ユーロ2017 女子FS

ユーロ2017 リザルト
チェコオストラヴァにて開催。女子FSは、現地時間2017年1月27日(金)に行われた。
Jスポーツのライブ放送で全員の演技を見た。解説は中庭健介さん、実況は小林千鶴さん。千鶴さんは、男子SPの実況を終えたばかりなのに、大変だなぁ。千鶴さんによると、中庭さんは、女子SPの解説の後、一度福岡に戻ってコーチの仕事をしてから、FSの解説をしに戻ってきたらしい。お二人とも、お疲れ様です。
特に印象に残った選手の演技について、滑走順に感想を書いている。
ちなみに、ユーロのミニマムスコアは、SP 20.00、FS 36.00。ワールドのは、SP 27.00、FS 47.00。
プログラムについて、独断と偏見による、◎、○、△、×、?の五段階評価を付けている。つまり、わたしの勝手な好き嫌いの感想にすぎないので、どうぞ悪しからず。五段階評価の内容は下記の通り。
◎:何度でも見たい。
○:よかった。好き。
△:悪くない。まずまず。
×:イマイチ。
?:何とも判断が付きかねる。

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●第1グループ
4 ナタリー・ヴァインツィアール(ドイツ)

  • SP順位:22,得点:48.70
  • 楽曲:On My Own (from "Les Miserables") by Claude-Michel Schoenberg
  • プログラム:△

ジャンプの転倒2回を含め、ジャンプのミスが目立った。スピンのレベルは3、3、4。最後のLSp4の回転が速く、ポジションが美しかった。ステップはレベル2。
女性らしい、やわらかい動きが美しい。音の緩急のつけ方も素敵だった。
フリー94.70、総合143.40。

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●第2グループ
9 エミ・ペルトネン(フィンランド

  • SP順位:14,得点:53.52
  • 楽曲:Papa Can You Hear Me (soundtrack)
  • プログラム:△

ジャンプの抜けや着氷の乱れがいくつか見られたが、3T+3Tと2A+1Lo+3Sなど、成功したジャンプの質はよかった。スピンのレベルは3、4、1。1つ目のFSSp3は、フライングした後、軸がぶれてGOEマイナス。ステップはレベル3。
途中から入る女性ヴォーカルの表現がすばらしかった。彼女の体から歌が流れ出ているかのようだった。
フリー107.05、総合160.57で、SP同様、FSも自己ベスト更新。

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●第3グループ
15 ロエナ・ヘンドリックス(ベルギー)

  • SP順位:11,得点:55.41
  • 楽曲:Adagio performed by Sarah Brightman
  • プログラム:△

3Fタノはステップアウトし、3S+2Tタノ+2Loタノは着氷が乱れたが、その2つ以外、全ての要素でGOEプラス。冒頭の3Lzタノと3Fタノ+2Tタケノコはすごかった。ロシア女子みたいにタノジャンプを複数跳んでいる。スピンとステップは全てレベル4。
彼女は、空間を大きく使えていて、立体的に体が動かせるんだよね。兄のヨリクのように、要素もつなぎもきっちりやってくる選手だが、特にスピンがすばらしい。
フリー117.30、総合172.71で、SP同様、FSも自己ベスト更新。

16 ニコル・ショット(ドイツ)

  • SP順位:9,得点:56.88
  • 楽曲:Nocturne No. 20 by Frederic Chopin performed by Joshua Bell
  • プログラム:△

2Fと3T+3Tで転倒したが、成功したジャンプの着氷姿勢はぴしっと決まっていた。スピンのレベルは3、4、4。ステップはレベル3。
パワフルなSPとは対照的な、清楚でたおやかな雰囲気のプログラム。ゆったりした美しい音楽を、優雅に表現していた。表現の幅が広くていいなぁ☆
フリー103.75、総合160.63。

17 ニコル・ライチョヴァー(スロバキア

  • SP順位:7,得点:60.98
  • 楽曲:Rain In Your Black Eyes by Ezio Bosso
  • プログラム:○

3Lzと3Tで着氷が乱れた以外、全ての要素がGOEプラス。成功したジャンプは流れがよかった。スピンは全てレベル4。どれも回転が速くよどみなく美しい。ステップはレベル3。
音楽よりちょっと早く演技が終わってしまったが、演技自体は素晴らしかった。終盤、音楽がじわじわテンポアップしていくにつれ、彼女の勢いも増していき、最後、コレオではまさに音楽と一体になって滑っていた。中庭さんの言うように、すごく音に合っていて、彼女の動きが音楽を引き立てていた。
フリー118.72、総合179.70で、SP同様、FSも自己ベスト更新。ニコルがめっちゃ喜んでる☆

第3グループが終わり、総合1位は、ニコル・ライチョヴァー(スロバキア)。

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●第4グループ
19 マリア・ソツコワ(ロシア)

