JGPブラエオン・シュベルター杯2016 男子FS

JGPブラエオン・シュベルター杯2016 リザルト
ジュニアのGPシリーズ第7戦。男子FSは、現地時間2016年10月7日(金)に行われた。

にて、SPで特に印象に残った選手を中心に演技の動画を見た。その中で、とりわけ語りたくなった選手の演技について、滑走順に、感想を書いている。
日本語表記に自信がない名前には?を付けている。

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●第3グループ
14 Aleksandr SELEVKO アレクサンドル・セレフコ(エストニア

  • SP順位:16,得点:49.71
  • 楽曲:Je suis malade by Serge Lama

男性ボーカルの「恋の病」。
ジャンプが本調子ではないようで、3Fに!がついたり、手をついてしまったり、2Tを3回跳んで、1つノーバリューになってしまったりと、ミスはいくつかあったが、スピンとステップは全てレベル4。間合いやタメの作り方、緩急のつけ方がみごとだった。いかにも「ぼく病んでます」という振付も、よくこなしていた(笑)。
本人も、納得いく演技だったようで、終わった後、ガッツポーズ。
フリー114.85、総合164.56。

16 Mark GORODNITSKY マーク・ゴロドニツキー(イスラエル

  • SP順位:17,得点:49.70
  • 楽曲:Iron Man 3 (soundtrack) by Brian Tyler

3Lzに2本とも!が付いたり、3Lo<<で転倒した他にも、着氷がクリーンなジャンプが少なかった。
スピンのレベルは3、4、3。ステップはレベル3。
姿勢やポジション、ラインはけっこうきれいだと思うので、体をもっと大きく、なめらかに動かせるようになると、ぐんと素敵になりそう。
フリー102.09、総合151.79。

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●第4グループ
17 Yuheng LI ユヘン・リー(中国)

ジャンプは見た目ほぼクリーンだったが、ちょこちょこGOEで減点されていた。
スピンのレベルは2、3、4。ステップはレベル2。う〜ん、レベルを取りこぼしておるな。
端正なスケーティングは好みだし、良いジャンプを跳ぶので、これからの成長が楽しみだ。
それと、SPでも気になったのが、「時間がきたから、音量を絞って終わりにしました」的なエンディング。尻切れトンボな感じがするので、もそっと編曲がんばってほしい。
フリー116.28、総合174.52で、自己ベスト更新!

18 Donovan CARRILLO ドノヴァン・カリーリョ?(メキシコ)

  • SP順位:11,得点:54.78
  • 楽曲:Hasta Que Te Conoci by Juan Gabriel, performed by Raul di Blasio

3Lzでステップアウトした以外、全要素でGOEマイナスなし。
スピンは全てレベル4。どのスピンも回転が速く、質が良かったが、特に最初のFCCoSp4は、回転が音楽のフレーズに合っていて、すばらしかった。
ステップはレベル3。横浜から4週間しかたってないけど、体の動かし方がうまくなったなーと感じた。
カリーリョくんは、近い将来、メキシコの輝ける星になってくれそう☆ まずは四大陸に出られるように頑張ろう!
フリー114.37、総合169.15で、SP同様、FSも自己ベスト更新!

19 マッテオ・リッツォ(イタリア)

ボディームーブメントの音のとり方なんかは、ほんとハマってて、素敵なんだけど、ジャンプのミスがなー…(ため息)。
スピンのレベルは3、4、4。最後のCCoSp4は、トラベリングしたためか減点されていた。
ステップはレベル3。小粋な振付が様になっててよかった。
フリー105.43、総合159.21。

21 Thomas STOLL トーマス・シュトイル(ドイツ)

背中に何か大きく描かれていて、最初「タヌキ!?」と見間違えた(爆)。「ザ・ローリング・ストーンズ」のメドレーでタヌキはないだろと思い、一時停止したら、よく見る大きな唇&舌の絵にシルバーと黒の稲妻が入っていた。…なぜこれがタヌキに見えたのか(汗)。
リズムよくポンポンジャンプを跳んでいたのだが、3Lo<と2Fの転倒があった。それと、コンボが2つまでしか入らなかったのが、もったいなかった。
スピンは全てレベル4。回転が速く、独創的なポジションもあって、よかった。
ステップはレベル2。曲想を表した振付を丁寧に行っていた。もう少し力強さやシャープさが出せるようになると、さらに素敵になると思う。
フリー108.42、総合169.07で、SP同様、FSも自己ベスト更新!

