUMANOVA RUS 62.41 35.09 27.32
  4. Tessa HONG USA 55.81 31.42 24.39
  5. Rin NITAYA JPN 54.22 28.81 25.41
  6. Anita OESTLUND SWE 46.94 28.40 18.54
  7. Joanna KALLELA FIN 44.97 25.20 19.77
  8. Laura BARQUERO ESP 42.59 23.39 19.20
  9. Fruzsina MEDGYESI HUN 41.77 24.59 17.18
  10. Nastasya EREMINA EST 40.16 23.42 16.74
  11. Julie FROETSCHER FRA 38.97 19.97 19.00
  12. Kristina SHKULETA-GROMOVA EST 38.94 23.20 16.74
  13. Aiza MAMBEKOVA KAZ 38.73 20.68 19.05
  14. Tina HELLEKEN GER 38.40 20.49 17.91
  15. Ellen YU NOR 38.10 21.28 16.82
  16. Danielle HARRISON GBR 38.00 19.93 18.07
  17. Elif ERDEM TUR 37.87 20.10 17.77
  18. Greta MORKYTE LTU 36.19 21.33 15.86
  19. Emily BAUSBACK CAN 36.15 17.46 19.69
  20. Amelia Scarlett JACKSON AUS 35.43 19.51 15.92
  21. Lu ZHENG CHN 34.48 19.83 15.65
  22. Caya SCHEEPENS NED 33.78 18.88 14.90
  23. Diana REINSALU EST 33.47 18.70 14.77
  24. Malika SHARSHENBAEVA KGZ 31.81 17.86 13.95
  25. Hanna PAROSHINA BLR 30.28 18.11 14.17
  26. Nikola MAZGANE LAT 29.95 15.35 14.60
  27. Jo-Wei FANG TPE 29.40 15.63 13.77
  28. Emilia Ros OMARSDOTTIR ISL 27.91 14.63 13.28
  29. Zhansaya ADYKHANOVA KAZ 27.66 14.80 12.86
  30. Cecilie Kongsbak DREIER DEN 27.66 13.72 13.94
  31. Kathryn WINSTANLEY RSA 27.04 14.15 12.89
  32. Tracy DANBROOK NZL 24.06 11.10 12.96
  33. Elisavet VOULGARI GRE 19.88 8.99 11.89
                                                                                                                                        • -

◆総評
事前の予想通り、ツルさんがSP1位。PCSもトップ。全てが素晴らしい選手だが、やはり特筆すべきはジャンプの質の高さ。とりわけ3Lzの高さと幅は男子並みじゃないかと思うほど。
2位の真瑚さんも、ジャンプの安定感と質の高さはトップに引けを取らない。JGP横浜ではまだ注目度もそれほどではなかったから、無欲でのびのびやれたのかなと思ってたけど、横浜で3位になって注目されるようになった今大会でも、硬くならず、のびやか〜に演じているように見えた。
3位のヌグさんは、今のところ、ジャンプの回転不足が唯一の課題かなー。スピンは非常に素晴らしいし、ボディームーブメントの美しさは、ジュニアデビューしたての選手とはとても思えない。
4位のホンさんは、今回、初めて演技を見たが、「アメリカからまた良い選手が出てきたな」という感じ。アメリカの選手って、みんなほんと、姿勢とポジションとラインがきれいなんだよねー。あれだけ広い国なのになー。
5位の新田谷さんは、3Loがダブルになったのが惜しかったけど、プログラムの仕上がりは、順調に進んでいることが分かった。
今大会は、上位以外にも心惹かれる選手が多かったなぁ。嬉しい☆ FSも楽しみだ。