GPスケートカナダ2016 男子SP

GPスケートカナダ2016 リザルト
シリーズ第2戦の男子SPは、現地時間2016年10月28日(金)に行われた。
今季から、GPシリーズの滑走順が、抽選で決められることになった。
ライストは見られなかったので、後日、テレ朝の放送で全員の演技の動画を見た。滑走順に感想を書いている。
テレ朝の解説は織田信成さん、実況は進藤潤耶アナ。
プログラムについて、独断と偏見による、◎、○、△、×、?の五段階評価を付けている。つまり、わたしの勝手な好き嫌いの感想にすぎないので、どうぞ悪しからず。五段階評価の内容は下記の通り。

  • ◎:好きだ! また見たい!
  • ○:よかった。
  • △:う〜ん、イマイチ。
  • ×:できれば変えてほしい…。
  • ?:まだ何とも判断が付きかねる。
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●第1グループ
1 ミーシャ・ジーウズベキスタン

  • 楽曲:Paint It Black (remake) by Rolling Stones
  • プログラム:○

昨季、ワールド15位。
もみあげとヒゲがつながってる。衣装の黒に白のキラキラで模様が入っていて、ゴージャス☆
3Aは流れがちょい良くなかった。4T<<は転倒。CCSp3は反対回りを入れていた。3Lz+3Tはちょい流れなかった上に!が付いた。FSSp4はよくコントロールされていた。StSq3は、しなやかでやわらかだけど力強い。メリハリがついていてかっこよかった。CCoSp4は、軸がぶれずに回っていた。
彼自身による振付のプログラム。音楽表現は相変わらず素敵なのだが、ちょーっとスピードが出てなかったかも。特に冒頭は3Aと4Tを跳ぶからか、慎重に見えた。でも、もっとスピードがないと、4Tは跳べないと思う。
72.30。

2 ハン・ヤン(中国)

  • 楽曲:I'll Take Care Of You performed by Beth Hart, Joe Bonamassa
  • プログラム:○

昨季、四大陸3位、ワールド26位。以前、キャロライン・ジャンのコーチをしていたミンジュー・リーに、コーチを変更。
4Tはステップアウト。CSSp4は、よくコントロールされている。FCSp2の軸がまっすぐでぶれない。3A<は転倒。3Lz+3Tの着氷がちょい乱れた。StSq3で激しく力強く滑っていた。CCoSp2の回転は速いが、ちょいトラベリング。
ジャンプの調子が良くなさそう。クリーンに降りられたジャンプは3Lzだけだった。スピンの質は悪くなかったと思うのだが、2つのスピンがレベル2と取りこぼしている。
ジャージーな音楽をよく表現していたんじゃないかな。ただ、前から彼の腕の使い方が気になっているのだが、特にステップでそれが気になった。うまく説明できないけど、美しく感じられないんだよねー。なんか、カクカクしてる感じがして。
72.86。

3 ミハル・ブレジナチェコ

  • 楽曲:The Way You Look Tonight by Jerome Kern
  • プログラム:◎

昨季、国内選手権優勝、ユーロ10位、ワールド9位。
アルトゥニアン先生に師事することになり、練習拠点をアメリカに変更。
昨季から続行のプログラムで、楽曲の邦題は「今宵の君は」。蝶ネクタイを結んでいない、黒タキシード衣装。う〜ん、王道ですな☆
3Aは素晴らしい。3F+3Tはステップアウト。CCSp3の回転がゆっくりになってしまった。2Lzは痛恨のノーバリュー(泣)。StSq3は、こういう音楽をこういう衣装を着て彼が滑ればそりゃ良くないわけないわという出来栄え。FSSp3はよくコントロールされていたが、最後のCCoSp2でミス。
昨季は4Sに毎度挑戦しては失敗していたので、手堅くトリプルだけで行こうという作戦は悪くないと思うのだが、3Lzがダブルになってしまった…(泣)。
お洒落で小粋なかっこいい、ミハルの魅力全開のプログラムなので、クリーンな演技が見たい。ぜひとも見たい。昨季からずっとそう願ってるんだけどなぁ…(ため息)。
70.36。

