JGPタリン杯2016 女子FS

JGPタリン杯2016 リザルト
ジュニアのGPシリーズ第6戦。女子FSは、現地時間2016年9月30日(金)に行われた。

で、第4グループから動画を見ようとしたのだが、なぜか前半しか収録されていない。仕方がないので、SPで特に印象に残った選手の演技を、個別に分かれている動画で見て、感想を書いている。
日本語表記に自信がない名前には?を付けている。

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●第4グループ
16 Aiza MAMBEKOVA アイザ・マンベコワ(カザフスタン

ジャンプは全てクリーンに着氷していた。GOEの加点は少ないけれど、マイナスはなし。2回転ジャンプが多かったが、失敗してそうなったのではなく、最初からその予定だったんじゃないかな。
SPとFSのジャンプ構成を見るに、今のところ、跳べるトリプルは、3Sだけのようだ。
スピンのレベルは3、4、4で、GOEプラスをもらえている。跳べる三回転の種類が増えれば、ぐんと得点が伸びてきそう。
パーカッションがメインの、エキゾチックな音楽だったが、ステップはキレがあり、その個性的な曲想をよく表現していた。レベル3で、加点も1と2(GOE 0.64)。
フリー83.71、総合122.44で、フリーは、SBおよび自己ベスト更新!

19 Danielle HARRISON ダニエル・ハリソン(イギリス)

ジャンプで両足着氷があったり、<が2つほどあったりして、GOEでいくつか減点された。今のところ跳べるトリプルは、3Sと3Loだけのようだ。
SP同様、ジャンプを跳ぶ前にスパイラルを入れていたが、体が張っていないため、ポーズがもやっとしていた。
スピンの回転が速く、軸もまっすぐで、ポジションも美しかった。レベルは3、3、4。
ステップはレベル2。一所懸命、腕を動かしているのだが、今は腕だけという感じ。背中からもっと使えるようになるといいのだが。
終盤でテンポがどんどんアップしていくのだが、ちょっと音楽に遅れ気味な気がした。
…う〜ん、なんていうか、もうちょっとな感じがする。もうちょっとで、ぐんと素敵になりそう。曲想が変わったところで、ぱっと表情を変えたり、演じようという意思はすごく感じた。
フリー74.95、総合112.95。

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●第5グループ
22 Julie FROETSCHER ジュリー・フローシュター?(フランス)

SPでヒョウを演じた選手(笑)。FSでもまた変わった衣装を用意してきた。肌色に近い薄〜い紫色で、ビリビリ破かれたみたいになってる。
3Lzを2本、クリーンに決められた。着氷が乱れてしまったが、3Fも跳び、どちらもエラーが取られていない。その3Fと3S<で減点された以外は、全てのエレメンツでGOEマイナスなし。成功したジャンプは、高さと流れがあっただけに、コンボが2つしか入らなかったのがもったいなかったなー。
スピンのレベルは全てレベル3。ステップはレベル3。
終盤に、「四季」の「冬」の超有名な激しい曲想を使っているのだが、ここが完全にBGMになっていた。ここはぜったい力強くシャープに演じないと! 最後の2つのスピンの回転を速くするだけでも、かなり印象が違うと思うので、頑張ってほしい。
FSは笑顔で終われてよかった。SPのときは、とっても悲しそうだったもんな。
フリー91.50、総合130.47で、フリーはSBおよび自己ベスト更新!

27 Fruzsina MEDGYESI フルジーナ・メドズィエシ?(ハンガリー
9 41.77

転倒やオーバーターンがあり、ジャンプのミスが多く出てしまったが、曲想の違いをうまく表現していたと思う。
スピンのレベルは4、3、4だが、そのうち2つにVが付いてしまった。もったいない。
ステップはレベル4獲得! 全身を大きく使って、女性ボーカルの切ない歌声を、雰囲気たっぷりに演じていた。
フリー83.98、総合125.75で、フリーは、SBおよび自己ベスト更新!
第5グループが終わった時点で、総合1位は、Julie FROETSCHER(フランス)。

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●第6グループ
28 Tessa HONG テッサ・ホン(アメリカ)