22 Artem KOVALEV アルチョム・コヴァリョフ(ロシア)

  • SP順位:7,得点:60.69
  • 楽曲:
    • House of Flying Daggers (soundtrack) by Shigeru Umebayashi
    • Samurai Collection by Kiyoshi Yoshida

初めの3つのジャンプは、すばらしかったのだが、その後、ステップアウトやパンクをしてしまった。
とはいえ、スピンとステップは全てレベル4。ジャンプが乱れても、他のエレメンツに全く影響しないところがすごい。末恐ろしい。
彼の音楽に対する感性は、驚嘆に値する。まだ13才だなんて、本当に信じられない。
フリー119.00、総合179.69。
第4グループが終わった時点で、トップは、アルチョム・コヴァリョフ(ロシア)。

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●第5グループ
24 Conrad ORZEL コンラッド・オーゼル(カナダ)

  • SP順位:5,得点:64.98
  • 楽曲:

流れない着氷のジャンプが多かったが、転倒や抜けはなかった。3Fにeが付いている。でも、4T1つ、3A2つの高難度ジャンプ構成を破綻なく滑り切った。
スピンのレベルは1、4、4。最初のFCSp1は、回転がゆっくりだったもんなー。ステップはレベル3。
彼のボディームーブメントは、シャープなんだけど、直線的で限定的なのが気になる。もっと大きくなめらかに動けるようになるといいのだが。
フリー131.32、総合196.30で、SP同様、FSも自己ベスト更新! 現時点で総合1位。

25 須本 光希(日本)

  • SP順位:4,得点:65.11
  • 楽曲:

ジャンプは全てクリーンに着氷。
スピンのレベルは1V、4、4。最初のFCCoSp1Vで、バランスを崩し、回転がゆっくりになってしまったため、レベルを取りこぼした上にGOEマイナス。それ以外は全てのエレメンツでGOEの加点がもらえていた。
ステップはレベル3。曲想が激しくなるところで、大きく、力強く、なめらかに動けていた。
フリー130.63、総合195.74で、SP同様、FSも自己ベスト更新! 現時点で総合2位。

26 Andrew TORGASHEV アンドリュー・トルガシェフ(アメリカ)

なぜか光希くんの振り返り映像から、トルガシェフの演技の前半までが途切れており、StSq3の途中からしか見られなかった(泣)。
プロトコルを見ると、4T2つと3F、3Lzで転倒。得点源の高いジャンプで4回もの転倒はキツい…。2度目のルッツはシングルになっちゃったしなぁ…(ため息)。
スピンは全てレベル4。ステップはレベル3。
ミスしたジャンプ以外は、とても質の高い出来栄えだったし、ドラマティックな動きは健在で、スピンやステップも見ごたえがあった。
フリー118.32、総合191.80。現時点で総合3位。ああ…しょんぼりキスクラ(泣)。

27 Jun Hwan CHA ジュンファン・チャ(韓国)

  • SP順位:1,得点:76.82
  • 楽曲:
    • Morning (Love Sonnet XXVII) from "Il Postino" (The Potsman) soundtrack
    • Theme from "Il Postino" (The Potsman) soundtrack
    • Mi Mancherai from "Il Postino" (The Potsman) soundtrack

4Sの予定がすっぽ抜けてシングルに。ジャンプが本調子ではなかったかな? 彼にしては着氷に流れのないジャンプがいくつか見られた。
スピンは全てレベル4。軸が安定しており、回転が速く、ポジションが美しい。
ステップでけっこう大きくつまづいていたが、他の部分が素晴らしかったからか、レベル3&GOEプラス。流れがよどみなく、動きが大きくなめらかで、見ていてたいへん気持ちがいいステップだった。
フリー143.72、総合220.54。現時点で総合1位。

28 ヤロスラフ・パニオット(ウクライナ

  • SP順位:3,得点:66.38
  • 楽曲:Falling Away With You by Muse
  • 動画:

JGPサン・ジェルヴェのときと、衣装を変えてきた。前のはお腹が丸見えになるので、変えて正解だと思う。
4T2つ、3A1つの高難度ジャンプ構成なのだが、その3つのビッグジャンプを含め、ジャンプに転倒や着氷の乱れなど、ミスがいくつか出てしまい、得点が伸びなかった。
スピンはレベルが4、3、2V。ステップはレベル2。う〜ん、取りこぼしておるな。
SPとは違い、「素敵☆」と感じる動きが少なかった。ジャンプに集中してるのかな? つなぎもシンプルな気がした。
フリー120.18、総合186.56で、どちらもSB更新!