4 ダニエル・サモヒン(イスラエル

  • 楽曲:Delilah by Tom Jones
  • プログラム:○

昨季、JGPファイナル5位、ユーロ7位、世界ジュニア優勝。今大会がGPデビュー。
お、何だか大人っぽくなったな。身長伸びた?
4Tは手をつきそうになったが持ちこたえた。4Sで流れが止まったものの、意地でと2Tを付けてきた。FCSp2の回転がもっと速いといい。CCoSp4の軸がまっすぐ。シットポジションのフリーレッグがまっすぐ伸びててキレイだった。3Aはこらえた。CSSpは回転がゆっくりになったせいかノーバリュー。もったいない。StSq3は、全身を大きく使って情熱的に力強く演じていたが、中盤でつまづいてしまった。
演技終了後、2クワドを降りられたのが嬉しいのか、ガッツポーズして喜んでいた。
粗っぽいっちゃ粗っぽいんだけど、のびのび滑れたのは良かったんじゃないかな。元気と勢いがあった。
74.62。

5 パトリック・チャン(カナダ)

今季に入ってから、ズエワチームの指導を仰ぐことになった。
衣装は、上下黒で、サスペンダーまで黒。ブラックバードだからなんだろうけど、だったらサスペンダーなくてもいいんじゃない?
昨季のEXプロを競技プロへ。
4T+3Tは完璧。3Aは軸が作れず転倒。FSSp4の回転が速いし、完全にコントロールされている。StSq3は申し分ない素晴らしさ。最後の鳥が羽ばたくみたいに両手を広げて上下に動かすところが好き☆ 3Lzは低くてちょっと怖かった。CCSp4の回転が、音楽のフレーズに合っている。CCoSp3は、目まぐるしくポジションチェンジするんだけど、軸が一切ぶれないし、回転がめっちゃ速い。
3Aの転倒からの復帰がすさまじい速さだった。トップオブトップの男子選手って、転倒からあっという間に立ち上がるよなー。結弦くんやハビもそうだもんな。
進藤アナによると、パトちゃんは「子どものころの、家族との良い思い出がよみがえってくる。自由に滑れるという気持ちにさせてくれる曲」と話しているそう。まさにそんな感じ。パトリック・チャンという鳥が自由に大空を舞っている。
90.56でSB更新!

6 羽生 結弦(日本)

  • 楽曲:Let's Go Crazy by Prince
  • プログラム:○

昨季、GPファイナル優勝、全日本優勝、ワールド2位。
白いパンツは氷に映えないので、せっかくの彼の美しいレッグラインが目立たず、もったいないんじゃないか、変えた方がいいんじゃないかと思っていたのだが、プリンスらしさを出すにはこの白いパンツが必要不可欠な気がするし。うーむ。
4Lo<<は、途中で体を開いて膝をついてしまった。3Sは着氷が乱れた。FCSp3は軸がまっすぐ。3Aは完璧。GOE 2.71って☆ +3を出したジャッジが6人もいるぞ。直後「俺が一番!」って感じで人差し指を高く掲げる振付かっこいい。CSSp4の軸も回転も安定している。StSq4はまさにロック☆な感じ。迫力があった。CCoSp4はよくコントロールされている。
ジャンプのミスが目立ってしまったが、ステップでは、みごとレベル4獲得。
79.65。

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●第2グループ
7 リアム・フィルス(カナダ)

  • 楽曲:Happy Ending by Mika
  • プログラム:○

昨季、国内選手権2位、四大陸13位。
白シャツに黒いサスペンダー付きの黒パンツ。
3A転倒。3Fはクリーンに着氷。CCoSp4の回転が速い。FUSp4は回転が速く軸がまっすぐ。3Lz+3T<は、ファーストでバランスを崩したが、頑張って3Tを付けたものの、しゃがんで手をついてしまった。腕で体を支えてしまっているのて転倒扱いに。StSq3は、曲想の軽やかでやわらかな感じをよく出せていた。CSSp4の回転が速く、安定している。
ジャンプのミスが目立ったけど、プログラム自体は、とっても素敵☆ フィルスくんの素晴らしいスケーティングスキルがよく生かされている。
70.09。

