GPスケートアメリカ2016 男子FS

GPスケートアメリカ2016 リザルト
GPシリーズ第1戦の男子FSは、現地時間2016年10月23日(日)に行われた。
今季から、GPシリーズの滑走順が、抽選で決められることになった。FSは、SPの順位が低かった順に3人ずつ抽選して滑走順が決まるらしい。

上記のライストで、第2グループから演技を見た。その後、テレ朝の放送で、第1グループの演技も見た。滑走順に感想を書いている。
テレ朝の解説は織田信成さん、実況は角澤照治アナ。
プログラムについて、独断と偏見による、◎、○、△、×、?の五段階評価を付けている。つまり、わたしの勝手な好き嫌いの感想にすぎないので、どうぞ悪しからず。五段階評価の内容は下記の通り。

  • ◎:好きだ! また見たい!
  • ○:よかった。
  • △:う〜ん、イマイチ。
  • ×:できれば変えてほしい…。
  • ?:まだ何とも判断が付きかねる。
                                                                                                                                        • -

●第1グループ
1 マキシム・コフトゥン(ロシア)

  • SP順位:10,得点:67.43
  • 楽曲:Iron Sky by Paolo Nutini
  • プログラム:△

小芝居から始まるんだけど、何を意味してるんだろう。
3A+1Lo<+3Sと3Lzの転倒以外、エレメンツにGOEマイナスなし。
スピンは全てレベル4。最初のCCoSp4は、ポジションがクリアーでよかったんだけど、後2つは回転がゆっくりになってしまった。
ステップはレベル2。ステップの後にコレオがあるのだが、ステップもコレオも、プログラム後半で疲れたのか、動きにキレがなくなってしまった。
ジャンプを次々クリーンに決めていく中、「まだまだ油断できない…」と思いながら見ていたのだが、3Lzの転倒以外、大きなミスはなかった。あのSPから、よく立て直したと思う。頑張った。
だが、正直このプログラムの魅力が分からない…。素敵だと感じる振付も少ないし…。特に中盤のセリフがやかましくてプログラムに集中できないんだよなー。今のところプログラムを邪魔しているとしか思えない。
フリー163.32、総合230.75で、どちらもSB更新!

2 ブレンダン・ケリー(オーストラリア)

  • SP順位:9,得点:71.62
  • 楽曲:Pirates of the Caribbean (soundtrack) by Hans Zimmer, Klaus Badelt
  • プログラム:○

まぁなんと優しげな海賊かしら(笑)。胸元を見せて男性らしさをアピールしてるんだとは思うけど。
前半のジャンプはクリーンに着氷していたのだが、後半、疲れてきてジャンプの高さがなくなり、3A<や3Loで着氷が乱れたり、3Fの転倒があった上に、連続ジャンプを2つしか入れられなかった。
スピンのレベルは2、3、4。回転がゆっくりなので、あまり加点が望めない。特に最初のCCSp2は、GOEで減点されてしまった。
ステップはレベル3。上下の動きがもっとほしい。
コレオでは、もっといろんな動きを入れてほしいなー。ちょっとシンプルだった。
プログラムに4T一つ、3Aを二つ入れる構成のプログラムを滑っているのだが、後半明らかに動きが悪くなっていた。課題はスタミナと思われる。
フリー140.14、総合211.76。

3 ティモシー・ドレンスキー(アメリカ)

  • SP順位:6,得点:77.59
  • 楽曲:Sometimes I Dream by Mario Frangoulis
  • プログラム:○

音楽は、「トスカ」のアレンジと思われる。
4Sの予定がダブルに。他にもジャンプの回転の抜けや、着氷の乱れがあったが、成功したジャンプは流れがあってよかった。
スピンは全てレベル4。よくコントロールされていて、ほんと、スピンが上手だなーと感心させられる。特に最後のCCoSp4の回転は、めっちゃ速かった。
ステップはレベル2だったが、独創性な動きがあり、曲想にも合っていた。
コレオのところで男性ヴォーカルが盛り上がるのだが、ダイナミックな動きがそれにマッチしていて素敵だった。
フリー148.94、総合226.53で、総合得点は自己ベスト更新!

4 ヨリク・ヘンドリックス(ベルギー)

  • SP順位:7,得点:76.62
  • 楽曲:The Battle of Life and Death ("Gods and Demons" by Future World Music)
  • プログラム:○

クワドなし、3Aと3Lzを2本入れるジャンプ構成。着氷がクリーンなジャンプが少なかった。3Aを跳ぶ前の構えが長いのが気になる。
スピンは全てレベル4。よくコントロールされており、特に最後のCCoSp4は、回転がとても速かった。
ステップはレベル3。コレオにはI字スパイラルを入れていた。
なめらかでシームレスな滑りが素晴らしい。
フリー148.29、総合224.91で、総合得点はSB更新!