  • SP順位:4,得点:72.17
  • 楽曲:Adagio by Alfred Schnittke
  • プログラム:△

3Lz+3T<と3Lz<で転倒があった。3Loはお手つき。スピンのレベルは3、4、4。ステップはレベル4。
同じトーンが続く、特に盛り上がりのない曲なので、ちょっと調子を落とすと、淡々と滑っているように見えちゃうんだよなぁ。
中庭さん曰く、「少し硬さが見えた。こわごわ跳んでいるように見えるジャンプがいくつかあった」とのこと。
フリー120.35、総合192.52。現時点で総合1位。

20 ロリーヌ・ルカヴァリエ(フランス)

  • SP順位:5,得点:63.81
  • 楽曲:Grease (musical soundtrack)
  • プログラム:△

ジャンプに着氷の乱れがいくつかあったが、冒頭の3Lz+3Tと締めの2Aはきっちり決めた。スピンのレベルは4、3、3。ステップはレベル3。
ピンクのカットソー&白スカート→黒ワンピへの早着替えでは、客席から驚きまじりの歓声が。最後まで音楽に乗って、楽しそうに元気よく滑っていた。
フリー124.29、総合188.10で、どちらも自己ベスト更新。現時点で総合2位。タイムバイオレーションで減点1とられてる〜。もったいない〜。

21 イヴェット・トース(ハンガリー

  • SP順位:6,得点:61.49
  • 楽曲:Eleanor Rigby by The Beatles, performed by Joshua Bell
  • プログラム:○

ジャンプの着氷の乱れや抜けがあり、連続ジャンプが2つしか入らなかった。スピンのレベルは4、3、3。ステップはレベル4。
滑り出しの動きが曲想にぴったりハマっていて、あっという間にプログラムに引き込まれてしまった。独創的な振付が印象的なプログラム。
中庭さん曰く、「このトップグループで滑ったときに、スケーティングの伸び感であったり、滑っている感じがちょっと弱い」とのこと。
フリー111.16、総合172.65で、自己ベスト更新。現時点で総合5位。

22 エフゲーニャ・メドベージェワ(ロシア)

  • SP順位:1,得点:78.92
  • 楽曲:
    • Extremely Loud and Incredibly Close by Alexandre Desplat
    • Piano Lesson with Grandma by Alexandre Desplat
  • プログラム:○

ほぼ非の打ちどころがない演技だった。3Lzに!がつき、3S+3Tは少しこらえたが、GOEプラスの出来だと思う。意図的に連続ジャンプを4つ跳んでいた。スピンとステップは全てレベル4。
…ただなぁ、このプログラムのコンセプトを考えると、最後のいたずらっ子みたいな表情はそぐわないんじゃないかなぁ。最後、恋人の死の知らせを受けたところで終わるプログラムなのに。本人はもう終わったつもりなんだろうけど。余韻てものがさぁ…。
中庭さん曰く、「普通にクロスで押しているところがほとんどない。スケーティング技術、加速させる技術がすばらしい」とほめていた。
フリー150.79、総合229.71。女子の歴代最高得点をどちらも更新☆

23 カロリーナ・コストナー(イタリア)

  • SP順位:3,得点:72.40
  • 楽曲:Nisi Dominus (Cum Dederit) by Antonio Vivaldi
  • プログラム:○

3Lo<+2Tの着氷が乱れた以外、全ての要素がGOEプラス。スピンのレベルは4、4、3。もう少し早く回れるといいなぁ。ステップはレベル4。
ジャンプを跳ぶ前はちょっと慎重になっている感じだったけど、一蹴りの伸びが他の選手とは違う。前半のステップは、一人だけ違う氷で滑っているみたいだった。
ジャンプの難易度は落としてるんだけど、その分完成度の高さとずば抜けたスケーティング&表現力で勝負するという戦い方なんだな。すごく理にかなっていると思う。
フリー138.12、総合210.52で、SP同様、FSもSB更新。嬉しそうなコストナーさん☆

24 アンナ・ポゴリラヤ(ロシア)

  • SP順位:2,得点:74.39
  • 楽曲:
    • Modigliani Suite by Guy Farley
    • Le Di a la Caza Alcance by Estrella Morente
    • Memorial Requiem by Michael Nyman
  • プログラム:○

こらえるジャンプがいくつかあったが踏ん張った。強くなった。スピンとステップは全てレベル4。
最後、また音楽が足りなくなり、尻切れトンボな感じになったのが残念だった。
中庭さんの解説によると、冒頭の3Lzの着氷が乱れ、連続ジャンプにできなかったので、代わりに後半の3Lzに3T<をつけた。で、後半の3Lzはもともと3連続の予定だったので、次の3Loを3連続に変更し、連続ジャンプを3つきっちり入れた。すごい修正力。中庭さんは、「今季、彼女が強くなったことを証明する演技だった」とほめたたえていた。
フリー137.00、総合211.39。総合2位に決定。順位を見て喜ぶポゴさん。よかったね!