8 ロス・マイナー(アメリカ)

  • 楽曲:New York State of Mind by Billy Joel
  • プログラム:○

昨季、GPロステレコム杯3位、全米5位、四大陸14位。
昨季から続行のプログラム。大好きなプログラムなので続けてくれてうれしい。
3Fはクリーンに着氷したが、!が付いてしまった。でっかい1Aはノーバリュー(泣)。StSq3は小粋でオシャレな振付なのだが、ちょっとスピードがなかったかも。CCSp3は、よくコントロールされている。3Lz+2Tはステップアウト。FSSp3はよかった。CCoSp4の回転が速く、軸が安定している。
ジャンプが不調なんだろうか。足の怪我はよくなったのかなぁ。
63.92。

9 グラント・ホックスタイン(アメリカ)

昨季、全米4位、四大陸8位、ワールド10位。
4T転倒。3A<は着氷でバランスを崩した。CCSp3は、キャメルポジションがきれい。FSSp4の軸がまっすぐで回転が速い。いろいろ複雑なステップをリズムよく踏んでから跳んだものの、1Lzでノーバリュー(泣)。StSq3は、音楽の緩急を見事に表現していた。素敵☆ CCoSp4はよくコントロールされている。
ジャンプ全てでミス(泣)。動きのキレは悪くなかったと思うのだが。
一風変わったアレンジの「ラプソディー・イン・ブルー」。管楽器がメインで、よりジャージーな感じ。その曲想をよく表現していたと思うが、彼ならもっとできるはず! がんばって☆
60.20。

10 アレクサンドル・ペトロフ(ロシア)

  • 楽曲:RItual Dance of Fire (from "El Amor Brujo") by Manuel de Falla
  • プログラム:○

昨季、国内選手権3位、ユーロ8位。
飾りがじゃらじゃら付いた鎖帷子っぽい衣装。素敵だけど、動きにくくないかな?
3Aの着氷が乱れた。3Lz+3Tはクリーンに着氷。FCSp2は、もうちょい速く回れるるといいな。3Fは着氷をこらえた。CSSp3の回転が安定していた。StSq3はなめらかに力強く動けていたが、腕の動きがもそっとこう…立体的に動かせるようになるとさらに素敵になりそう。CCoSp4はよくコントロールされていた。
2つのスピンがレベル2と3。取りこぼしているのがもったいない。
真央ちゃんのおかげで、すっかり有名になった「リチュアルダンス」。ペトロフくんは、やわらかな動きで、この独特な曲想を表現しようと頑張っていた。
71.50。

11 無良 崇人(日本)

  • 楽曲:Zapateado (Flamenco)
  • プログラム:○

昨季、GP NHK杯3位、全日本3位、四大陸5位。
7月のDOIでハートを射抜かれたフラメンコのプログラム。でも、この衣装を見るなり、テンションがだだ下がりである(泣)。フリンジの使い方が超ダサいと思う。や、そりゃ確かにわたしのセンスなんて当てにならないけどさー(ため息)。
4Tはステップアウト。3Aは素晴らしい。FSSp2は、悪くないけど回転が足りないんじゃないかな。3Lz+3Tはクリーンに着氷。CCSp2はまずまずだと思ったのだが、-1を出したジャッジが2人いる。StSq2は、タップ音に合わせてかっこよくステップを踏んでいた。CCoSp4の回転が速かった。
……う〜ん、悪くないんだけど、DOIのときと比べると、「あれ、こんなだったっけ? もっと素敵じゃなかったっけ?」と感じた。プログラムの感想も、DOIの演技だったら◎を超えて三重丸だったけど、今回の演技だと、○一つだなぁ。
ステップについて、織田くんが誉めつつも、「上半身の体幹に影響するような大きい動きがとれると、レベル4が取れるようになるんじゃないか」と話していた。このプログラム最大の見せ場なので、ぜひレベル4が獲得できるように修正してほしい。
前々から彼の課題は(勝手に)スピンだと思っているのだが、今回も2つのスピンでレベル2と取りこぼしているし、GOEもイマイチなんだよなぁ…(ため息)。
81.24。