5 ボーヤン・ジン(中国)

  • SP順位:8,得点:72.93
  • 楽曲:La Strada by Nino Rota
  • プログラム:○

一度見たら忘れられない衣装(笑)。赤と黒と白のストライプが胸と腕に入っており、前身ごろは真ん中で白と黒に分かれている。背中側は黒一色。パンツは黒。
今回跳んだジャンプを書き出してみた。
4Lz 4S 3A+1Lo<+3S (ここから後半)4T< 4T+2T 3Lz+3T 3A 3F
今回は、着氷に乱れが複数あり、1本目の4Tの転倒もあって、体力を消耗したと思うのに、最後までガス欠することなく、この高難度ジャンププロを滑り切った。すごい。
ジャンプは本調子ではなさそうだが、それでも4Lzの高さは素晴らしかった。
スピンのレベルは4、3、3V。ステップはレベル3。全身を大きく使って音楽を表現していた。
中盤のコミカルな振付も頑張って演じており、表現の殻を破ろうとしてるんだなというのが伝わってくる。ただ、わたしはこの音楽を聴くと、どうしても郄橋大輔のプログラムがオーバーラップしちゃうんだよなぁ。
フリー172.15、総合245.08。
第1グループが終わった時点で、トップはボーヤン・ジン(中国)。

                                                                                                                                        • -

●第2グループ
6 ナム・ニューエン(カナダ)

  • SP順位:4,得点:79.62
  • 楽曲:An American in Paris by George Gershwin
  • プログラム:○

4Sはシェイキーな着氷、3F+2T+2Loはファーストがオーバーターン、3Lz+2Tタノは流れがあまりよくなかったが、他は全てクリーンに着氷。
スピンのレベルは3、1、4。躍動感あふれるステップはレベル3。
「ナム・ニューエン、ふっか〜つ!!」を高らかに告げる演技であった。ジャンプの安定感と質の高さが戻ってきたぜ!!
彼には、やはりこういう明るい曲が似合う。
フリー159.64、総合239.26で、どちらもSB更新! 現時点で総合2位。

7 セルゲイ・ヴォロノフ(ロシア)

  • SP順位:5,得点:78.68
  • 楽曲:Exogenesis Symphony Part III by Muse
  • プログラム:◎

白シャツのボタンの両端だけグレーのぼかしが入っている。ただの白シャツじゃだめだったのか。
3Fにeが付いたため、減点されているが、着氷はクリーン。4Tを2本入れなかったし、3Aの構えの長さが気になったけど、ジャンプは全て高さと流れがあり、軽々と跳んでいた。
スピンは全てレベル4。回転が速く、ポジションが美しく、軸がぶれない。ステップはレベル3。音楽がじわじわ盛り上がっていくところなのだが、それをみごとに体現していた。
3Fe以外のエレメンツには、ジャッジが誰一人マイナスを出していない。
見た目ノーミス!!「今こんなに良い演技しちゃっていいの!? 国内選手権にとっといたほうがいいんじゃないの!?」と心配になるほど素晴らしい演技だった。彼がこんなに美しく優しい滑りを見せてくれるようになるとは。
全てがうまくなった印象を受ける。彼はいくつになっても成長を続けていて、本当にすごい。頭の下がる思いだ。
フリー166.60、総合245.28でSB更新! 現時点で総合1位。

8 アダム・リッポンアメリカ)

  • SP順位:2,得点:87.32
  • 楽曲:O by Coldplay
  • プログラム:◎

後半に2本の3Aをクリーンに着氷。3Aが苦手だったのが嘘のような安定感。タケノコ3Lzは、すっっっばらしかった!!(GOE 1.50) ちょっとこらえるジャンプもあったが、GOEで減点されるほどではない。冒頭の4Tの転倒以外は、全てのエレメンツがGOEプラス。
スピンはよくコントロールされており、レベルは3、4、4。ステップはレベル3。やわらかでしなやかだけど力強い。つつつつとトゥを刻むとこ好き☆ 後半のコレオは動きの全てが印象的でかっこいい。
衣装と振付を見るに、鳥をイメージしてるのかな? 今でも十分素敵だが、滑りこんでいったら、もっともっと素敵になるんだろうな〜。楽しみだな〜。
フリー174.11、総合261.43で、SB更新! 現時点で総合1位。

9 宇野 昌磨(日本)

  • SP順位:1,得点:89.15
  • 楽曲:
    • Buenos Aires Hora Cero by Astor Piazzolla
    • Barada para un loco by Astor Piazzolla
  • プログラム:◎