衣装に様々な濃淡のブルーが使われていて、とってもきれい。
ジャンプは、<<が2つ、<が2つ。
スピンはレベルが3、4、1。初めの2つはよかったのだが、最後のスピンは、先に音楽が終わり、焦ったように切り上げたためか、レベルを取りこぼしたうえに、Vが付いてしまった。
ステップはレベル3。ラインやポジションは美しいのだが、もっと立体的な動きがほしい。
ドラマティックに歌い上げる女性ボーカルに、ちょっと負けてたかも。力強さや雄大さがほしい。
フリー88.09、総合143.90。現時点で総合1位。

29 新田谷 凜(日本)

ジャンプは、3Fに!が付き、回転不足やステップアウトがいくつかあった。
スピンは全てレベル4が取れているのだが、もう少し質を向上できると、ぐんと見栄えよくなると思う。今はちょっと、もさもさしてるんだよね。
ステップはレベル3で、加点が1と2。
丁寧に心を込めて滑っているのが伝わってきた。ゆったりした大きな動きは素敵だが、まだ一本調子な感じなので、もっと抑揚がほしい。
フリー96.26、総合150.48。現時点で総合1位。

30 Anita OESTLUND アニータ・オストランド(スウェーデン

すごく細い。長身で手足が長いので、余計そう見えるのかも。
序盤は、よくあるヴァイオリンバージョンのハバネラだったのだが、途中からビートが刻み始め、モダンなアレンジに変わった。ビート&リミックスしまくり(笑)のカルメンだったが、原曲のまんまだと、往年の名選手と比べられてしまうので、よかったんじゃないかと思う。
ジャンプで2つの転倒があった上に、コンボが2つまでしか入らなかった。
スピンのレベルは3、4、2。1つ目のスピンでトラベリングしてるなぁと思ったら、やはりGOEで減点されていた。
最終グループで滑ると、スケーティングやボディームーブメントの違いがはっきり分かるなぁ(汗)。
転倒2つの他にタイムバイオレーションがとられたので、減点3。
フリー81.27、総合128.21でSBおよび自己ベスト更新! 現時点で総合4位。

31 ポリーナ・ツルスカヤ(ロシア)

3Lzは2本とも高っ。他のジャンプもすばらしい。3Fに!が付いたのと、3Loのお手つき以外は、全てのエレメンツがGOEプラス。
スピンは全てレベル4で、質も良かった。ステップはレベル3だが、加点が3が1つ以外は全て2(GOE 1.00)。
恵まれた手足の長さを目いっぱいフル活用しており、申し分のない演技なのだが、強いて言うなら、後半にジャンプが6つ入っているので、ジャンプジャンプな印象を受ける。まぁこれだけ質の高いジャンプだと、それ自体、芸術品だから、見ごたえあるんだけど、つなぎの動きでもう少しときめきや感動をもらえたらなって。…贅沢言ってすいません。
フリー127.30、総合194.02で、どちらもSB更新! 現時点で総合1位。

32 エリザベータ・ヌグマノワ(ロシア)

見た目ノーミスの演技だった。3Lz<以外は、全てのエレメンツがGOEプラス。タノも含め、流れがあって、良いジャンプだった。
ただ、個人的に、ルッツを跳ぶ前の構えの長さが気になる。他のジャンプはすぐさま跳んでるだけに。エッジ対策なのかなぁ。めっちゃアウトに倒してて、バランス崩さないか心配になるくらいだもんな。
スピンは全てレベル4の上に、質が非常に素晴らしい。特にレイバックは、全てのジャッジが3を付けている! 彼女のスピンはポジションが独創的なうえに、最後のポジションで回転が加速するのが凄い。
ステップはレベル4。情感あふれる滑りで、まだ14歳の演技とは思えない。すごい。
演技終了後、選手も感極まっていた。
とても素晴らしい演技だったのだが、「そういやこれジュリエットだっけ」と思い出して、やや複雑な気持ちに。こんなに元気いっぱいなジュリエットも珍しい。全然悲劇の匂いを感じない。ハッピーエンドのジュリエット…斬新!(笑)
キスクラでカメラに呼びかけているのだが、声がめっちゃかわいい☆
フリー126.02、総合188.43で、SP同様、FSもSBおよび自己ベスト更新! 現時点で総合2位。

33 山下 真瑚(日本)