12 ケヴィン・レイノルズ(カナダ)

  • 楽曲:
    • Puutarhautuminen by Hohka
    • Kesäillan Tvist by Troka
    • Muuttosarja by Hohka
  • プログラム:◎

昨季、国内選手権3位、四大陸11位。2014〜15シーズンは、怪我のためほぼ全休。去年の春に左の股関節の手術を行った。
赤いベストに濃いグレーの縦縞が入っているのだが、それがちょっと気持ち悪い。
4S<+3Tの着氷に流れがあった。4Tはクリーンに着氷したのだが、GOEで減点されているということは、直前のステップが足りないと判断されたか。3Aはクリーンに着氷。ケヴィン小さくガッツポーズ。わたしも心の中でガッツポーズ(笑)。ところが次のCCSp3で足替えした後、回転が止まりそうなくらい遅くなってしまった。StSq4は、かなり速いテンポの軽快な曲想にふさわしい、軽やかな踊り。途中で曲想が変わるのだが、その違いを明確に表現していた。FUSp4の回転が非常に速い。CCoSp3はまずまず。
演技が終わった後、ガッツポーズ出たよ! 素敵な演技だったよ!
ステップでレベル4を獲得したのは、彼と結弦くんだけ。素晴らしいわ〜☆ しかも、レベルが取れたというだけでなく、音楽にマッチした、本当に素敵なステップだった。
80.57で、自己ベスト更新!

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◆SP順位
SPが終わって、順位は下記のとおり。左から順位、名前、国名、得点の順に記されている。

  1. Patrick CHAN CAN 90.56
  2. Takahito MURA JPN 81.24
  3. Kevin REYNOLDS CAN 80.57
  4. Yuzuru HANYU JPN 79.65
  5. Daniel SAMOHIN ISR 74.62
  6. Han YAN CHN 72.86
  7. Misha GE UZB 72.30
  8. Alexander PETROV RUS 71.50
  9. Michal BREZINA CZE 70.36
  10. Liam FIRUS CAN 70.09
  11. Ross MINER USA 63.92
  12. Grant HOCHSTEIN USA 60.20
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◆総評
SP1位は、地元カナダの大エース、パトちゃん。3Aの転倒はあったが、それでもTES、PCSともにトップ。今季のSPも彼に大ハマりのプログラムで、ジャンプが決まりさえすれば高得点が約束されている。昨季は結局クリーンなSPが一度も見られなかったので、今季はぜひとも見せてほしい。
2位は無良くん。4Tにミスがあり、レベルも取りこぼしての80点超えなので、クリーンに滑れば90点いけるんじゃなかろうか。
3位のケヴィンは、元気に滑っている姿を見られるだけで幸せなのに、地元でこんなに良い演技ができたなんて、幸せいっぱいではちきれそう。
4位の結弦くんは、「怪我明けだし、新技4Loに挑戦中だし、ミスだってするさ、人間だもの」というわけで、特に心配はしていない。何の科学的根拠も裏付けもないが、わたしが彼の調子を判断する基準に、「3Aが決められるかどうか」というのがあり、3Aがクリーンに着氷できていれば大丈夫と思っている。
SP1位のパトちゃんと4位の結弦くんの点差が10点ほど。SPを見る限り、パトちゃんはジャンプが好調ってわけじゃなさそうだし、結弦くんのFSのジャンプ構成を考えたら、逆転の可能性は大いにあり得る。はてさて、どうなるか。