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◆総合順位
女子シングルの総合順位は下記のとおり。総合順位、名前、国名、得点、SP順位、FS順位の順に記されている。

  1. Evgenia MEDVEDEVA RUS 229.71 1 1
  2. Anna POGORILAYA RUS 211.39 2 3
  3. Carolina KOSTNER ITA 210.52 3 2
  4. Maria SOTSKOVA RUS 192.52 4 5
  5. Laurine LECAVELIER FRA 188.10 5 4
  6. Nicole RAJICOVA SVK 179.70 7 6
  7. Loena HENDRICKX BEL 172.71 11 7
  8. Ivett TOTH HUN 172.65 6 8
  9. Roberta RODEGHIERO ITA 161.00 8 12
  10. Nicole SCHOTT GER 160.63 9 10
  11. Emmi PELTONEN FIN 160.57 14 9
  12. Anastasia GALUSTYAN ARM 155.14 10 14
  13. Matilda ALGOTSSON SWE 154.63 18 11
  14. Joshi HELGESSON SWE 152.86 13 13
  15. Helery HÄLVIN EST 146.68 16 15
  16. Mae Berenice MEITE FRA 145.07 12 19
  17. Nathalie WEINZIERL GER 143.40 22 17
  18. Natasha MCKAY GBR 140.85 24 16
  19. Angelina KUCHVALSKA LAT 139.63 20 18
  20. Michaela-Lucie HANZLIKOVA CZE 138.23 15 21
  21. Anna KHNYCHENKOVA UKR 136.57 21 20
  22. Kerstin FRANK AUT 132.08 17 24
  23. Viveca LINDFORS FIN 130.10 19 22
  24. Anne Line GJERSEM NOR 128.68 23 23

Julia SAUTER ROU 25
Dasa GRM SLO 26
Yasmine Kimiko YAMADA SUI 27
Elzbieta KROPA LTU 28
Antonina DUBININA SRB 29
Colette Coco KAMINSKI POL 30
Aimee BUCHANAN ISR 31
Birce ATABEY TUR 32
Valentina MATOS ESP 33
Hristina VASSILEVA BUL 34

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◆出場枠

イタリアが3枠復帰だ〜☆ FS進出者で、16位以下は全て16ポイントとカウントされるとのこと。

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◆総評
優勝はメドさん。二連覇おめでとう!! ついに女子歴代最高総合得点を更新!! そして、ロシア選手権に引き続き、クリーンな演技に加えて余分な連続ジャンプを跳んでみせた。ワールドはどこに余分な3Tをつけてくるだろうか(苦笑)。
2位はポゴさん。3年連続表彰台おめでとう!! ミスしてもきっちりリカバーする力がみごとだった。その強さが初のユーロ銀を引き寄せたんだと思う。
3位はコストナーさん。3年ぶりのユーロ表彰台おめでとう!! いや〜、率直に言って、SP3位の時点でも、表彰台は難しいんじゃないかと考えていた。ロシア女子強いし、復帰したばかりだし、「彼女のすばらしい滑りが見られればそれで十分幸せ☆」と思ってたんだよね。彼女の強さをさっぱり分かってなかった。信じる心の弱いファンでごめんなさい(土下座)。
4位はソツコワさん。SPは素晴らしかったのだが、FSはちょっと緊張しちゃったかなぁ。ユーロ初出場で4位というのも、十分すごい成績なんだけどね。
5位のルカヴァリエと7位のイヴェットが、スケーターとして、一つ階段を上がった姿を見られて本当に嬉しい。すばらしい成長ぶりである。
6位のライチョヴァーは、去年、母国開催のユーロで力を発揮できなかった悔しさを晴らせたのではなかろうか。特にフリーの演技は音楽との一体感がすばらしく、魅了された。
7位のロエナちゃんは、本大会で初めて見たのだが、お兄さんのヨリク同様、魅力的なスケーターだった。嬉しい☆ FSの申告では3Aが入っていたそうなので、練習では跳べてるのかも!
10位のショットさんは、右ひざ裏を痛め、本大会の12日前にようやくジャンプを跳べるようになったそうだが、そんな状態とは思えないほど、素敵な演技だった。一日も早く怪我が治りますように☆
20位のハンズリコワは、まだジュニアっぽい動きが目立つが、若さならではの勢いと元気あふれる演技で好感が持てた。小顔で手足が長くスタイルがいいので、立ち姿が映えるんだよねぇ。顔立ちも美しいし。今後の成長が楽しみ☆
今季のユーロは、ロシア女子の強さを改めて感じるとともに、ロシア女子の表彰台独占を阻んだコストナーさんの強さをも再確認する大会となった。みんな強くて美しくて最高☆☆☆