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◆総合順位
男子シングルの総合順位は下記のとおり。総合順位、名前、国名、得点、SP順位、FS順位の順に記されている。

  1. Jun Hwan CHA KOR 220.54 1 1
  2. Conrad ORZEL CAN 196.30 5 2
  3. Mitsuki SUMOTO JPN 195.74 4 3
  4. Andrew TORGASHEV USA 191.80 2 6
  5. Yaroslav PANIOT UKR 186.56 3 4
  6. Artem KOVALEV RUS 179.69 7 5
  7. Kum Chol HAN PRK 178.77 9 7
  8. Yuheng LI CHN 174.52 10 8
  9. Donovan CARRILLO MEX 169.15 11 10
  10. Thomas STOLL GER 169.07 8 11
  11. Aleksandr SELEVKO EST 164.56 16 9
  12. Matteo RIZZO ITA 159.21 12 13
  13. Lukas BRITSCHGI SUI 154.28 19 12
  14. Radek JAKUBKA CZE 153.73 14 15
  15. Mark GORODNITSKY ISR 151.79 17 14
  16. Peter LIU USA 148.89 13 18
  17. Aleix GABARA ESP 148.13 20 16
  18. Josh BROWN GBR 147.39 15 19
  19. Iliya KOVLER CAN 142.87 26 17
  20. Denis GURDZHI GER 138.77 18 21
  21. Luc MAIERHOFER AUT 136.17 22 20
  22. Jonathan HESS GER 129.81 21 22
  23. Kai Xiang CHEW MAS 125.70 23 23
  24. Charlton DOHERTY AUS 121.16 25 25
  25. Matthew SAMUELS RSA 117.56 27 24
  26. Marco KLEPOCH SVK 110.35 24 27
  27. Michel TSIBA NED 107.09 28 26

WD Alexey EROKHOV RUS(SP順位:6)
エロホフは怪我で棄権したとのこと。国内選手権までにしっかり治して、世界ジュニア代表に選ばれるよう、頑張ってください。

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◆総評
優勝のジュンファンは、ジャンプが本調子でないながらも安定した演技で完全優勝! 二連勝でファイナル進出を決めた。
2位のコンラッドは、初のJGP表彰台、おめでとう! 4T1つ、3A2つを下りたにも関わらず、総合得点が200点を超えられないというのは、他に伸びしろがたっぷりあるということなので、これからの進化を期待したい。
3位の光希くんも、初のJGP表彰台、おめでとう! JGP2戦とも、練習の成果を確実に本番で発揮できているというのは、得難い才能である。あとは演技中に笑顔が見せられるようになると最高なのだが。
4位のトルガシェフは、ファイナル進出がかかっていただけに、フリーの失速が非常に残念だった。次の大きな試合は全米かな? 今季は、JGPで活躍した選手の大半がシニアの全米に出場すると思われるので、お兄さんたちとの戦いが熾烈を極めそう。
5位のパニオットは、2戦続けてフリーで順位を落としており、課題は明白なので、シーズン後半には修正してくるだろうと期待している。
6位のコヴァくんは、今大会、ジャンプが不調のようだったが、今季のJGPに登場した、「ちっちゃい!! かわいい!! 美少年!!」な男子(笑)の中で、もっとも衝撃を受けた選手である。正確な技術と類まれなる音楽表現。ボディームーブメントの素晴らしさは、シニアの選手にも引けを取らないんじゃなかろうか。
これから成長期に入るので、断言はできないが、彼が3Aやクワドを跳べるようになったら、どんだけすごいスケーターになるのかと思うと、空恐ろしい気さえする。
7位の北朝鮮の選手は、優れた素質を持っているので、もっと頻繁に国際大会に出場させてもらえればと、つくづく思う。でも今、国にそんな経済的余裕はなさそうだしなぁ…(ため息)。

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JGPファイナル進出者

  • アレクサンドル・サマリン(ロシア):1位&1位
  • ジュンファン・チャ(韓国):1位&1位
  • アレクセイ・クラスノジョン(アメリカ):2位&1位
  • ロマン・サヴォシン(ロシア):1位&3位
  • イリヤ・スキルダ(ロシア):2位&2位
  • ドミトリー・アリエフ(ロシア):1位&4位