3Lz+3T<以外は、全てのエレメンツがGOEプラス。JGP2試合とも、SP同様FSもほぼノーミスってすごすぎじゃない!?
ジャンプは高さと幅、流れがあり、すばらしかった。スピンのレベルは4、3、4。ステップはレベル3。
ステップでかわいらしい振付があって、素敵だった。のびやかなスケーティングは、おっきなジャンプ同様、彼女の大きな魅力だなぁ。
フリー121.41、総合184.06で、SBおよび自己ベスト更新! 総合3位に決定。

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◆総合順位
女子シングルの総合順位は下記のとおり。総合順位、名前、国名、得点、SP順位、FS順位の順に記されている。

  1. Polina TSURSKAYA RUS 194.02 1 1
  2. Elizaveta NUGUMANOVA RUS 188.43 3 2
  3. Mako YAMASHITA JPN 184.06 2 3
  4. Rin NITAYA JPN 150.48 5 4
  5. Tessa HONG USA 143.90 4 6
  6. Julie FROETSCHER FRA 130.47 11 5
  7. Anita OESTLUND SWE 128.21 6 9
  8. Fruzsina MEDGYESI HUN 125.75 9 7
  9. Joanna KALLELA FIN 124.26 7 11
  10. Aiza MAMBEKOVA KAZ 122.44 13 8
  11. Nastasya EREMINA EST 119.32 10 12
  12. Kristina SHKULETA-GROMOVA EST 117.04 12 13
  13. Emily BAUSBACK CAN 116.95 19 10
  14. Tina HELLEKEN GER 113.72 14 14
  15. Danielle HARRISON GBR 112.95 16 15
  16. Ellen YU NOR 106.15 15 17
  17. Caya SCHEEPENS NED 103.83 22 16
  18. Laura BARQUERO ESP 102.60 8 21
  19. Greta MORKYTE LTU 100.31 18 18
  20. Amelia Scarlett JACKSON AUS 99.21 20 19
  21. Lu ZHENG CHN 95.88 21 20
  22. Elif ERDEM TUR 95.65 17 25
  23. Diana REINSALU EST 93.09 23 23
  24. Nikola MAZGANE LAT 89.69 26 22
  25. Hanna PAROSHINA BLR 88.74 25 24
  26. Zhansaya ADYKHANOVA KAZ 84.12 29 26
  27. Emilia Ros OMARSDOTTIR ISL 82.96 28 27
  28. Jo-Wei FANG TPE 82.22 27 28
  29. Malika SHARSHENBAEVA KGZ 81.17 24 31
  30. Kathryn WINSTANLEY RSA 78.62 31 29
  31. Cecilie Kongsbak DREIER DEN 78.13 30 30
  32. Tracy DANBROOK NZL 71.95 32 32
  33. Elisavet VOULGARI GRE 58.58 33 33
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◆総評
今季のJGPでは、圧倒的に抜けた実力を持ちながら、FSで崩れる選手を何人か見てきたが、ツルさんは、みごと二連勝してファイナルを確定させた。本当に強い選手だなーと思う。今季のJGPファイナルも、堂々の優勝候補筆頭ですな。
2位のヌグさんは、その音楽表現のすばらしさもさることながら、スピンがすごい。彼女もロスコ同様、シズニーさんに継ぐベストスピナーの後継者なのかも。3位&2位なので、ファイナル進出は難しそうだけど、世界一過酷な国内選手権に向け、早く準備できるというのも悪くないよね。がんばれ〜。
3位のまこちゃんは、JGP2大会、SPもFSもほぼノーミス。この偉業を心から称えたい。3位&3位なので、ファイナル進出は厳しいが、世界で2番目に過酷な国内選手権に向け、プログラムをさらに洗練させていってほしい。
4位の新田谷さんは、この後、シニアに移行し、全日本を目指すそうなので、年末、演技を見られるのを楽しみにしている。

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JGPファイナル確定者
さて、今大会の結果を受けて、JGPファイナル進出が確定した選手は、下記の通り。

  • ポリーナ・ツルスカヤ(ロシア)
    • 第4戦 モルドヴィア杯 優勝
    • 第6戦 タリン杯 優勝

今のところ、唯一の連勝でファイナルを確定。昨季、JGPファイナルのチャンピオン。さて、二連覇なるか。