胸元から腹部にかけて入ったグラデーションがセクシー☆
ボーヤンのジャンプ構成も相当どうかしてるけど、昌磨くんのも負けてないので、今回跳んだジャンプを書き出してみよう。
4F 4T 3Lo (ここから後半)3A+3T 4T+2T 3Lz 3A< 3S
2本目の3Aは、3A+1Lo+3Fの予定だったが、転倒したため単独に。この3Aの転倒以外、全ての要素に加点がモリモリ。
3A+3Tを着氷したとたん、女性ヴォーカルが始まるのがクール!
スピンは全てレベル4。回転が速くてポジションがクリアー。最後のCCoSp4はちょいトラベリングしてたけど、回転がめっちゃ速いからかGOE 1.14も! ステップはレベル3。
音楽との一体感がすごい。動きの一つ一つが音楽にハマっていて、超かっこいい。
この曲をやるって聞いたときから激ハマりだろうと予想がついたが、予想通りに素晴らしい。これからわたしの予想をはるかに超える演技を見せてくれるのではないかと、期待はふくらむばかりである。
フリー190.19、総合279.34で、FSはSB、総合得点は自己ベスト更新! 現時点で総合1位。
連続ジャンプが2つしか入らなかったのに、TESが100点超えって…。フリーで200点出すのも時間の問題ですな。

10 ジェイソン・ブラウン(アメリカ)

  • SP順位:3,得点:85.75
  • 楽曲:The Scent of Love (from "The Piano") by Michael Nyman
  • プログラム:◎

黒シャツに黒パンツ。お団子ヘアー。
4T<と3F!で、GOEマイナス。4Tは少し回転が足りなかったみたいだけど、流れがあり、良いジャンプに見えた。他のエレメンツは全てプラス。
スピンのレベルは4、4、3。ステップはレベル4。全選手の中で、ステップのレベル4獲得は彼だけ。コレオでは、彼の美麗スパイラルをたっぷり堪能できる。ほんのちょっとぐらつきがあったけど、ほとんど気にならない。
織田くんに、「技と技のつなぎは、彼が世界一」と言わしめるほど、濃密なトランジション。動きすべてが美しくシームレスで、音楽にぴったり寄り添う演技だった。
演技の終わり方が余韻を感じさせて素敵なんだよねー。最後のスピンを終えた後もくるくる回って回転がほどけるようにフィニッシュ。
ドア係の子が感動して泣いてる…。笑顔のコリ先生と固く握手。戻ってきたジェイソンとハグ。なんて素敵な光景(感涙)。
フリー182.63、総合268.38で、自己ベスト更新! 総合2位に決定。

                                                                                                                                        • -

◆総合順位
男子シングルの総合順位は下記のとおり。総合順位、名前、国名、得点、SP順位、FS順位の順に記されている。

  1. Shoma UNO JPN 279.34 1 1
  2. Jason BROWN USA 268.38 3 2
  3. Adam RIPPON USA 261.43 2 3
  4. Sergei VORONOV RUS 245.28 5 5
  5. Boyang JIN CHN 245.08 8 4
  6. Nam NGUYEN CAN 239.26 4 7
  7. Maxim KOVTUN RUS 230.75 10 6
  8. Timothy DOLENSKY USA 226.53 6 8
  9. Jorik HENDRICKX BEL 224.91 7 9
  10. Brendan KERRY AUS 211.76 9 10
                                                                                                                                        • -

◆総評
ライストでは第2グループの演技から見たのだが、深夜に起きる価値ありまくりの演技続出であった。何なの、この神大会…。みんな、GP1戦目から飛ばしすぎじゃない? 見てる方が喜びのあまり息絶え絶えになりそうだった…。
日本男子の伝統を受け継ぎ(笑)、昌磨くんが、みごとスケート・アメリカ優勝☆ 昨季GPフランス大会で優勝してるけど、あの時はパリのテロの影響で、フリーはできなかったから、初優勝の気分を味わってるんじゃないかなぁ。本当におめでとう!
今大会の彼は、良い意味で力が抜けているように見えた。リラックスして試合に臨めている印象。4Fの安定感が頼もしい。
FS後の昌磨くんのコメントを紹介したい。

総合2位のジェイソンも3位のアダムも、すっっっばらしかった!! 感動した。
4位のヴォロノフも、会心の演技だっただけに、表彰台に上がれず、残念だった。でも、順位とか得点とか関係なく、胸打たれるパフォーマンスだった。
5位のボーヤンは、ファイナル進出が難しくなったが、今季はスケーターとして一段階上のレベルに到達するためにチャレンジ中だから、思うような結果が出ない時もある。方向性は正しいと思うので、焦らずじっくり取り組んでほしい。
6位のナムくんは、FSもクリーンに近い演技で、ジャンプの復調が本物らしいと分かり、ほっとした。
7位のコフトゥンは、ジャンプの調子が盛り返したのは良かったけど、プログラムの魅力がねぇ…。ま、今はジャンプの復調と安定が最優先なのかも。